第3話 それは背伸びなのか
両サイドにビルやお店が並び、夕暮れのような、明るく暗い状況を除けば至って普通な道であるのだが、そこに登場する人物達が異様だった。
空中で大剣を構えている中学生程の体格の少女に向け、大型トレーラー程の図体を持つネガティーブが大きな口を開きながら飛びかかった。
鋭い歯並びを少女に向けながら、唸り声を上げている。そんな狼の姿をしたネガティーブを見て、表情を変えずに叫ぶ。
「アカリ。足止めッ!」
アカリ、と呼ばれた、これこそ魔法少女、で真っ先に浮かぶようなピンクを基調とし、魔改造された制服を着ている少女は、手に持った先端に星が付いているステッキを目前の敵に構え、
「ミナちゃん行くよっ! フレアっっ!!!」
アカリの呪文によって、ステッキの先端から大玉スイカ程の大きさの火球が発射される。
火球はミナと呼ばれた少女の側をすり抜け、大型トレーラーのような大きさの狼型のネガティーブに命中する。
『ギャウ!?』
大きく口を開き、ミナを飲み込もうと襲ってきていたので、火球はモノの見事に、吸い込まれるように口の中に入っていく。肉が焼けるような良い匂いが、大狼の半開きの口から焦げた黒煙と共に鼻腔を擽ぐる。
その出来事を当たり前のように、そうなると前提付けて行動していたミナは、数十秒のタメを阻害される事なく、大剣の力を遺憾無く発揮させる。
「いくらデカくても殴られれば痛い! 斬られればいつかは死ぬ! うぉりゃああああ!!!」
空中で、何らかの魔法か何かで立っている状態から繰り出される振り下ろしは、ミナの気迫迫った掛け声と共に大狼の頭部を縦に真っ二つにし、威力収まらずその場で一回転してしまう。
どうやら空中に立っていられたのは、その場に見えない板の上に立っていたからで、体勢を崩したミナの体は空中に投げ出されることになった。
今までは余裕綽々と、年相応以上に嬉々爛々としていた表情をしていたミナだったが、流石に普通の中学生はマンション4階程の高さから紐なしバンジーは慣れていないようで、初めて焦ったような表情を見せる。
「ひ、ひぃ・・・」
半分涙目になっているミナを覆ったのはアカリが放った
「た、助かったアカリ!! し、死ぬかと思った・・・」
砂の捕縛はミナを包み、ゆっくりと地面に下ろした。
手に持った大剣を変身端末に姿を戻し、アカリに近付く。
戻ってくるミナの体に目に見える傷が無いことを確認し、アカリは胸を下ろす。
「だ、だから空中戦は止めようって言ったじゃん・・・。そのマジカルは最近覚えたばっかなんだからもうちょっと慣れてから実戦に取り入れた方が良いよ・・・?」
「確かにそうだけど・・・でも、いざ目前にすると、こう、心が疼いちゃって」
「疼くって・・・。それでミナちゃんが怪我しちゃったら私・・・」
悪いとは思っているようで、ごめんごめんと手を合わせて謝るミナ。
戦うのはこの際良い。もう、戦う戦わない云々の話は2週間前の初めて魔法少女に成った日に決めたから。
でも、決めたからって、それがただおもむろに突っ込んでいい理由にはならないのだ。
実際、2週間の期間で何人か魔法少女の資格を剥奪された人を見てきた。死なないとは言え、あんな生々しい痛みを我慢できる筈がない。
どうすれば良いか考えていると、悩んでいるアカリの肩をミナがぽん、と叩く。
「大丈夫だって、なんて言ったって私達は無敵の魔法少女タッグだからね! どんなネガティーブだってどんとこいっだ!」
そう言って無理矢理肩を組み、豪快に笑いながらポリゴンが崩れるようにして体が解れ、空に還っていく大狼の側を離れていく。
「アカリが困ったら私が助けて、私が困ったらアカリが助けてくれる。いつだってそうだろ?」
肩を組んで豪快に笑う彼女の横顔を見ながらアカリは悩みを振り払う。
2人は幼稚園からの仲であるのだ。
少し自己主張が弱いアカリがイジメらている所をミナが助けてから腐れ縁かのようにずっと一緒のクラス、ずっとの友達でいる。
