12話  魔法少女は洞窟を探索する


「…ごめん。」

私は謝っておく。


「別に怒ってないからいいよ。」

エリカは苦笑しながら言う。


 良かった。嫌われたと思った。


「でも、どうしよう。この洞窟、入るの?」

エリカは目の前の洞窟を指して言う。


 私は洞窟の中に何がいるかも分かんないのに進むようなバカではないのだ。

私はウィンドカッターを調節して放つ。


 細く、長く、遠くだ。 

なんでそんなことするかって?私の魔力感知を届かせるためだよ。


 するとボンと小さく音が鳴る。

あれ、案外短いのかな。この洞窟。


「何したの、ソラちゃん?」

いや、それは、ちょっと…


「いや、あれだよあれ。そうあれ。」


「どれよ。」

私は目を逸らす。


「言いたくないなら言わなくていいよ。」

そう言ってくれるので言わないでおく。


 えっと中にはスネイクが50匹…

あともう1体ボスみたいなのがいる。


「…ファイア!ロックウォール!」

こんなのまともに相手してられないよ!

エリカを守りながらスネイク50匹だよ!?

無理だよね。


 なので私は酸素を燃やす事にした。ここはちょうど洞窟、酸素が入るのはここだけだからここを塞げば。

風も送っとくか。


「ウィンドカッター。」

これも調節して打つ。


 私の魔法、調節しないと、とんでもないものが出来ちゃうから厄介だよね。


 しばらくするとだいぶ数が減ってきた。

そろそろ壁も外すかな。


 私はロックウォールを魔力に戻す。


「ソラちゃん、ほんとに何してるの?」

まぁこのくらいは言ってもいいよね。


「炎で酸素を燃やして息が出来ないようにしただけだよ。」

異世界ものの小説、漫画では、転生した日本人がたまにやる戦い方だよね。

簡単な知識で一網打尽に出来るからね。


「酸素?」

この世界では酸素は知られてないのかな?


「つまり、みんな息が出来なくて死んだんだよ。」


「へぇ…?」

分かってないみたいだ。


「それじゃあ進んでいいの?」

ダメだよ。まだ熱いでしょ。


「ちょっと冷まそうかな。」

私はウォーターとウィンドカッターを合わせて奥まで水を届ける。


 水で少しは冷めるでしょ。


「ソラちゃんってほんと不思議なことするのね。」

これが転生者よ底力よ。

キリッとした表情で言ってみたいけど、恥ずかしくて出来そうもない。


「……」


なんかこっちを見てくるんだけど。


「なに?」

なんでもないと返された。

なんでもないって言われると逆に気になる。

 私もジッと見返す。


「…ソラちゃんの髪が綺麗だなって思っただけだよ。」

それを言うならエリカをだって綺麗だよ。緑色で透き通ってて。


「いいな、その綺麗な青。」

エリカは緑の方が似合うと思うけど。


 私はこの青はあまり好きじゃない。

変えることは出来ないからこのままだけど、私は普通の黒色が、よかった。


「ソラちゃん?どうしたの?」

嫌なこと思い出しちゃった。


「なんでもないよ。」

私は微笑を浮かべて言う。


 そろそろ進める程度に冷めてきたので進む事にする。まだちょっと熱いけどね。


 そして私はファイアで光を灯す。


「熱いねースネイクもこれだったら倒れてるでしょ。」

手をうちわ代わりにパタパタと仰いでる。

 汗と相まって色っぽく見える。

私じゃ到底出来ないことだね。


 私はもう、諦めてる。身長も上半身の膨らみも。


「何見てるの?」

何か疑うような目で見てくる。


「周りを確認してるだけだよ。」

私はぷいと前を向き歩き出す。


 それにしてもスネイクの死骸がめっちゃ落ちてる。すごい落ちてる。


「これ、ソラちゃん1人でやったんだよね。」

なんか遠い目で死骸を見る。


「あんなに苦労して倒してた昔の私たちはなんだったんだろ。」

前にも倒したことがあるのかな?


「その時はどうやって倒したの?」

参考までに聞いておく。


「ん?私が支援魔法で全員の攻撃と速度を上げてバージが自分を更に強化して攻撃して、その隙にダクラスが後ろから援護、最後にゼンがトドメを刺すって感じで。」


 結構苦戦してるんだね。スネイクの鱗、思ったより柔らかくて倒しやすかったけどね。

こう、魚の鱗みたいな感じ。


「ソラちゃんはそんなスネイクを一発で切っちゃう、しかも魔法で。私もそんな魔法使いたいな。」


 うん。これは神様チートの力だから。

私もこんな魔法、自分で使えるようになりたい。


 スネイクとも戦うことなく歩いて行く。

…でも、1番奥になんかボスみたいなのいるんだよね。


「あれで倒れてくれれば嬉しかったんだけど…」

小声で愚痴る。


「ん?どうしたの、ソラちゃん。」

聞かれちゃった。


「いや、何でもないよ。」


 …エリカをボスのとこまで連れてくのは危ないからやめとくか。


「ねぇ、私は先進んでるからそこで解体しててくれない?」

私はエリカに言う。


「…?うん、分かった。」

エリカは解体を始める。


「よし、じゃあ行くかぁ。」

ボスをちゃちゃっと倒しちゃいますか。


 スネイクのボスだからキングスネイクとかになるのかな?

 分かんないけど進まないと分かるものも分かんない。


「この先…だよね?」

私はファイアの灯りを強めて先に行かせる。


 その瞬間、ファイアが消えた。


「…ッ!」

そんな簡単に消される炎じゃ無いのに!


 私は更に強い炎をステッキで作り出しその場に出る。


「ブラックポイズンスネイク?」

ブラックスネイクじゃ無いの?


 すると赤黒く尻尾が光り、私に向かって振ってくる。


「っ!速い!」

身体強化を全力で使い、上に飛ぶ。


 するとその時を見計らったかのように毒の液を吐いてくる。


「ちょ、待ってよ。」

木○拓○じゃないよ。

って今はそんなジョーク言ってる場合じゃ無い!


「アクアソーサーⅢ!」

思いっきり放つと毒液は弾け、少しだけスネイクの体に傷をつける。


 私は地面に着地し、その巨体と対峙する。


————————————


 私は何故かソラちゃんに解体を頼まれた。

どうしたんだろう。


 まぁ、私じゃ戦力にならないからしょうがないか。


 私は解体を始める。



 あらかた解体し終わって先に進もうとすると。


「っは…ちょ、それは無いって!」


 ソラちゃんの焦った声が聞こえる。


「ソラちゃん!?」

私は遠目から見て独り言のように言う。


 あとなに、あれ?ブラックスネイク?それにしては尻尾が赤黒い。


 もしかして、伝説のブラックポイズンスネイク?

なんでこんなところに?


 私が出ていっても死んでしまう。

それじゃあソラちゃんに迷惑をかけてしまう。

 魔法を使おうにも魔力を感知されちゃうから、これも迷惑になる。


 どうしよう、どうしよう。このまま見てるしかないの?


 私は何も出来ないまま、立ち尽くす。


————————————————————

作者後書き


 ソラが初めて苦戦します。

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