クラスの女子がべったり甘々に迫ってくるんだけど、俺には迫られたら困る事情があるから全力で拒否します ~みんなはオタク女子だと思っているけど、実はめちゃくちゃ美少女でした
第8話:私とこんなことをするのはイヤなのですか?
第8話:私とこんなことをするのはイヤなのですか?
大きな胸が俺の腕に押しつけられて、えらいことになっている。
……なにがって、俺の理性が。
そして堅田は俺の二の腕に顔をうずめ、甘い声を漏らす。
「あったかい……」
ふわんと汗の香りがさらに強烈に漂う。
──甘い香り……
男の汗なんて臭いだけなのに、なんで女の子の汗はこんなにいい香りがするんだろう。
しかも鼻孔を刺激し、エロい気持ちを呼び覚ます。
まさに──女子の汗は媚薬の香り。
「か……堅田さん……」
俺は思わず腕にしがみつく彼女の髪に鼻を近づけた。
媚薬の香りを鼻孔いっぱいに吸い込む。
頭がくらくらして、脳みそが甘い香りで満たされる。
もうダメだ。
堅田の身体をぎゅっと抱きしめたい。
そんな衝動が身体の奥深くから湧きあがってくる。
もう我慢ができない。
俺は両手を堅田の背中に回して、ぎゅっと抱きしめ……
──ようとした寸前。
堅田の頭越しにふと部屋のドアに目が行った。
なぜか少し扉が開いている。
──ひえっっ!
思わず叫びそうになったが、すんでのところで声を飲み込んだ。
扉の隙間からこちらをギョロリと覗いているお姉さんが見えた。
ヤバっ!
超絶ヤバ!!
「あのさ、堅田。そういうイチャイチャは、もうちょっと先にしないか?」
彼女の両肩に手を添えてグイっと押し、少し距離を取る。
「御堂君は……私とこんなことをするのはイヤなのですか?」
堅田さんは悲しそうな目で俺を見上げる。
心がチクリと痛んだ。
「そうじゃないって。そもそも18歳未満でエッチなことするのは、条例違反だし」
「いいのです。ルールは破るためにあるのです」
うっわ。さっき信号無視しかけた時に言ってたことと真逆だし!
「あ、いや、それだけじゃなくて。ほら、恋人同士って、いきなりこんなイチャイチャはしないよね。だから俺たちも、最初はちょっと距離があって、それから仲良くなって、ようやく手を繋いで……段階を踏んで進んで行くのがいいと思うんだ」
「そう……ですね」
「うん。それにさ……」
ここから先は愛洲さんに聞こえないように、堅田の耳元に口を近づけて小声で囁く。
「そうしたら、徐々に進展する各段階での男女の心情を体験することができるだろ? その方が執筆の参考になると思うんだ」
「なるほど。それも
──それを言うなら
堅田の脳内にはお花が咲いてるようだ。
「それと、一歩ずつ大人の階段を登った方が、何度もドキドキできるだろ? 俺、何度もドキドキしたいなぁ」
「はい、わかりました。さすが御堂君です。メモしときます」
メモはしなくていい。
顔を離して堅田を見たら、ニコリと笑っていた。
よかった。俺のせいであんな悲しそうな顔をさせるのは嫌だ。
「大人の階段は、段階を踏んで一歩ずつ昇る方がいい、というわけですね」
「そういうことだ」
「つまり、ご利用は計画的に、ということですね?」
「いや、一見正しそうに聞こえるけど、たぶん違う」
「んもうっ、御堂君の意地悪っ……」
なにが?
どこが意地悪!?
堅田の感覚がよくわからない。
「でも御堂君に意地悪されるのって……ちょっと嬉しいかもです」
は?
堅田がなに言ってるか、ちょっとわかんないですけど?
『堅田М気質疑惑』が再浮上する。
いや、まさかな。
「じゃあ御堂君。このままちょっとお話しましょうか」
「うん、そうだね」
とにかく我が身の危機は未然に防ぐことができた。
ヤバかった。
それから俺たちはしばらく雑談に興じた。
俺の言葉を堅田はいつものように、時々メモを取ったりしていた。
その間も扉の隙間からこちらを窺っていた
よし。危機は去った!
雑談の中で堅田は、文芸部に所属してること、だけど部員は自分しかいないことなんかを教えてくれた。
そして明日の放課後はぜひ部室に遊びに来てほしいと言われ、俺は承諾した。
それと学校では、俺たちが恋人ごっこをするようになったことは黙っておくことになった。
俺はまだしも、堅田は超真面目で通っている。
俺とこんなことを始めたと知られたら、彼女は周りから誤解されて、どんな変なことを言われるかわからない。それだけは避けたい。
そして俺は堅田とLINEを交換して、堅田の家を辞した。
女子と一対一でLINE交換をするって夢を、俺はなんと今日だけで二人分も叶えてしまった。
もしかしたら今日という日が、俺の人生のピークなのか!?
いや、それはないな。
だって一人目は恐怖の
そう思ってスマホでお姉さんのアイコンを見た。
大流行りした『少年が鬼を倒すアニメ』のキャライラストなのだが。
なぜか主人公やヒロインのアイコンではなくて、恐ろしい表情の鬼をアイコンにしていることに俺は戦慄した。
***
<美玖Side>
あのカフェに初めて行ったのが数ヶ月前。
落ち着いて執筆できる場所を探していて、たまたま見かけたカフェに入ったら、それが
なんというラッキーな偶然。
だって私は以前から……
それから毎週のように通ったけど、御堂君はたまに声をかけてくれるだけで、ほとんど交流することはありませんでした。
それがいきなり今日、あんなことになるなんて、誰が予測できたでしょうか。
あんなのギリシャ神話の予言神アポロンくらいしか予測できません。
御堂君にエッチな小説を見られてしまうなんて。
羞恥死するかと思うくらい○◎が∞%で※#しゅぼわいえ……(恥ずかしすぎて語彙崩壊)
でもあれは御堂君が悪いわけじゃない。
ノーパソを開いたまま、トイレに行ってしまった私が悪いのです。
それにしても、私やりましたね。
混乱に乗じて恋人ごっこを提案するなんて。
これで晴れて私と御堂君は恋人同士(仮)です。
災い転じて福となす。
グッジョブですよ私。
よくやりました。
「でしょ、翔也くん?」
あ、翔也くんっていうのは私が飼ってる猫の名前です。
普段はリビングにいるので、御堂君(人間)と翔也君(猫)の感動のご対面は叶いませんでしたけど。
そんな翔也君(猫)は、私の言葉を無視して毛づくろいにいそしんでます。
そんなツンツンした態度は嫌いじゃありませんよ。
どれどころか、邪険にされたり意地悪されたりするのは結構好きだったりします。
ね、翔也君(猫)。
とにかくホントの勝負はこれからです。
もちろん御堂君(人間)のことですけど。
殿方とのお付き合い経験ゼロの私には、試練と言えるでしょう。
でも頑張れ私。
とにかく次は、明日放課後の文芸部室が勝負です。
えっと……勝負下着あったかな?
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