クラスの女子がべったり甘々に迫ってくるんだけど、俺には迫られたら困る事情があるから全力で拒否します ~みんなはオタク女子だと思っているけど、実はめちゃくちゃ美少女でした
第34話:周りに人がいることを忘れてました
第34話:周りに人がいることを忘れてました
メガネがない顔とふわりとした髪型。
そしてお洒落なブラウスに可愛く短めのジャンバースカート。
つまり今の堅田は超絶可愛い姿。
そんな堅田が太ももを見せながら浮かべるこの妖艶な表情。
俺は理性が吹っ飛び、堅田に襲い掛かる……
──ってなことになりそうなくらいだった。
だけどここはゲームセンター。
周りには他人もいて、可愛い堅田をチラチラを見る人も多い。
そのおかげで、なんとか理性が崩壊せずに済んでいる。
「あのさ堅田。周りに人がいるってこと……忘れてないよな?」
「え? うひゃうっ……」
周りをキョロキョロと見た堅田は、急に我に返る。
「どうやらその認識は飛んでたみたいだな」
「はい……失念しておりましたです」
堅田のセクシーな姿を他人に見られるのも嫌だったし、止めてよかった。
彼女のエッチスイッチが発動した時にそれを止めるのはもはや俺のお仕事と言える。あはは。
周りの目が気になって、それから俺と堅田はそそくさとゲーセンを出たのは言うまでもない。
「あ、もうこんな時間か」
「そうですね。そろそろ帰りましょう」
今日も俺は母のカフェの手伝いがある。
だから夕方には帰らないといけない。
堅田も毎週ウチのカフェに来る常連だけど、さすがに今日は執筆用のノーパソは持っていないから、そのまま自宅に帰るということになった。
ショッピングモールから駅まで二人で歩く。
大勢の人とすれ違うたびに、堅田をチラチラ見たり振り返る人々の視線を感じる。
すぐ横を並んで歩く、すっごく可愛い堅田の姿を見ながら思う。
まだ彼女は身に沁みついたコンプレックスが抜けきらない。
だけど普段からこういう格好をしていれば、みんなから可愛いと言い続けられる。
こういう格好をし続けてみんなから愛されたら、そのうち意識も変わっていくだろう。
「あのさ堅田。学校でもそういう格好でいたらどう? 髪型とかメガネとか。制服も他の子みたいに、もうちょっとお洒落にするとかさ」
「でも恥ずかしです……」
「お洒落するだけで、堅田はきっとみんなから可愛って言われるよ。そうすればほら。ホントに好きな相手の男子だって……」
そこまで言って、みんなからチヤホヤされて言い寄られる堅田が頭に浮かんだ。
そして顔も知らない緑川って男と腕を組んでる場面さえもが。
堅田が、俺の手の届かない遠くに行ってしまうように感じる。
なぜか胸の奥がきゅっと苦しくなった。
なにを考えてんだよ俺は。
堅田が人気者になって、好きな相手と恋人になる。
それは喜ぶべきことだ。
なのに俺って……これは独占欲なのか?
自分で自分を、こんなに心の狭い男だって思ってもみなかった。
恥ずかしい。
「そうですね。御堂君の言うとおりかもしれませんね」
弱々しくそう言う堅田。
俺は堅田の成長と変化を応援してあげるべき立場の人間だ。
喜んで応援しようじゃないか。なあ御堂 翔也。
俺は自分にそう言い聞かせた。
***
<美玖Side>
今日の買い物デートはとてもとても楽しかったです。
帰宅して自分の部屋に戻って来てからも、ニヤニヤが止まりません。
御堂君が可愛いって言ってくれたハート型の髪飾りを付けて鏡を見ると、さらにニヤニヤ増量です。
「ね、
猫の翔也くんに話しかけますが、大きなあくびをして無視です。
でもいいのです。こういうツンツンしたところが私は大好きです。
それに今日は、人間の御堂君が何度も可愛いって言ってくれたし、自分でも大満足の買い物ができました。
そしてなにより、ずっと御堂君と一緒にいれるという幸福感。
彼を私一人が独占しているという喜び。
ああっ……
今まで十六年間、こんなに素敵なものを知らずに生きてきたなんて。
私は、なんともったいないことをしてきたのでしょうか。
もちろん小説やアニメでは、何度もデートのシーンは見ましたし、ヒロインがデートでキュンキュンする姿も何度も見ています。
見てる私もヒロインに感情移入して、きゅんとしたりもしてました。
でも、本物がこれほど素晴らしいなんて、予想のはるか上でした。
物語が「10キュン」だとすれば、本物は「100キュン」……いえ「千キュン」です。
あれ? 「1億キュン」かな?
いえいえ「1
……えっと。
思考が小学生のようになってしまいました。
こんな単位の言葉遊びにはなにも意味はありません。
とにかく本物のデートは素晴らしい。ひと言、これに尽きます。
でも今日のデートでは、後悔もあります。
それは私が好きなのは緑川君ではなくて御堂君ですって言えなかったことです。
それを言うチャンスは何度もあったし、何度も言おうと思いました。
御堂君は私を可愛いって言ってくれたし、今なら告白したら成功するかもって思いもあったのです。
でもダメでした。
いざとなったら
──やっぱり私なんて『単なる恋人ごっこの相手』であって、本物の恋人になんかなれやしないんだよ。
私の中のもう一人の私が、いつもそう囁きかけてくるのです。
失敗してもいいからチャレンジすべきという考えもあります。でも勇気が出ません。
やっぱり私ってダメな子ですね……
どんどん自信がなくなってきました。
「
ドアからノックの音がして、向こう側からお姉ちゃんの声が聞こえました。
今日は御堂君と買い物に行くって言ってあったので、私が帰ってるか確認したのでしょう。
「うん」
「入るよ」
「うん」
お姉ちゃんがドアを開けて、私の部屋に入ってきました。そして私の顔を見るなり、目を丸くしてます。
「えっ……
お姉ちゃんはマジマジと上から下まで、セクハラおやじみたいに私を目で舐め回します。
恥ずかしいからやめてほしい。
「あれっ? その髪飾りは?」
「彼が『すごく可愛い』って言ってくれたから買ったのです」
髪飾りを指で撫でながら答えると、お姉ちゃんはちょっと寂しそうな顔をしました。
「そっか。よっぽど気に入ったんだね……ってことは、明日からは学校でもそれをつけるってこと?」
「うん、ごめんなさい。お姉ちゃんにもらった白い髪飾りは、ちゃんと大切にしまっておくから……」
お姉ちゃんはしばらく難しい顔をしてたけど、「うん」と納得するようにうなずいて、笑顔で言いました。
「そうだね。いいんじゃない?」
姉が納得してくれてよかったです。
ホッとしました。
「御堂君だっけ? 彼氏と上手くいってるようだね」
「そ、そうですね。大丈夫ですよ」
ホントは彼氏と上手くいってるどころか、御堂君とはまだ付き合ってすらいないのですが……
姉には御堂君を彼氏だと言った手前、そんなことは言えません。
「御堂君は私を可愛いって言ってくれるし、困った時には守ってくれるし、ホント素敵な彼氏なのです」
「そっか。御堂君って案外いいヤツなんだね」
「案外じゃないですぅ。すっごくいい人なのですよ」
「あははそっか。美玖はホントに彼が好きなんだね」
「はい、それはもう!」
そうです。
自信がないなんて言ってられないのです。
御堂君はホントに素敵な人で、私は彼が大好きなのです。
気を取り直して、明日からまた頑張るのです!
そうです!
また積極的に御堂君に迫りますからねっ!
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