第520話


 ウグイス嬢のアナウンスが流れる。


「香月高校―――六番―――」


 六打者が打席に立つ。

 ハインがサインを送る。

 陸雄が頷き、打者が構える。

 陸雄がセットポジションで投げ込む。

 打者がジッと観察する。

 指先からボールが離れる。

 内角低めにボールが飛んでいく。

 打者がスイングする。

 バットの上にボールが通過していく。

 ハインがミットで捕球する。


「―――ストライク!」


 球審が宣言する。

 スコアボードに132キロの球速が表示される。


(制球は良くなってるが、速度が落ちてるな。今日のリクオは本当に調子が悪い)


 ハインが返球する。

 打者が構え直す。

 陸雄が捕球して、構える。

 ハインがサインを送る。

 頷いて、陸雄がセットポジションで投げ込む。

 指先からボールが離れる。

 内角高めにボールが飛んでいく。

 打者がタイミングを合わせて、スイングする。

 打者手前でボールが左に小さく曲がる。


(同じ内角でもスライダーは打てませんってか? 舐めんな!)


 バットの軸上にボールが当たる。

 カキンッと言う金属音と共にボールが高く飛ぶ。


「そら見たことか!」


 打者が呟いて、バットを捨てて走る。

 佐伯も三塁に向かって走る。

 レフト方向にボールが飛んでいく。

 錦が横に走る。

 センターとレフトの中間にボールが落ちる。

 灰田が先にボールを拾う。

 佐伯が三塁にスライディングする。

 

「トモヤ! ひとつだ!」


 ハインが立ち上がって、声を出す。

 灰田が星川に送球する。

 打者が一塁を蹴り上げる―――。


「―――セーフ!」


 星川に捕球された後で塁審が宣言する。

 ランナーが一、三塁に残り―――ツーアウトの場面になる。

 星川が陸雄に送球する。


「これ以上点はやれないか」


 陸雄が捕球して、本音を言う。



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