第219話
(錦先輩が古川さんのことを知っているのは間違いない。中野監督も今日のスタメン発表で、大城を出す予定だったことは明らかだ)
「リクオ。余計な事は考えるな。スタメン発表の順番だけ考えておけ」
察したハインが陸雄の肩に手を乗せて、声をかける。
「わかったよ。入院であんま調子出てねぇけど先発してぇしな」
中野監督がスタメン発表を続ける。
「先発投手は朋也様。センターは九衞、岸田はセカンドをするように」
「―――えっ? 俺先発投手じゃないんですか?」
陸雄の言葉に中野監督が答える。
「途中で投手交代させ、ポジションを変えていく。練習でサブポジをやらせた理由はそれだ。朋也様もいい加減投手として登板する時期だ」
「中野。練習をしてきたとはいえ―――実戦で俺がピッチャーで最後まで投げれたの小学六年までだぜ?」
「朋也様、歩かせても良いから投げてこい」
「つってもよぉ…………」
松渡が灰田に申し訳なさそうに話す。
「灰田~。陸雄がまだ調子悪いし、僕はこの前の試合で手の内を見せたくないから、あまり投げられないからさ~」
「ベンチの松渡は控えでリリーフとして使う。朋也様が投げ終わったらポジション交代して、岸田に中継ぎをしてもらう。発表を続けるぞ―――」
中野監督が他のメンバーのポジションを発表していく。
ファーストは星川。
紫崎はショート。
やはりハインは正捕手。
駒島はしょうがないのでライト。
錦は前と同じレフト。
今回センターを任された九衞は―――灰田の交代後に岸田に代わってセカンド戻り。
灰田は投手の後に九衞と交代でセンターに戻る
陸雄はセカンドの後に灰田と交代して、中継ぎ投手としてマウンドに立ち―――抑えであるクローザーの松渡と交代してベンチ行き。
守備の内容は以前までの試合とはまったく異質の采配だった。
「ようやく他校の野球校らしくなってきましたね」
古川がいつの間にかベンチから戻って来たのか、中野監督のメンバー表に意見する。
「古川、過去のこととは言え、もう良いのか?」
錦が古川に深く頷く。
それを見た古川が深呼吸を一度して、答える。
「―――はい。大丈夫です。今後は気を付けます」
「わかった。古川、この事は後で話そう。次に打順だが―――」
中野監督がメンバーに打順を告げる。
打順は守備交代しても変えない。
野球のルール上、仕方のない事実だった。
一番打者、ハイン。
二番、紫崎。
三番に九衞。
不動の四番は錦。
五番は陸雄で交代後は打力の無い松渡。
ここに穴があるが、交代後は守りに任せた名将ゆえの采配だった。
しかしこの上位打線なら―――今までの試合で点を多くとれる確信していた。
六番は星川。
七番は灰田。
八番に全イニングで初打席に立つことになる坂崎。
九番はいつもの駒島だった。
大城はケガの不安でベンチ。
伝令は今やってきた私服姿のトンボを持って整備する二年達の誰かだった。
「以上でスタメン発表は終わりにする。着替えに戻って、終わったら帰って良いぞ」
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