第212話
古川が席に座ったままハインに話す。
「それを断るなんてとんでもない。今一度考えるのだ我が娘よ!」
ハインが兵士に押さえつけられながら、返答する。
「離せ! 結婚など断る! そもそもオレはアヤネマネージャーの娘ではないっ!」
「それを断るなんてとんでもない。今一度考えるのだ我が娘よ!」
古川が先ほどと同じ声のトーンで話す。
「だから断る! トモヤ、タカシ! その手を離せ!」
ハインが二人の兵士の名前を言って、抑える手を離そうとする。
「さあ、姫。暴れずに―――殿中ですぞ」
中野監督がそう言って、階段を降りる。
「殿中ではない西洋の城だろ! どうあがいてもオレは断るからな!」
ハインが突っ込むも中野監督は無表情で黙っている。
「それを断るなんてとんでもない。今一度考えるのだ我が娘よ!」
古川が同じ声のトーンで再び話す。
まるで昔の選択肢が実質一つしかないRPGゲームの光景だった。
張元がハインに抱き着く。
「濡れるつぼみは貴方の寂しがる涙。咲かせて見せましょう初夜の姫の花を―――咲かせるどころか散らします!」
張元がハインの唇に唇を重ねる。
生々しい感触だった。
ハインが両手で張元の顔を引き離す。
「ヤメロー!?」
※
「―――はっ!」
ハインがガバッと起き上がる。
いつもの部屋でパジャマ姿でベッドに寝ていたようだった。
「夢か―――なんて最悪な悪夢だ」
汗ダラダラのハイン起き上がって、頭を抱える。
気持ちを切り替えるために机に置かれている教材を見る。
「今日は期末テストの結果発表と夏休み前のガイダンスか」
確認して、起き上がり―――着替える。
唇を指で触る。
「大丈夫だよな? されてないな、うん。されていない」
謎の安心感でハインは制服に着替え終える。
そして家族といつもの朝食を食べて、登校した。
※
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