そんな長いようで短い2人の人生の中で、ミナが言ったように、お互いの足りない部分を補うように助け合ってきた。それが魔法少女になって、ネガティーブと戦うようになったからといってその関係が崩れる事はなかった。
アカリとミナは肩を組んで一緒に歩く。
ミナの魔法少女としての衣装である金属製の胸当てと腰の防具がアカリに突き刺さり、あまりの痛さに、流石に我慢できないと言った表情で、歩いて数歩で肩組みは終わったが。
そんな2人の魔法少女の活躍を、少し離れたビルの中から見ている影が一つあった。
魔法少女と呼ぶには少し過激で、少女と呼ぶには若干成熟している肉体。心は成人男性のキサトである。
魔法少女になると身体能力が向上するようで、その恩恵に預かった視力で見ていた訳である。事の顛末を見届け息を吐きながらポヨに言う。
「・・・あれのどこに助けに入れる余地があった? なぁ? 言ったよな『困っている魔法少女に助けに入って仲良くなるポヨ』って。全然困ってなかったんだが」
「元々はイマドキの女の子に話し掛ける勇気と話術がないキサトが悪いポヨ。自分の事を棚に上げてポヨを責めるのは大人としてどうかと思うポヨー?」
なんだこいつ・・・と、親の仇かのような形相でポヨを睨みつける。だが、言っている事は真実なので特にこれといった反論は思い浮かばない。常識的に考えて成人行った男性が、中高生と日常会話出来るかって話である。何このおっさん、怖いんですけどー。で、SNSに拡散されて誹謗中傷されるのがオチだ。そうに違いない。
「色々と拗らせてる感をひしひしと感じるポヨ」
「うっせ。で、その助けに入るって作戦は頓挫した訳だけど、他の魔法少女を探すか?」
そうなると移動が問題だな・・・いや、身体能力が上がってるって事はもしかして、ビルからビルに飛び移れる・・・? と、ニンジャガールみたいな空想を思い描く。
それは魔法少女じゃないよね・・・? と、思う木佐斗に、それも”魔法”って奴だよ、とキサトが答える。これこそ自問自答である。
じゃあ移動の段取りしないと・・・と、いざと成った時の為に出現させといたステッキを消したキサト。ポヨの言葉に出鼻をくじかれる。
「いや、他の魔法少女は探さないポヨ」
「は?」
椅子から立ち上がったキサトはゆっくりと元の椅子に座る。足を組む。大きな窓が正面にあるので若干パンツが見えている事に気付き、内股になる。これが辱めか・・・と、いつか見た女騎士の漫画に共感を覚える。恐らく違う辱めだろうが。
空中をぽよぽよと浮かんでいるホログラムのポヨは、その不安定飛行のまま言葉を続ける。
「引っ込み思案な女の子と、強気な女の子。属性的にはバッチリな2人組ポヨ。絶対一緒に居たいポヨ、目の保養的に」
「完全に趣味嗜好じゃねぇか・・・つか目の保養って、それで見えてんのか?」
「見えてないポヨ? 超次元的な技術力で視認してるからカメラとかは分からないと思うポヨ」
「カメラて・・・て、そんな黒ハムの意見で無駄な時間を過ごしたくないんだが・・・」
「無駄な時間って言ったって・・・良いポヨ。他の魔法少女まで一番近くても数百キロはあるけど良いポヨ? 良いポヨね? ポヨの意見で無駄な時間を過ごしたくないんだポヨもんね」
静岡から大阪までの距離が300と少しキロメートルである。
「す、数百!? ・・・い、いや別に、そんな、黒ハムの意見が嫌だって言ってる訳じゃないんだぜ? うん。俺は別に良いと思うぜ、あの2人に決めるの。趣味嗜好は自由だもんな、うん」
ハムスターに人間のあれこれは当てはまるのか少し疑問であるが、まぁ恋愛は自由なのだ。そこら辺を聞くのは邪推だろう。
「ま、良いポヨ。なら早く向かった方が良いポヨ。さっき戦ったネガティーブとは格段に魔力の質が違う圧を彼女らの近くに感じるポヨ」
「・・・え? 敵の場所がわかるのか?」
「ポヨ。魔法少女もネガティーブも力の本質は同じポヨから分かるポヨ。そんな事も理解出来ないから女体化して興奮する異常性癖が人格を持っちゃうんだポヨ」
