第93話 サクラとの契約
「ひぐっ。えぐっ」
……どうしてこうなったの? レオンに怒られている僕の名前はセレシア。セレスって呼んでね!
「ほう? 余裕そうだな? サクラとライアスを殺しかけておいて……」
「いたいぃいぃ」
ひどい! レオンにげんこついっぱい落とされた!
「セレス! 二人が死んだらどうするつもりだったんだ! この大バカ者が!!」
「ひぐっ。だってぇ、爆発するなんて知らなかったんだもん……。えぐっ」
だってだって、火は水で消せるじゃん! 普通爆発するとは思わないじゃん!
「まあ、俺も知らなかったが……。お前は知ることが出来ただろうが!」
うぅ、確かに
「こいつ。反省が足りてないな? いいか? ライアスとサクラが話を聞いて咄嗟に防御態勢を取らなかったら死んでた可能性が高かったんだぞ? 二人になにをするか話しておけば対策をとれたかもしれないだろうが」
「ごべんなさーい」
その通りだね。せっかくいい案だと思ってたのに……ぐすん。
―――
「セレス。起きて」
サクラの声に目が覚める。いつの間にか寝ていたみたいだ。……幻滅されてないかな? 恐る恐る見上げるとサクラは笑顔で挨拶してくれた。
「セレス。おはよう。契約ってどうするの?」
!? 契約してくれるの!? 出会ってすぐやらかしちゃったのに? やった! やった!!
「サクラ。おはよう! サクラは何もしなくて大丈夫だよ!!」
僕に任せてね! シュバッと契約してみせるよ!
サクラに入ってる僕の魂の欠片に魔力を流す。僕とサクラの間に魔力が流れるパスができれば契約は終了だ。ふっふっふ。僕には
「サクラ。もう契約は終わったよ?」
「え?」
慌てた顔をするサクラに血の気が引く。え? やっぱり僕との契約嫌だったの!? い、嫌だけどサクラの願いなら契約を解除した方が良いかな? 恐る恐るサクラに確認する。
「僕との契約は嫌だった?」
「そんなことないよ! ただ、契約できた実感がなかっただけ……」
そっか……。嫌とかじゃなかったんだね。実感がなかったのは僕の腕前が良かった証拠だよ? 少し気分があがる。
「んふふ~。ステータスを確認してみて?」
実はサクラと出会ってから気になっていることがあった。僕の魂の欠片がなぜか弱っていたのだ。僕の魂の欠片を持つ以上サクラはエンシェントエルフのはずだけど、魂の欠片が弱い分何かしらの制限がかかっていたと思う。しかーし! 今僕が契約するときに力を注いだから制限がなくなってるはずだ!
「え? 契約者とかは表示されなかったはずじゃ?」
「いいからいいから」
驚く顔が見たいな! 喜んでくれるかな? サクラ達契約者は僕達神霊の魂の欠片を持ってるから普通の人と違って自分でステータスを確認できるよね!
「なにこれ!?」
くふふ。想像通りにサクラが驚いてくれた。すごいでしょ? すごいよね! 僕との契約はサクラの役にきっと立つよ!
「僕と契約した恩恵だよ!」
褒めてくれるよね! サクラが僕の頭を撫でやすいように頭を押し付ける。やった! 撫でてくれた!
「エンシェントエルフってなんだ……」
「無事にエンシェントエルフになったねー」
うんうん。良かった良かった。レオンはサクラがエンシェントエルフじゃないって気付いていなかったみたいで驚いているね。そんなことよりもサクラの疑問に答えないと!
「エンシェントエルフってなに?」
「僕が最初に作ったエルフの祖みたいなものだよ。僕が直接作った存在はもういないはずだから今いるエンシェントエルフはサクラだけかな?」
僕達神霊はそれぞれの種族の始祖として扱われているのは、僕達が魂の欠片を削って創り出した存在がエンシェントを冠する各種族の最初の人物になるからだ。僕の場合はエンシェントエルフが創られる。エンシェントエルフが子供を作ると魂の欠片のさらにその一部を持ったエルフとなり、その子孫がエルフとして暮らしている。他の種族も同様だ。
基本的には何度も何度も欠片が分割されていくから僕達の影響が小さくなっていくんだけど、稀にサクラみたいに魂の欠片を多く持った人が生まれることがある。こういった人達が僕達の契約者になるのだ。
エンシェントを冠する人達は不老長寿だけど、怪我や病気をすると普通に死んでしまうから現在は最初に創った子達の中で生き延びていている子はいないはずだ。……たぶん。
僕が考え事をしてる間にもサクラとレオンがお話をしている。ずるい! サクラにちょっかいをかけようと思って近づくと首を傾げてるのが見えた。……ふんふん。魔力の数値に疑問を持っているんだね? ふっふっふ。僕が教えてあげようじゃないか! サクラの足をテシテシしてから教えてあげる。
「僕の魔力の一部を使えることになるからね! 最初のほうは魔法を使ってもサクラの魔力は減らないよ」
ま、最初というか九割がたの魔力を使い切るまでは僕の魔力で補えるけどね! むむっ! レオンがサクラをいじめているな!? 魔力が多かった意味がないってサクラが落ち込んじゃった!
「そんなことないよ? 僕の魔力をどれくらい使えるかは本人の資質に左右されるからね。サクラのもともとの魔力が多いからそれだけ使えるものだと思って?」
ステータスを見せてもらってびっくりする。サクラはすごいね! 魔力が二百五十万も使えるようになるなんて! 最初に創ったエンシェントエルフの倍近く使えるよ! それに……
「さすがサクラ! S+なんてすごいじゃん!」
「ステータスってSまでじゃなかったの?」
サクラの魔法攻撃力がS+になっている。つまり今のサクラであれば僕達に怪我を負わせられるということ! その後、エンシェントエルフ固有のスキルである植物の友の説明をしたりサクラに僕のスキルを教えたりしつつサクラと過ごした。どうやら遺跡にも用があったらしくて、よく分からない結界を確認していた。お話をして眠くなった僕は王都に戻るよーといったサクラの声を聴きつつサクラの頭の上で眠りにつく。……人前に出るなら姿を消さないとね。……よし、おやすみなさい。
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