第401話
中野監督が腰に手を当てる。
「まずは1点取って、近づいたか―――松渡は良い仕事をしたな」
古川が中野監督に話す。
「星川君が九衛君を返せると良いですね」
「返すさ。古川の投球練習で相手の変化球には慣れている」
そう中野監督が答えて、二人はグラウンドを見る。
松渡がベンチに戻る。
陸雄がバットを灰田に渡す。
「はじめん。ナイススクイズだったぜ! バントの才能あるんだな」
陸雄が松渡にそう言って、嬉しそうにはしゃぐ。
「まだゲームを振り出しに戻すには3点差もあるんだよ~。褒めるのは嬉しいけど、ここで点を取っていかないとね~」
松渡がそう言って、バットをボックスに入れる。
そしてウグイス嬢のアナウンスが流れる。
「大森高校―――六番―――ファースト―――星川君―――」
星川が左打席に立つ。
中野監督がサインを送る。
「さぁ! ここで僕が九衛君を返しますよー!」
星川がヘルメットに指を当て―――構える。
(ストレートは温存するじゃんか。変化球で抑えるじゃんか)
山田がサインを送る。
速水が頷く。
(3点差もあるさ……得意なpitching(ピッチング)で決めるさ……)
速水が投球モーションに入る。
星川がジッと観察する、
指先からボールが離れる。
外角高めにボールが飛んでいく。
星川がスイングする。
打者手前でボールが左に浮いて、落ちる。
ボールがバットの下を通過する。
―――シンカーだった。
山田のミットにボールが入る。
「―――ストライク!」
球審が宣言する。
スコアボードに113キロの球速が表示される。
「やりますね―――けど、僕だってこのまま抑えられるわけにはいきませんよ」
星川が構え直す。
山田が返球する。
速水が受け取り、構える。
山田がサインを送る。
(―――次も同じでいくじゃんか)
そのサインに速水が首を振る。
(……冗談じゃねぇ……別のパターンでいくさ)
山田がサインを止めて、ミットを構える。
速水が投球モーションに入る。
星川が一息つく。
(おそらく緩急をつけてくる―――僕になら打てる)
指先からボールが離れる。
外角の中心ににボールが飛んでいく。
星川がタイミングを合わせて、スイングする。
打者手前でボールが左に急激に落ちる。
(そのスクリューは―――)
バットの芯にボールが当たる。
(―――詠めていましたよ!)
カキンッという金属音と共にボールが高く飛ぶ。
「俺のスクリューが打たれた! ……どうなってる……?」
速水がボールの方向を見上げる。
三塁の九衛がホームベースに走る。
二塁の錦が三塁に走る。
バットを捨てた星川が一塁に走る。
ボールはライト上空を飛んで壁近くに落ちる。
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