第541話
ウグイス嬢のアナウンスが流れる。
「大森高校―――三番―――セカンド―――九衛君―――」
九衛が左打席に立つ。
中野監督のサインを見て、ヘルメットに指を当てる。
「がっはっはっ! 俺様には勝負するか―――勝てるという幻想をバットで打ち壊してやるぜ」
九衛が構える。
佐伯がサインを送るも切間が首を振る。
切間がセットポジションで投げ込む。
指先からボールが離れる。
「スラーブ打たれた後の―――」
九衛がタイミングを合わせて、スイングする。
外角高めにボールが飛んでいく。
「―――苦し紛れの」
打者手前でボールが左に小さく曲がる。
「―――スライダーは効かねぇ!」
バットの軸にボールが当たる。
カキンッと言う金属音と共にボールが高く飛ぶ。
「がっはっはっ! 兵庫四強の名将の思惑通りだぜ!」
バットを捨てて九衛が一塁に走る。
ボールは三遊間を抜ける。
レフトとセンターが捕りに後方に走る。
ハインが三塁へ走り―――紫崎が二塁へ向かう。
外野フェンス下の緑色の壁にぶつかり、ボールが転がる。
センターが素手で拾い、サードに送球する。
紫崎が二塁を踏み終える。
九衛が一塁を蹴り上げる。
サードにボールが渡る前に―――。
ハインが三塁を余裕を持って踏む。
そしてサードのグローブにボールが入る。
「―――セーフ!」
塁審が宣言する。
切間が舌打ちする。
サードが切間に送球し、切間が捕球する。
ウグイス嬢のアナウンスが流れる。
「大森高校―――四番―――レフト―――錦君―――」
錦が右打席に立つ。
佐伯が立ち上がる。
―――敬遠。
切間が脱力して、ボール球をゆっくりと投げていく。
錦は構えを解かなかった。
四球目のボール球が佐伯のミットに入る。
「―――ボールフォア!」
球審が宣言する。
錦がバットを捨てて、一塁にランニングする。
三塁のハインがランニングしてホームベースを踏む。
大森高校に7点目が入る。
紫崎が三塁に行き―――九衛が二塁に進む。
ウグイス嬢のアナウンスが流れる。
「大森高校―――五番―――ピッチャー、岸田君―――」
陸雄が右打席に立つ。
ベンチの中野監督のサインを見る。
(カーブを意識するな―――了解っす!)
陸雄がヘルメットに指を当てる。
切間がボールを佐伯から受け取り、構える。
「散々コケにした報いを受けさせてやる!」
陸雄が構える。
佐伯のサインに首を振り、投球モーションに入る。
指先からボールが離れる。
外角高めにボールが飛んでいく。
陸雄が見送る。
打者手前でボールが左にスライダーより深く曲がる。
佐伯のミットにボールが収まる。
「―――ストライク!」
球審が宣言する。
スコアボードに129キロの球速が表示される
(僅かに切間の球速が落ちているな。初球のスラーブを投げったってことは―――)
陸雄が再び構える。
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