第552話


 ウグイス嬢のアナウンスが流れる。


「大森高校―――二番―――ショート―――紫崎君―――」


 紫崎が打席に立つ。

 中野監督のサインを確認した後に―――ヘルメットに指を当てる。


(視界が雨で少しボヤけているが球速と制球は良くなってきている―――佐伯、お前のリードしだいだからな!)


 切間が構える。

 佐伯がサインを送り、切間が頷く。

 紫崎が構えるとセットポジションで投げ込む。

 指先からボールが離れる。

 雨の水滴がボールの球威で小さな水の渦を作る―――。

 紫崎がスイングする。

 打者手前でボールが左に曲がりながら落ちる。

 バットの下をボールが掠める。

 そのまま佐伯のミットにボールが収まる。


「―――ストライク!」


 球審が宣言する。

 スコアボードに136キロの球速が表示される


(雨とは言え、制球も速度も良い。切間さん、そういえば雨の試合に強かったな―――珍しい投手だけど、今は心強い)


 佐伯が返球する。

 切間が捕球して、構える。

 佐伯がサインを送り、切間が頷く。

 紫崎が構える。


「フッ、雨の野球は中学でも経験済みだ―――慣れればどうってことはない」


 切間がセットポジションで投げ込む。

 指先からボールが離れる。

 空中で飛び散る水がボールの軌道を描く。

 紫崎がタイミングを合わせて、スイングする。

 打者手前でボールがスライダーより深く曲がる。

 バットの軸にボールが当たる。

 カキンッと言う金属音と共にボールが高く飛ぶ。


「っち! またスラーブを打ちやがった!」


 切間が声を漏らす。

 ハインが二塁へ走る。

 紫崎がバットを捨てて、一塁へ走る。

 ライトが外野フェンスに当たったボールを拾いに行く。

 雨の中でハインが速度を落とし、滑らないように二塁へ向かう―――。

 紫崎も同様に一塁へ速度を落として、走る。

 ライトがボールを拾い―――送球する。

 セカンドが捕球体制に入る。

 ハインが二塁を踏む。

 その後にすぐにセカンドにボールが入る。


「―――セーフ!」


 塁審が宣言する。

 紫崎がゆっくりとその隙に一塁を踏む。

 セカンドが切間に送球する。

 雨に濡れながら切間が捕球する。


「試合終わったら風呂入りてーぜ!」


 そう言って、キャッチャーボックスを見る。




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