第94話 モフモフのライバル
ここは……ふわふわした感覚に夢だと分かる。現実の世界ですやすや眠っている僕はセレシア。セレスって呼んでね!
どうやら今まで見てきた悪夢と同じ場所みたいだ。……せっかくサクラが生まれてからは悪夢を見ていなかったのに。ちょっとしょんぼりしつつも森の中を歩く。……? いつもの悪夢と少し違うみたいだ。スキルが暴走する気配がない。リアルさも少し少ない? もしかしてこれもサクラのおかげ!? サクラ、ありがとう!
ルンルン気分の僕は少し歩いてメディ村に向かう。あの村にはサクラがいたはずだ。アビスフィアの夢だと龍馬には会えないけど、サクラには会えるよね!
メディ村に着くとまだ幼女に近いサクラとサクラのお母さまがいる。そしてもう一人。むむむ。サクラと仲が良さそうだ。狐の耳をしている女の子だ。サクラにモフモフされて喜んでいるな? ずるい! 僕もモフモフして欲しい!
……? サクラに呼ばれた気がする? でもサクラは村の中で狐っ娘をモフモフしてるし……。どういうこと!? 一人プチパニックになっているともう一度サクラの声が聞こえた。……あ、ここは夢の中だったね。いいもん! 僕はさっさと目を覚まして現実のサクラにモフモフしてもらうもんね! 狐っ娘にあっかんべーをしてから目を覚ます。
「なーに? サクラ」
いつでもモフモフされてもいいように顔を拭いつつ姿を現す。すると横から奇妙な声が聞こえてきた。
「は、はわわわ」
はわわわ?
―――
ひ、ひどい目にあった……。まさか夢に出てきた狐っ娘に
「えと、ごめんなさい。カトレアです。セレシア様、よろしくお願いします」
うんうん。どうやら礼儀正しい子のようだね。僕の可愛さに我を忘れてしまうのは仕方ないから許してあげよう! 一応確認で、
「カティだね! サクラのこと見てくれてありがとう! 僕はセレシア。カティも僕のことをセレスって呼んでいいよ! 敬語も無しで!」
サクラの味方なら僕も味方だよ!
―――
どうやらサクラが王様の所に行くことになったらしい。ジークがいる場所だね? うーん。僕は寝てていいよね? おやすみなさい!
むぅ。サクラに起こされた。ジークなんて会おうと思えばいつでも会えるのに……。ま、せっかくのサクラの厚意だから少しだけジークとお話しするかな。
しばらくレオンやジークと遊んでいると王様が来た。どうやら長話になるみたいだし寝ようかな? 姿を消してサクラの頭の上におさまる。うん、やっぱりここが落ち着くね! ではでは、おやすみなさい!
―――
またまた夢を見た。前回の夢の続きのようだ。よし! カティも含めて三人で遊ぼう! サクラとカティの二人が遊んでいる場所に足を運ぶ。するとカティがこちらを見てきた。
「カティ! おはよう!」
「誰?」
え? カティにめちゃくちゃ警戒されてる。むむむ。僕だよ! セレスだよ!
「知らないわね。それにその姿。そんなに可愛い姿で私からサクラを取ろうとしてもダメなんだからね!」
サクラを背に庇いながら僕に宣戦布告してくるカティ。むむむ。サクラの目を見なさい! 僕をモフモフしたがってるでしょう? 僕の視線に気付いたサクラが手を振ってくれた! 手を振り返そうとするとカティがサクラを家の中に入れてしまった。むむむ。
「ふんっ。これでサクラはあなたのことをモフモフできないわ! 見たこともない生き物にサクラを近付けるわけにはいかないからね! サクラは警戒心が足りないんだから!」
ぐぬぬ。カティが僕に意地悪するなんて! 味方だと思ったのに! この後も窓や屋上から家に侵入してサクラの元に行こうとするもカティに阻まれてしまった。むぅ! カティなんて知らない!
僕は走って森へと戻る。そして森に入ってふとここが夢の中だと思い出す。んむむむ。カティはカティだけど夢のカティは意地悪で現実のカティは優しい? カティはカティで…………??? ダメだ。考えていたらよく分からなくなってしまった。とりあえず一度目を覚まそう。夢の記憶は覚えてないことが多いけど時間が経てば頭の中も整理されるはず!
―――
目が覚めて気付く。あれ? 前回も今回も夢の内容を起きても覚えているね? うーん、忘れちゃう夢と何が違うんだろう? ……ふんふん。むぅ。今の私じゃ考えても分からないのか。とりあえず夢の中で意地悪してきたカティにいたずらしてこよう!
ふっふっふ。カティの前でのんびりしてモフ欲が膨れ上がったところで姿を消してあげたよ! くふふ。モフモフしたいのにモフモフできない苦しみを味わうがいい!! ……あれ? カティ僕の方向いてる? 見えないはずなのに……。そろそろと右へ左へ動いてみるけどカティの視線も一緒に付いてくる。……どうして? ポカーンと立ち止まるとカティに捕捉された。
「セレスはサクラと似てるところがあるからね。行動が分かりやすいのよ。観念して姿を現しなさい?」
ニッコリとしたカティに冷や汗をかきながら姿を現す。
「……お手柔らかに頼むね?」
秘技! うるうるお目目で上目遣い!! これで嫌とは言えまい!!
「だーめ!」
だ、だめですか、そうですか……。足をじたばたさせるけどがっしり捕まってる僕は逃げられない。カティに羽交い絞めにされて……。
う、うにゃあああぁああん!!
しばらくモフモフされ続けた僕はぐったりしたところでサクラに救出された。
「カトレア。許してあげて?」
「別にいいわよ? 結果的にセレスをモフモフできたし」
サクラが苦笑しつつカティに言うとカティはあっさりと許してくれた。優しい! サクラも頭を撫でてくれた。えへへ。サクラは僕に用があったらしく、頭を撫でつつも声をかけてくる。
「セレス、セレスは王宮で陛下の話をどこまで聞いてた?」
「王様の話? 何も聞いてないよ?」
レオンやジークと遊んだ後はサクラの頭の上で寝ていたからね!
「なんでセレスはドヤ顔してるのよ……」
「そんなセレスも可愛いよね!」
そうです! 僕は可愛いのです! さすがサクラ、カティと違って分かってるね! ひっ! カティ? 手をワキワキさせないで! またうにゃうにゃしちゃうから! ごめんね? カティもさすがだよ!? 何がさすがなのかは分からないけど……。
僕がカティの魔の手から逃げ切ってほっとしているとサクラが続きを話し始めた。
「それがね、陛下がセレスのお披露目を国民にしたいんだって。パレードをするからセレスも参加してくれる?」
パレード? よく分からないけどサクラといられるなら良いかな? あと安眠できれば!
「そ、そう。そしたら寝ながらの参加でもいいか聞いてみるね」
「うん!」
後日、無事に許可を取ってきたとサクラに言われた私は国民の前で眠ることになったらしい。不思議な催しだね?
その後、僕が起きている時は、僕がカティにモフモフされたりサクラのモフモフを水面下で取り合ったりしながら過ごすことになった。
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