第358話
「では、四回戦のメンバーを発表する」
中野監督が紙に書かれたメンバー表を読み上げる。
「打順だが、まずは一番打者。捕手のハイン。今度も頼むぞ」
「―――はい」
ハインが冷静な声で対応する。
続けて読み上げていく。
「二番、ショート。紫崎―――怪我だけはするなよ。ショートの替えが無いからな」
「フッ、解っています」
「三番、センター九衛。朋也様の投手交代後にはセカンドに戻ってもらう。お前なら出来る」
「うっす!」
九衛の返事の後に灰田がふと思う。
(やっぱ次の試合も俺を先発で投げさせるのか。今度こそと思う反面、相手も強くなっていく―――きちいなぁ)
「四番、レフト―――錦。ランナーを返してやれ」
「はい―――わかりました」
錦がそう言って、頷く。
「五番、セカンドに松渡。朋也様の交代後に中継ぎで投げさせる。その後にリリーフの岸田と交代だ」
「はい~。わかりました~」
その言葉に陸雄が整列するメンバーの前から一歩踏み込む。
「えっ? 俺……ベンチっすか?」
陸雄がそう言うと中野監督が答える。
「私なりに考えてのポジションと投手の順番だ。今回はリリーフとして投げて、打席でしっかり打ってこい。それだけでいい」
陸雄が納得しきれていないのか、不満げに一歩下がる。
(くぅ~! 久遠寺とこの前あんな熱い約束と決意をしたのに終盤でのみ打者とリリーフしかできないなんてー!)
陸雄が「ぐぬぬっ」っと声を出して、悔しそうな表情をする。
「岸田君―――大丈夫だよ。今回は前半は守りの野球で後半から岸田君を中心に攻めていく野球だからね」
古川マネージャーの言葉に陸雄が少し黙って、答える。
「……わかりました。投球と打率だけ今回は考えておきます」
その陸雄の言葉で、中野監督が発表を続ける。
「六番、ファースト―――星川。塁が埋まっていたらどんどん打ってこい」
「はい! 任せてください! 相手が強ければ強いほど僕も燃えますよ!」
星川が元気よく返事をする。
「七番、先発投手でその後はセンターになる、私の愛しの朋也様!」
「…………」
「返事がないぞ? ただのしかばねか?」
「いや、やっぱ先発投手ではじめんの後は外野手なんだなって、思っただけっすよ。返事はしてます。しかばねじゃねーから―――あとさりげなく俺に愛しのって、つけるなよ」
「長くても3イニングまで投げさせる。安心しろ。松渡は内野手もシニア時代にしているし、小学校野球では外野手もしていた。援護は問題ない」
愛しのに関して突っ込まずに中野監督は真剣に話をする。
「わかったよ。でも、中野。ナックルボールはまだお預けだろ? カーブとストレートだけって、そんな条件で大丈夫かね?」
「打たせて取らせる投手もまた投手―――抑えるだけが仕事じゃない。気迫とやる気の問題だ。やる気全国一位は後の投手全国一位になりうる―――頼むぞ」
「わーたよ。先発としてしっかりやるよ。三倍頑張んなきゃいけねーしな」
「よし、ナイスな気合いだ。あー、あとは八番はサードの大城。九番は駒島のライトだ」
中野監督が発表を終えると―――制服姿の駒島たちは帰っていく。
大城たちの発表だけやる気なさげな脱力した声だった。
「メンソーレ! 今日は新マネージャー加入で気合を入れて妄想するサー。エロゲタイムにも気合い入るサー」
「ワシを振ったこと後悔するぞ。一年マネージャー。ワシは甲子園に行ける逸材だからな。ワシのロイヤルな股間を拝めるのももう一年もないのだからな。股間の先を体験できるのも今のうちだぞ?」
「えーと、あははっ…………そーですかー。私そういうのダメなんで……」
柊がやや天然っぽく受け答えて、二人から視線を話す。
「っち! これだからリアル女はダメなんだ……ビッチが! ワシは帰る!」
「メンソーレ! 二次元清純派美少女と三次元実写系ビッチの抜き系を分けつつ適度に抜いていくサー! アデュー!」
駒島と大城はそのまま帰っていった。
柊が笑顔を崩さず我慢していた。
「柊、気にするな。ああいうどうしようもない浅い人生送ってるバカだから―――」
中野監督が帰っていく二人に聞こえないようにそう話す。
「あっ、はい、大丈夫ですよ―――監督」
「よし! あと坂崎。ブルペンで岸田の肩を作る役目もある。伝令もあるんだ。それも大事な仕事だ」
中野監督がそう言うと坂崎が頷く。
「わ、わかりました―――」
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