第415話


 山田が返球する。

 速水が捕球して、すぐに構える。

 山田がサインを出す―――。

 速水が頷いて、投球モーションに入る。


(相手の投球に迷いがない―――! でも僕がそれに飲まれちゃダメです!)


 星川が唾を飲む。

 指先からボールが離れる。

 リリース直後にボールが大きく落ちる。


「フッ、パームボールをここで投げるか―――変化球中心のリードままこの流れを抑えると見た」


 三塁の紫崎が呟く。

 ボールは揺れながら真ん中やや低めに飛んでいく。


「真伊已君の成果を―――ここで見せます!」


 星川がスイングする。

 ボールがバットの軸下に当たる。

 カキンッという金属音と共にボールがファースト方向に飛ぶ。


「あっ! 不味いです!」


 打ち終えた星川が声を漏らす。

 ファーストの久遠寺が手前でゴロになったボールを捕球する。


「はいっ! 同点維持です!」


 久遠寺が笑顔で捕球して、嬉し気に声を出す。


「―――アウト! チェンジ!」


 審判が宣言する。


「つ、強い……対策練習していたとはいえサウスポーは難しいですね。今回は僕もゴロキングですね」


 星川がベンチに戻っていく。

 二塁の九衛もベンチ戻る。


「まだ星川君には厳しい課題だったか。やる気は常にメジャーリーガー並みだから、調子を崩させるわけにはいかないか―――俺様的に良しとしてやるか」


 それを聞いていた三塁からベンチに戻る紫崎もフッと笑う。


「フッ、抑えて―――打たれて、取り返してと中々良い試合だな。そう思わないか?」


 紫崎の言葉に九衛がハッと笑う。


「がっはっはっ! 紫崎―――案外余裕そうじゃねぇか。まぁ、そういう考えもあるな」


 一塁の錦もベンチに戻っていく。

 久遠寺が速水に送球する。


「キャプテン。同点で守りきりましたね。調子出てきてますよ!」


 久遠寺がそう言った後に、速水がマウンドにボールを置く。


「……一年ながらに口うるさいやつさ……あやうくお前に『R』を送るところだったさ……」


 速水も久遠寺達と共にベンチに戻っていく。

 試合は7対7の状況で―――四回の裏が終わる―――。




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