「お、おう。・・・おう? お?」
聞き流し、疑問に思い、拾い集める。認識し、理解する。
「んだ、いきなり口悪りぃなコイツ!!?? 本質的にはお前も俺と同じだろ!! 言われる筋合いはないぞ!」
キサトは自己完結型の変態だとして、ポヨは他者に迷惑をかける他力型の変態だ。迷惑量としてみればポヨに軍配が上がってしまうが、変態は変態なので同罪である。まぁ、見てくれは美少女と可愛いハムスターなので今のところ実害はないが。
叫ぶキサトを宥め、ポヨはキサトの前を飛翔し、先導する。
建物を足場とし、翔るように移動するキサト。その目の前を中身は知らないが、見た目は可愛いハムスターが飛んでいるのだ。フワフワなお尻が彼を誘惑する。
まぁ、ホログラムだしな、と思って半分冗談で手を伸ばす。柔らかい肌触りが返ってきた。
「・・・若干ポヨも気遣って端末じゃなく、目に見える形として実体を持ったけど、キサトにその気が無いならポヨは端末の中に戻るポヨ? 四六時中、肌身離さず監視する事にするけど良いポヨね」
「い、いやぁ〜? ま、まぁ、大体場所は分かったから2人の仲間になるのを早めるって事でここは勘弁をっ!!」
と、そう言ってポヨの反応を待たずに、今までよりも深い踏み込みで加速する。ポヨが静止の声を言った頃には既にキサトの体は遥か先に見えていた。
「この短期間で魔法少女に適応してるポヨ・・・? 流石素質だけはあるポヨね」
褒められているのか貶されているのか。恐らく2対8程の割合だろう。
速度は速くなったが、今のポヨは少し不思議なホログラムなので少しその体がブレて消え、数コンマでキサトの近くに再表示される。
「ポヨ」
「な・・・っ」
驚いた表情で、足を踏み外し落下する。
街灯をへし折りながら地上に不時着し、砂埃が上がる。
「イテテ・・・」
と、頭を下に落下したので少し痛む頭を抑えながら立ち上がる。
「(あの高さから落ちてもこの痛みで終わるって・・・すげぇけど、怖いな。主に自分の魔法少女としての才能が)」
ポヨの賞賛を結構的を射っている様である。
そんな自画自賛をしながら異様に立ち込めている砂埃に疑問を覚える。
移動の少しの間、ポヨがこのマジカルフィールドは前の日本を元にはしているが、その面積は何倍にもなっていると言っていたのを思い出す。
キサト自身、この辺りは自分の通勤ルートからは外れているが、休みの日にたまに来るレベルの記憶で覚えている。
覚えているのだが、このくるぶしまで埋まるような砂丘はここら辺には無かったし、そもそもここは鳥取ですらない。
つまりはネガティーブとかが原因なのだろうと考える。
砂埃が若干晴れ、壁に埋まるようにして貼り付けになっている見覚えのある少女を見つける。
「あ、アカリちゃんじゃ・・・」
と、まで言い気付く。そう言えばこの子達との関係は、キサトの一方的な知り合いってだけなのである。そんな関係でいきなり本名を言ってしまうと不審がられるのは間違いない。まぁ、この状況自体が不審そのものなので、環境的に考えてプラマイゼロと言えなくも無いだろう。言えないが。
さて、どんなファーストコンタクトをしようか、と悩んでいると貼り付けになっているアカリちゃんの瞼が開いた。どうやら気を失っていたようである。
どうやって声を掛けるのが正解か、言い淀んでいると叫ばれた。
「お姉さん下!! また引き摺り込まれちゃう!!」
ミナの叫び声と同時に腰を掴まれる感触を覚え、地中に引きづり込まれる。引き込まれる中で薄っすらと目を開き、相手がアリジゴクの様な体をしている事を確認する。
はっきり言って仕舞えばキサトはそこまで昆虫が好きでもなく、かといって嫌いでもない普通な人間なのであるが、少しはデフォルメされているとは言え、公園にあるような土管程の大きさのアリジゴクは普通にキモい。キモいし怖い。
ので、自身の能力でどうにかしてみよう、と考えたのだが、小さな脳細胞で小さな疑問を思い出す。
