第505話
灰田がベンチに戻ると中野監督が話しかける。
「よくやった朋也様―――ナイスバッティングだ―――良い仕事したじゃないか」
「中野―――俺はバカだからよくわかんねーけど―――なんだかんだで良いプレーをしたと思ってる」
「ああ、今までアウト多かったしな。四強相手に点が入ったヒットは良くやったぞ!」
中野監督が嬉しそうな表情をする。
「あんときの約束の為に一度だけ言うわ。―――中野監督、ありがとうございます!」
灰田がそう言って、帽子を脱いで一礼する。
大会前のいつかの決まり事を灰田がここで口に出した。
「灰田。今後も甲子園で優勝しようが、公式試合で負けた後でも一度だけ私を監督と呼んでいい。だからご褒美だ」
中野監督が灰田を抱きしめる。
「中野―――胸とか当たって、勃起するんだけど―――」
灰田が離れようとするも力が強いので中野監督が抱きしめたままになる。
「なんなら試合後に個室でキスしてやろうか? 舌も入れていいぞ、それだけで何時間でもしてやる。ただし―――それ以上は絶対にダメだ。それはお前が将来これから選ぶ他の女性にしておけ」
「わかったから離せよ。守備準備遅れるって!」
言われた通り―――中野監督が灰田を離す。
「私は学院長と私の事情で二年間しか指導できないが―――野球でお前が全てが決まるわけでもないと覚えておけ」
「―――キスは止めとくよ。将来俺が選んでそれで俺が何かに打ち込めるための良い女にだけするよ」
二人の間でちょっとエッチな雰囲気が流れていた。
古川がスコアブック書き終えて、横目で灰田を見る。
「私も女なんだけどなー。子ども扱いみたいでなんかムッと来たよ」
そう言って、古川がグラウンドを見る。
メンバー達が気まずい雰囲気になる。
「い、いいんですかね? 校内恋愛どころか―――生徒と先生ではないけど―――大人と高校生のそういうのここで堂々するのは、僕ドキドキしているんですけど」
星川がぼそりとそうメンバーに話す。
「なーんか俺様この光景を見て、グラビア本読めなくなったわ」
九衛がそう言って、グローブを着ける。
「何でだよ……」
陸雄が突っ込んで投手用グローブを着け終える。
中野監督が咳払いをして、真面目な雰囲気に戻る中―――。
三回の表が終わり―――。
4対1で大森高校の優勢で終わる。
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