第479話


 レフトの三岳が関心する。


「ほう、切間の投球を本塁打で負かすとは―――コンデイションが最高だとしても良い選手だ」


 そう言って、マウンドを見る。

 ハインがその間に各塁を踏んでいく。

 ベンチの陸雄達が喜ぶ。


「いいぞハイン! しょっぱなから景気良いの打ちやがって!」


 灰田が楽しそうに声を出す。

 星川も喜びながら話す。


「このまま行けば前半でアドバンテージがデカくなりますよ!」


 陸雄も嬉しそうに答える。


「ああ! この点を大事にしようぜ! 紫崎続けよー!」


 ネクストバッターサークルの紫崎がフッと笑う。

 

「フッ、切間はそんな甘い投手じゃないさ」


 その間にハインがホームベースを踏む。

 この瞬間―――大森高校に1点目が入る。

 そのままネクストバッターサークルの紫崎にハイタッチする。


「フッ、絶好調じゃないか」


「キリマのリードを無視した慢心の隙を突いただけだ。ナカノ監督も同じことを考えて、サインを出した―――次から厳しくなる」


 そう言ってハインがベンチに戻っていく。

 紫崎が打席に移動する。

 佐伯が新しいボールを受け取り、切間に送球する。

 切間が悔し気な表情で捕球する。

 ウグイス嬢のアナウンスが流れる。


「大森高校―――二番―――ショート―――紫崎君―――」


 紫崎が右打席に立つ。

 中野監督がサインを送る。

 紫崎がヘルメットに指を当てる。

 佐伯がサインを送るも切間は首を振る。


(どうして俺のリードを信じてくれないんだ。あの本塁打が偶然だとでも思ってるんっすか?)


 佐伯が少しだけ唇を噛んで、ミットを構える。

 紫崎が構える。

 切間がセットポジションで投球する。

 指先からボールが離れる。


(確かに―――陸雄よりも早いな)


 紫崎が見送る。

 外角低めにボールが真っ直ぐ飛んでいく。

 佐伯のミットにボールが入る。


「―――ストライク!」


 球審が宣言する。

 スコアボードに133キロの球速が表示されえる。

 佐伯が返球する。


(次から切間は変化球を投げてくる。それを俺が打ち取るかどうかで切間を後半から崩せる、か―――中野監督のサインに従って、打たないとな)


 紫崎が構え直す。




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