「(そう言えばアカリちゃんが『”また”引き摺り込まれちゃう』とか言ってたよな。・・・また? 思い返せば地上にミナちゃんの姿は無かった。って事は、この引き摺り込まれた先にミナちゃんがいるって事か!?)」
大人の考察力で分からせた訳であるが。
アリジゴクの生態として、引き摺り込まれたアリは、その体液を吸われ抜け殻を捨てるのだが、その場合先に引き摺り込まれたミナがカラカラのミイラになっている可能性が出てくるのだが・・・。
「っと、ここが大アリジゴクの住処って訳か。そう言う事でじゃあな、トゥルーオブダークネス」
地下に大きな空間を作り、エサを溜め込む新スタイルのアリジゴクだったようで、そんな心配はなかった。
空間があることが分かり、もう用がなくなったと腰をがっしりとホールドしているアリジゴクに向け召喚したステッキを向け
「・・・やっぱ魔法少女っぽくない感じだよなぁ。折角魔法少女なんだからもっと可愛い技だったら良かったんだけど」
例えば丸みを帯びた銃からちぢれ麺のようなビームが出るとか。
圧倒的に劣化性能であるが、無いものねだりを考えながら遠く見える、同じように壁に埋め込まれるようにして貼り付けにされているミナに全速力で向かう。
その姿は完全に捕食前、と言った様子で先ほどまで戦いで見せていた大剣は、ミナの前で大きな両顎を広げているアリジゴクの腹部に刺さっている。完全に絶体絶命の状況であった。
「マジカ〜〜〜ル、振り下ろしッッ!!!」
そんな殺意の篭った文句と共に、アリジゴクの腹部に刺さっていた大剣の柄に、握りしめた両手をジャストフィットさせる。気持ちが良いほどするっ、と押し込め、貫通する。
身を捩らせるアリジゴクの頭部に向け一歩踏み出し、右ストストレートをぶっ放す。
この瞬間だけはプロのボクサーにだって引けを取らない程の強烈パンチだ。ゲーセンのパンチングマシーンで計測するならば、数値はエラー待ったなしだろう。リアルに筐体がぶっ飛ぶ。
圧倒的な魔法少女としてのスペックを生かした攻撃は、アリジゴクをポリゴン化しきる事に成功する。
その一連の攻撃は、魔法少女しては些か暴力が過ぎるものであったが、結果良ければ全て良しである。
キサトは息を吐き、良い笑顔で声を掛ける。
「ミナちゃん、助けに来たぞ!!」
良い笑顔を見せるキサト。それを目にしたミナは、先程までの一連の流れを見ており、口を半開きにさせ驚きを露わにしている。
イマドキは金髪が流行っているのか、と驚く程綺麗な髪色で、野生児のような荒々しく、だけども可愛らしさを残している髪型に八重歯が見える可愛らしい顔が台無しだぜ? と後半、だけどもの辺りから漏れているキサトの言葉に今度は、顔を紅葉とさせるもになった。
これが、今は地上でポヨが救出を頑張っているピンク髪の、小さなお団子でサイドに纏めている長い睫毛が印象的なアカリだったら反応はもう少し変わっていただろう。
あのアカリは良い意味でも悪い意味でも魔法少女に憧れを抱いている中学生なのだ。
キサトが思うより、幾分か純粋な子達であるが、そんな憧れを持っているアカリでだった場合、現実と理想の狭間で混濁し、意識をより低迷させていたこと間違いなしであるが、ミナは少し変わっている。
地上での一戦で吠えたように若干肉体派な魔法少女であるのだ。どんだけデカくても、硬くても、強くても殴れば、そして斬れば倒せると考えている彼女の理念を目の前で体現したキサトの姿は理想とも言えるものである。
憧れ、燃え、焦がれ、自分もそうなりたいと心の端でどこか思う。
そんな進んで良いのか分からない、大人の階段を上ろうとしているミナに気付かないキサトは、一歩近付き手を差し伸べる。
「出れるかな、ミナちゃん?」
心持ちは優しげなお兄さん風である。まぁ、年下との接し方が分からないので、取り敢えずは嫌われないだろう優しさで表情を覆っている。
差し伸べられ、少し迷いながら手を握る。よっこらしょ、と引き抜く事に成功した訳である。
