第550話

 ウグイス嬢のアナウンスが流れる。


「香月高校―――六番―――」


 六番打者が打席に立つ。

 ハインが考え込む。


(このイニングからリクオの球威が落ちて制球も段々厳しくなっていく―――どれを投げさせるべきか―――)


 三塁の三岳が安堵する。


(心なしか捕手に焦りが見えるな―――俺がホームベースに帰れるのは高い可能性になったわけだ)


 打者が構える。

 考え終えたハインがサインを送る。

 陸雄が頷いて、構える。

 二塁の佐伯がリードを取る。

 陸雄がセットポジションで投げ込む。

 指先からボールが離れる。

 内角やや低めにボールが飛んでいく。

 打者がスイングする。

 打者手前でボールが半個分落ちる。


(まずい! ―――打たれる!)


 ハインがハッとする。

 バットの軸上にボールが当たる。

 カキンッと言う金属音と共にボールが高く飛ぶ。

 三岳がホームベースに向かう―――。

 佐伯が三塁へ走る。

 二塁へ一塁ランナーが走り、打者が一塁へ向かう。

 レフトの錦と灰田がボールを追って、前進する。

 錦がバウンドするボールをグローブで捕った時―――。


「さらなる追加点を取らせていただく!」


 三岳がホームベースを踏んで、声を出す。

 ―――香月高校に12点目が入る。

 錦が三塁へ投げ込む。

 打者が一塁を蹴り上げ、二塁にランナーが着く。

 佐伯が三塁へスライディングする。

 ショートの紫崎が三塁を踏んで捕球体制に入る。

 紫崎のグローブにボールが入る。


「―――セーフ!」


 塁審が宣言する。

 僅かにボールが遅れて佐伯が三塁に触れていた。


「ふぅ! 恐ろしい肩してるな」


 佐伯がそう言って、立ち上がる。


「フッ、陸雄。流石に3点差だとキツい。次頼むぞ」


 紫崎が陸雄に送球する。


「お、おう…………」


 陸雄が微妙な返事で捕球する。




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