第61話 パレード
無事にガーベラがパレードに参加することになったが、セレスに確認を取るのを忘れていた。聞いてみると参加するけど寝るとの返答があったから殿下に確認し、寝てても良いと言われたため私とセレスもパレードに参加することになった。
特にパレードに向けた準備は無いため冒険者ギルドに顔を出したりルアードさんを茶化しに行ったりしつつ過ごした。陛下が手を回し始めたらしく、私の悪い噂は減りつつある。パレードが始まる頃にはほとんど無くなりそうだ。
パレードの日となり、王宮に全員で集まる。
殿下が今日の流れを説明し始めた。
「今日の段取りですが、大通りを一周するだけなので皆さんは魔動車の上で手を振るだけで大丈夫です。護衛もこちらで用意しているのでご安心を。……サクラとライアスには必要無いかもしれませんが」
笑顔で手を振り続けるだけでいいんだね。大変だと聞いたこともあるけどステータスお化けになってる私は大丈夫だろう。
私達に護衛は要らないと言うかむしろ足でまといになりそうでは? 実際のところ陛下も殿下もかなり強いし……。流石に舐めすぎかな?
「……魔境を作り出すほどの力はありませんが全員手練なので心配しなくて大丈夫ですよ」
「それは掘り返さないで」
どうやらまた顔に出ていたらしい。殿下に呆れ顔で言われてしまった。
段取りを確認し終え、パレードが始まるまで雑談していると陛下と王妃様がやってきた。
「やあみんな。今日はよろしくね」
「「よろしくお願いします」」
陛下の挨拶に素で返す私とライアス。カトレアちゃんとガーベラはカーテシーをして頭を下げている。慌ててカーテシーをすると王妃様が笑いだした。
「サクラさん。カトレアさん。初めまして。ライアスさんとガーベラさんはお久しぶりです。全員堅苦しくなくてよろしいですよ。陛下と会った時のように楽にしてくださいな」
王妃様の言葉に姿勢を正して普通に挨拶するとガーベラにど突かれた。
「マナーがなっていませんわよ。王妃様が楽にしてと仰っても友達感覚で接していいことではありませんからね?」
私を睨むガーベラだが陛下や王妃様の向きからは見えない角度のようだ。何気に凄い技術では?
「ガーベラさんも固くならずに大丈夫ですよ。また今度お茶会でもしましょうね!」
「はい! 招待状を楽しみにしております!」
心做しかガーベラの目がキラキラしてる気がする。やはり令嬢にとって王妃様は憧れの人なのだろうか。
「サクラさんも。ローズの話も気になるけど貴方の話も聞きたいわ」
ぼーっとしていると私もお茶会に誘われてしまった。
「はい。招待を楽しみにしております」
まさか断らないよな? と言ったガーベラの目力に負けて仕方なくお誘いを受ける。……どこかでマナー講習でもやってないかな?
そのあ、陛下と王妃様の二人と学生組に分かれて魔動車に乗り込む。
「シルビアは陛下達と一緒じゃなくて良かったのか?」
「ええ、ガーベラさんと共に不慣れなあなた達三人をサポートしますよ」
……ガーベラは私にもしっかり教えてくれるかな?
―――
パレードが始まった。今回の主役であるセレスは私の頭の上で猫の携帯になって寝ている。
「レオンとジークは姿を現さないの?」
「俺たちは既に知られてるからな。わざわざ姿を現す必要は無いだろ」
「今回の題目はお披露目なんだよ? 改めて姿を現す必要はないと思うの」
二人とも全力で嫌がっている。何かトラウマでもあるのだろうか? それとも実は人嫌いとか?
「別に嫌ってはないんだよ? 嫌ってたら契約者以外の人に配慮なんてしないの」
「戦闘形態だと恐れられるし、人形態だと周りがわーきゃーうるさいし、通常の形態だとみんな群がってきて疲れるんだよ……」
全員が前のカトレアちゃんみたいになるってことか……。一人二人ならまだしも大勢となると……。文化祭から体育祭までの日々を思い出して身震いする。
「わざわざ姿を現す必要なんて無いね。私も姿を消す魔道具作ろうかな……」
「世に出回ると犯罪者が急増しそうだな」
「世に出すつもりは無いよ! 避難場所を作るだけ。あぁ、空の適正が欲しい……」
きっと空の適正があれば亜空間でもこじ開けて一人ひっそりできるのだろう。……実際の使い手を見た事が無いからただの想像だけとね。今度ハカセに姿を消す魔道具か亜空間を作る魔道具が作れないか相談してみようか。
ミーヤやチコ、レイラさんやライラさんを見つけては手を振りつつ、セレスを見やすいように抱き抱える。長時間立ちっぱなし手を振りっぱなしで精神的に疲れてきた。
「サクラさん。この程度でだらけてはいけませんわ。王太子の婚約者候補たるもの、背筋を伸ばして民への笑顔を絶やしてはいけません」
ちょっとだけ手を振るのをサボったら即ガーベラに見つかってしまった。姑かな? というか何度も言ってるけど婚約者候補じゃないんだけど……。でも、言うだけあってガーベラは終始笑顔を浮かべつつ見物客に向かって手を振っている。
「もうすぐ終わるので我慢してください。終わったら全員王宮でおいしい食事にしましょう」
殿下がそう励まして来るけど分かってないな? 夕食会は逆に精神的な負担なんだよ?なんで一平民が王族とご飯を一緒に食べないと行けないんだ……。
パレードも終盤に近付き、やっと終わると一息つこうとするとセレスが突然起き上がった。私も同時に嫌な予感を感じて氷華を取り出す。
「アイスウォール」
「
たちまち氷と植物の壁が出来上がり周りで驚きの声が上がる。
「サクラにセレス? 突然どうし「ドーン!」キャッ!」
カトレアちゃんが驚いて私に何事か確認しようとした時、壁と植物に爆発が起きる。
その後も何度も爆発が起きるが再生する植物が爆発を阻み、爆散した植物も氷の壁で受け止めているため振動以外はこちらにこない。
「えへへ。サクラと初めての共同作業だ」
「そ、そうだね」
セレスは喜んでいるけど今はそれどころじゃない。パニックになりつつある観客達を宥めないと。
「落ち着いてください! この付近は安全です! 走ったりしないで、手荒になってもいいのでパニックになってる人を落ち着かせてください!」
「サクラさんが攻撃に対応してくれていますわ。じきに攻撃も収まるでしょう!」
殿下とガーベラは流石というか既に観客を落ち着かせように動いているね。そしたら私達がやるべき事は……。
「セレス、攻撃してる人の場所は分かる?」
私の魔力感知でもだいたいの方向と人数は分かるけどもし私よりも格上の存在が姿を隠していたら危険だからセレスの
「ふんふん。二時の方向に二人、三時の方向に二人、七時の方向に六人いるよ」
「よし、俺が二時の方向の敵を、レオンが三時の敵を、サクラとセレスは七時の敵を頼む」
「おう」
セレスの報告を聞いてライアスが振り分けをする。観客やカトレアちゃんの事はジークと殿下に任せれば良いだろう。
セレスと共に襲撃者達の元へと向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます