第426話
センターがボールを拾い上げて、セカンドに送球する。
ハインが二塁を踏む。
セカンドに遅れて、ボールが入る。
「―――セーフ!」
塁審が宣言する。
そのままセカンドが久遠寺にボールを送球する。
紫崎がやや遅れて、一塁を蹴り上げる。
ファーストの久遠寺が塁を踏んで捕球する。
「―――セーフ!」
塁審が宣言する。
ツーアウト、ランナーが一、二塁に残る。
試合は同点に戻り―――スタンドが騒ぐ。
スタンドにいる柊が座りこんでスポーツドリンクを飲む。
(本当にすごい試合―――1点の取り返し合いと1点差の優位を取り合う展開になってる。陸雄君達は上級生にここまでやれるんだ)
飲み終えて―――そう思い、打席を見る。
ウグイス嬢のアナウンスが流れる。
「大森高校―――三番―――セカンド―――九衛君―――」
九衛が右打席に立つ。
「さて―――運が良ければ初球から来るな。頼むぞ、九衛―――」
中野監督がそう言って、サインを送る。
九衛がそれを見て、ヘルメットに指を当てる。
古川がスコアブックを書き、その言葉に考え込む。
「本当に投げてくるんですか?」
古川がそう質問すると中野監督はあっさりと答える。
「ああ、速水が優秀であればあるほど―――投げてくる。ツーアウトのこの状況ならなおさらな―――」
その答えに古川が考え込み、やがてマウンドを見る。
九衛が構える。
(さ~て、俺様がここで打てば満塁―――錦先輩に敬遠しても1点差で優位に逆転する)
山田がサインを送る。
速水が首を振る。
(本当にそれでいくのかじゃんか?)
山田がミットを構える。
速水が自信をもって、投球モーションに入る。
九衛がジッと観察する。
指先からボールが離れる。
内角やや低めにボールが飛んでいく。
「来た! 今こそ―――!」
九衛がバットをフルスイングする。
打者手前でボールが左に急激に落ちる。
その位置をバットの軸で当てる。
「初球スクリューを―――」
力を入れて、バットでボールを打ち上げる。
「―――予測コースに打てたぜ!」
カキンッという金属音と共にボールが右中間をボールが抜ける。
セカンドとショートが高めのボールを捕り損ねる。
一塁の紫崎と二塁のハインがそれぞれ次の塁に走っていく―――。
九衛がバットを捨てて、一塁に走る。
ライトが後方にバウンドしたボールを捕りに行く。
ハインが三塁を踏み。
紫崎が続いて二塁を踏む。
速水が苛立ちながら、ライトを睨む。
ライトがボールを拾い、一塁に送球する。
既に塁を踏み終えた九衛が立ちつくす。
ファーストの久遠寺が捕球する。
「―――セーフ!」
塁審が宣言する。
一塁側スタンドから歓声が上がる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます