第502話


 ウグイス嬢のアナウンスが流れる。


「大森高校―――六番―――ファースト―――星川君―――」


 星川が左打席に立つ。

 佐伯がサインを送る。

 切間が首を振る。

 その間に―――中野監督がサインを送る。

 星川がそれを見て、ヘルメットに指を当てる。

 切間が構えると星川もバットを構える。

 セットポジションで投げ込む。

 指先からボールが離れる。

 内角低めにボールが飛んでいく。

 星川が見送る。

 佐伯のミットにボールが収まる。


「―――ストライク!」


 球審が宣言する。

 スコアボードに133キロの球速が表示される。

 佐伯が返球する。

 切間が安心して、捕球する。


(ほら見ろ、佐伯―――変化球に頼らずともこの打線からは抑えられんだよ)


 切間が佐伯を目を細めて睨む。

 佐伯がそれでもサインを送る。

 切間が首を振り、構える。

 星川がジッと観察して、構える。

 切間が投球モーションに入る。

 指先からボールが離れる。

 外角高めにボールが飛んでいく。

 星川がタイミングを合わせて、スイングする。

 バットの軸にボールが当たる。


(中野監督のサイン通り―――二球目のストレートを捉えました!)


 カキンッと言う金属音と共にボールが高く飛ぶ。


「なんだと!? もう目が慣れたとでも言うのか!?」


 切間が声を上げる。

 星川がバットを捨てて、一塁に走る。

 九衛と錦も次の塁に走る。

 ボールは一、二塁間を抜けていく。

 ライトが前進してボールを捕りに行く。

 ライトのやや手前でボールが落ちて―――フェアになる。

 そのままグローブでボールを捕り、一塁に送球する。

 三塁を九衛が踏み上げる。

 錦も二塁を踏む。

 ファーストにボールが渡る前に―――。

 僅かに星川が早めに一塁を蹴る。


「―――セーフ!」


 塁審が宣言する。

 一塁側スタンドから歓声が上がる。

 切間が苛立たし気にボールを受け取る。

 柊が嬉しそうにグラウンドを見る。


(ワンアウトでランナーが満塁―――次のバッターは灰田君だから、スクイズでも追加点のチャンスだわ)




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