さて、問題はここからどうやって出るかだが・・・と、悩んでいると少し離れた大きな穴から何やら見覚えのある影がこっちに向かっているのが見える。
「えっと、記憶が正しければあれはさっき俺が倒したアリジゴク・・・だよな?」
「そう、だけど、でも、何か見た目おかしいような、おかしくないような・・・いや、おかしいね!?」
恐らくお母さんなのであろう、先程のアリジゴクが公園の土管サイズであれば、今、どごどごと強烈な移動音を響かしているのは、見舞い違いでなければ新幹線程の大きさはある。
デカイし、キモい。
さてやらなきゃな、と自分の心を奮い立たせるようにステッキを召喚し、構える。瞬間、こちらを狙った大玉スイカ程の大きさの砂の塊が飛んでくる。
それはどうやらキサトを狙っている訳ではなく・・・反応が遅れ、横に流れる。視線を追うと、それはミナを狙っていた。
「や、べ・・・」
ステッキ、いや遅い。なら手。と、握った右手を、そのままトゥルーオブダークネスをステッキを落としながら発動し・・・いつの間にかその手に握られていた大剣が降りかかる。
「て、やあああああ!!!!」
気迫の篭ったミナの大剣の叩き付けが砂球を一刀両断し、砂粒に変え、背後に流す。
呆気に取られていると、その表情がミナに気付かれる。ニヤァ、とその表情に笑みが溢れる。
「どう? 私の大剣捌き。いやぁ、最初は普通にヘマしちゃったけど、けど! 今は違うミナだよ!! ふふっお姉さん、どっちが倒せるか競争してみる?」
と、不敵な笑みを向けられる。
競争?
俺が?
こんな分からせないといけないっぽい(偏見)女の子と?
うーん、趣味じゃ無いなぁ。
「おう、良いぞ。じゃあ、俺はハンデで武器は無しでやるからな〜」
床に落としたままのステッキを消す。
ここは大人の威厳! で戦ってみても良いのだが、生憎キサトはそこまで分からせ趣味のある人間じゃない。ある程度引くことを覚えてるし、相手を建てる意味も理解している。
だからこその発言であるが、今の容姿は20歳ちょっとの成人男性ではない。それを抜かした発言だった。
「なっ、お姉さん、それはミナを舐めてるって! これでも私は中学3年生なんだよっ!!?? ほら!」
向かってきた砂球を大剣で叩っ斬る。
「ねっ! だから本気でやろーよ!!」
ここで失敗を悟る。わざわざ口に出して「手を抜く」発言は余りよろしく無かった、と。
確かに考えてみれば、キサト自身、幼少期に親戚の集まり等で遊んでもらった際、そんな事を言っている大人はいなかったのを超常的な記憶力でなんとか捻り出す。偽装かもしれないが、大人らしく無かったと気付く。
「あー、そうだね、ごめんね。よーし、俺、本気出しちゃうぞ〜?」
と、言い終わってから「ん? 年齢と大剣で砂球を叩っ斬る事に関連性ある?」と疑問に思ってしまったが、ミナの威勢の良い「スタート!」の声に流されてしまう。
その直後にキサトが落とされた穴からアカリとポヨが落ちてきた訳なのだが・・・
位置関係的にキサト、ミナ。アカリ、ポヨ。マザーアリジゴクの関係である。いきなり落とされた訳のわからない2人が間に挟まれているので・・・
「な、なにこれ〜〜〜〜!!?? え、ミナちゃん!? あ、怪我は無さそう・・・て、えぇえぇええぇ大きいネガティーブ!? あ、すみません、ミナちゃんを助けて頂いて・・・」
と、心配、驚き、感謝と告げられた元気一杯のアカリを含めた3人でマザーアリジゴクを討伐する運びになった。
ちなみにポヨからは言葉の節々から憎たらしいが込められたお小言を戦っているキサトの耳元で話し続けていた、ってのが秘話なのだが、特に他2人の利点にはならないのでキサトから話す事はないだろう。汚点であるし。
「いや、忘れてはないよ? 忘れてはないけどなぁ」
地上のアカリ救出の件は忘れていたって話である。
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