正しさと弱さと強さ

 何が正しくて、何が正しくないのか。


 理解できているのに、心の弱さが邪魔をする。

 

 怒る必要があるときに怒れず、優しくすべきときに優しくできない。


 相手の反応が怖くて、どう思われるのか怖くて。


 怒られてばかりだったから、怒られるのを待つようになってしまった。


 優しくされるのに慣れていないから、


 優しくされても遠慮するようになってしまった。


 本当は、どうするのが正しいのかわかっているのに。


 まるで掛け算のように、


 ネガティブな感情と経験だけがふくれあがっていく。


 もしも弱さではなく強さがあったなら、


 ポジティブな感情と経験を得られたのだろうか。


 クラスのリーダー格の男子に強制されて、


 転校生の女の子に対して悪口を言ったことがある。


 大勢の男子の中のひとりにすぎなかった僕の家まで先生がやってきて、


 怒るのではなく時間をかけて諭してくれた。


 僕がしたのはイジメで、誰かを傷つけるのはよくないことだと。


 先生は間違っていないし、


 先生に言われたことを真剣に受け止めた小学生の僕も間違っていない。


 でも、


 それからの僕は何か言われたりされたりしても反撃できないようになり、


 気がつけばイジメられるようになっていた。


 何が正しくて、何が正しくないのか。

 

 正しさに強さを組み合わせられたなら、


 僕の人生は違ったものになっていたのかもしれない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る