弱小野球部の名誉挽回

第519話

　ハインが新しいボールを審判から貰う。

　三岳がベンチに戻っていく。

　ネクストバッターサークルの佐伯が立ち上がる。

「三岳さんはやっぱり凄いキャプテンだ―――この人のプレイでチームの士気が上がったのは間違いない。俺も続かなきゃ―――」

　佐伯が打席に移動する。

　ウグイス嬢のアナウンスが流れる。

「香月高校―――四番―――キャッチャー、佐伯君―――」

　佐伯が右打席に立つ。

　ハインが陸雄に送球する。

　ボールを捕球した陸雄が構える。

　佐伯がゆっくりと構える。

(この打者はオレと同じ捕手だ。駆け引きが必要な相手だが、本塁打は少ない。まずはリクオの本調子を取り戻すことからだ)

　ハインがサインを送る。

　陸雄が頷いて、セットポジションで投げ込む。

　指先からボールが離れる。

　内角の中心にボールが飛んでいく。

　佐伯がスイングする。

　打者手前でボールが左に小さく曲がる。

　佐伯のバットの軸にボールが当たる。

　カキンッと言う金属音と共にボールが高く飛ぶ。

(ミタケ対策の内角球の変化球の試みを打たれたか―――認めようお前達は強い)

　ハインが立ち上がる。

　ボールがライト方向に高く飛ぶ。

　センターの灰田が走る。

　ライトの後方にボールが落ちる。

　佐伯が一塁を蹴り上げる。

「長野のキモデブ！　てめぇ！　案山子か！？　どけ！」

　怒鳴った灰田が捕りに行く。

　佐伯が二塁に向かう。

　灰田がボールを拾い―――送球する。

　セカンドの九衛が捕球体制に入る。

　佐伯が二塁を余裕を持って、踏む。

　九衛のグローブにボールが入る。

「―――セーフ！」

　塁審が宣言する。

　佐伯がツーベースヒットを達成する。

　三塁側スタンドから歓声が上がる。

　九衛が陸雄に送球する。

　陸雄が捕球して、キャッチャーボックスを見る。

　ウグイス嬢のアナウンスが流れる。

「香月高校―――五番―――」

　五番打者が打席に立つ。

(ミタケ達の回る打順を考えて、ここでまだ調子を見よう)

　ハインがサインを送る。

　陸雄が頷いて、構える。

　打者が構えると投球モーションに入る。

　指先からボールが離れる。

　内角低めにボールが飛んでいく。

　打者がスイングする。

　打者手前でボールが右に落ちながら曲がる。

　バットの軸下にボールが当たる。

　カキンッと言う金属音と共にボールが低く飛ぶ。

「また初球打ちかよ！」

　陸雄が声を漏らす。

　佐伯が走らずに止まる。

　ショートの紫崎が走りながらグローブを下に向ける。

　そのままバウンドする前に捕球する。

「―――アウト！」

　審判が宣言する。

「紫崎！　ナイスプレイ！」

　陸雄がそう言って、紫崎から送球されたボールを受け取る。

　紫崎がフッと笑って、定位置に戻っていく。