第523話


 ウグイス嬢のアナウンスが流れる。


「大森高校―――サード―――大城君―――」


 大城が左打席に立つ。


「メンソーレ! この位置ならスタンドから女子のパンツが見えるかもサー!」


 そのままバットを構える。

 佐伯がサインを送らない。

 切間がハッと笑う。


(まぁ、確かに九番までは茶番だな。リードもいらねぇか―――)


 切間が投球モーションに入る。

 指先からボールが離れる。

 大城がよそ見をして見逃す。

 真ん中に真っ直ぐボールが通過する。

 佐伯がミットで捕球する。


「―――ストライク!」


 球審が宣言する。

 スコアボードに121キロの球速が表示される

 佐伯が返球する。


「ちょっと早めだったかな? まぁ、スチールもあるしな」


 切間がそう言って、捕球後に灰田を見る。


「っち! 中野。盗塁無理そうだぜ」


 灰田がリードを狭める。

 そのまま第二球を切間が投げ込む。

 大城がよそ見をしたまま見逃す。

 真ん中に真っ直ぐボールが飛ぶ。

 佐伯のミットにボールが収まる。


「―――ストライク!」


 球審が宣言する。

 スコアボードに126キロの球速が表示される

 佐伯が返球する。

 切間が捕球して、構える。

 そのままセットポジションで投げ込む。

 指先からボールが離れる。

 真ん中やや低めにボールが飛んでいく。

 大城が見逃す。

 佐伯のミットにボールが収まる。


「―――ストライク! バッターアウト!」


 球審が宣言する。

 スコアボードに129キロの球速が表示される

 大城がベンチに戻る。


「メンソーレ! スタンドの女子よく見たらあのミニスカで見えたパンツ白じゃなかったサー」


「あとはワシに任せろ。長野オタクパワーを見せてやろう」


 駒島が打席に移動する。

 佐伯からボールを受け取った切間が一息つく。


「次でツーアウト。3点差でこのまま有利に試合を進めるか―――」


 切間がそう言った後にウグイス嬢のアナウンスが流れる。


「大森高校―――九番―――ライト―――駒島君―――」


 駒島が右打席に立つ。

 佐伯がミットを構える。


「ワシの無限の可能性を見せてやろう!」


 そう言った駒島が構える。

 切間が投球モーションに入る。

 指先からボールが離れる。

 

「鯖っ!」


 駒島が気持ちの悪い顔芸をして、でたらめにスイングする。

 真ん中に真っ直ぐボールが飛んでいく。

 バットの軸上にボールが当たる。


「「―――嘘っ! 当てた?」」


 ベンチの陸雄達が驚いて声を出す。

 ボールは内野フライになる。

 ショートが前進して、ボールを余裕を持ってグローブを上げる。

 ゆっくりとボールが落ちて、グローブに入る。


「―――アウト!」


 審判が宣言する。


「ワシの必殺スイング。サンダーライトニングチャージングスイング2023が未完成とはな―――」


 駒島がそう言って、打席を離れる。

 ショートが切間に送球する。


「なんだか、訳が分からないけど―――ツーアウトだな」


 切間が捕球して、三塁側ベンチを見る。





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