第320話

 メンバーが守備位置に着いて、マウンドで陸雄がボールを握る。


(このイニングで最後だ。全力で行くか―――。若干清香のほぼ物体エックスで、ちょっとだけ腹痛いけど―――なんとか耐えれるな)


 ウグイス嬢のアナウンスが流れる。


「七回の表―――淳爛高等学校の攻撃です。―――七番―――ピッチャー、真伊已君―――」


 真伊已が左打席に立つ。


(んでもって、打席ではああだったが、投手戦で真伊已を抑えなきゃな!)


 真伊已が監督のサインを見る。

 陸雄が構える。

 真伊已が頷いて、構える。


「―――プレイ!」


 審判が宣言する。

 ハインがサインを送る。

 陸雄が頷き、セットポジションで投げ込む。

 指先からボールが離れる。

 外角高めにボールが飛んでいく。

 真伊已がスイングする。

 打者手前でバットがボールよりやや下に空振りする。

 ハインのミットに収まる。


「―――ストライク!」


 球審が宣言する。

 スコアボードに135キロの球速が表示される。


(よっしゃ! 早めのストレートに手を出した。ハイン―――良いリードだぜ)


 ハインが返球する。

 陸雄が捕球する。


(なるほど―――確かに俺はこの球速のストレートが投げられない。―――ですが…………)


 真伊已が静かにバットを構える。

 ハインがサインを送る。

 陸雄が頷く。

 そして投球モーションに入る。

 指先からボールが離れる。


(そちらの手の内を読めるので―――次は……)


 真ん中低めにボールが飛んでいく。

 真伊已がタイミングを合わせて、スイングする。

 打者手前でボールが右に曲がりながら落ちる。

 真伊已がバットの軸にボールを当てる。


(―――俺と同じ速度の変化球のカーブは打てますよ)


 カキンッという金属音と共にボールが低く飛ぶ。

 真伊已がバットを捨てて、一塁に走る。

 陸雄の右側にボールが飛んでいく。

 陸雄がグローブで打球を捕ろうとする。

 グローブにいったんボールが入るも―――。


(くっそ! グローブで握り損ねた)


 ―――落球する。

 ピッチャーのエラーが記録される。


(陸雄さん―――どうしました? ―――投手だから野手とは守りが違いますか?)


 真伊已がスライディングする。

 陸雄がボールを拾って、星川に送球する。

 真伊已が塁に足を着ける。

 その後に星川のグローブにボールが入る。


「―――セーフ!」


 塁審が宣言する。

 星川が送球する。

 真伊已が一塁から立ち上がる。

 陸雄がボールを受け取る。


(マイノミに自身が持つ変化球でリクオに勝負するのは厳しいか―――しかし緩急をつけたストレートなら長打にもなっていた)


 ハインが陸雄を見て―――考え込む。

 陸雄が気持ちを切り替える。


(この登板で、次の守備ははじめんと交代―――。真伊已には打たれてばかりだったな―――でも、次から抑えれば大丈夫だ)




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