弱小野球部の名誉挽回

第397話

　ボールを捕った松渡がマウンドに戻る。

　メンバーがベンチに戻っていき―――。

　残塁していた久遠寺と山田がベンチに戻る。

「もしかしたらこの追加点の１点差が試合に響くかもしれないじゃんか―――五番が戦犯になるじゃんか」

「大丈夫ですよ。山田先輩は心配しすぎですよ。僕たちは４点差も勝ってるんですから守り切れば勝てます」

　山田と久遠寺の二人がそう言いながら、三塁側ベンチに戻る。

　三回表は３対７のまま終わる。

※

　三回の裏―――。

　ウグイス嬢のアナウンスが流れる。

「三回の裏―――大森高校の攻撃です。一番―――キャッチャー、ハイン君―――」

　ハインが右打席に立つ。

　中野監督がサインを送る。

(点差に余裕のある相手は守りたいという気持ちが強くなる。必ずあの球を投げてくるはずだ―――)

　そう思い、中野監督がサイン止める。

　ハインがヘルメットに指を当てる。

　ロージンバックで滑り止めをした速水が構える。

　ハインも構えて、投手をジッと見る。

　山田がサインを送る。

(……冗談じゃねぇ……俺達のadvantage(アドバンテージ)は変わらない……俺の得意球を投げさせるさ……)

　速水が首を振る。

(―――わかったじゃんか)

　山田がサインを止めて、ミットを構える。

　速水が投球モーションに入る。

　ハインがジッと観察する。

(ナカノ監督がサインした通り―――必ずアレが来る)

　指先からボールが離れる。

　ハインがタイミングを合わせて、スイングする。

　打者手前でボールが左に急激に落ちる。

　―――スクリューだった。

　ハインのバットの軸にボールが当たる。

(―――読みどうり！)

　カキンッという金属音と共にボールが左中間に飛んでいく。

　速水が声を漏らす。

「……なんだと……どうなっている？」

　ハインがバットを捨てて、一塁に走る。

　緑の壁にボールがぶつかり、そのまま落下する。

　レフトが落ちたボールを拾う。

　そのまま一塁に送球する。

　ハインが一塁を蹴り上げる。

　二塁に進まずに止まる。

　ファーストのミットにボールが収まる。

「―――セーフ！」

　塁審が宣言する。