第211話
謁見の間では三段の階段の上に赤を基調とした長い椅子に古川が座っていた。
椅子から入り口まで長い赤の布が敷かれている。
古川の格好は純金の王冠を被り、貴族の服装をしていた。
両肩に赤マントを羽織っており、いかにもな王族の格好だった。
「おおっ! 我が娘ハインよ。ようやく来たか。さぁ勇者たちを呼びたまえ」
古川が左手に宝玉がはめ込まれた金色のステッキを入り口のドアに向ける。
傍には大臣らしき側近がいたが、その中に中野監督もいた。
中野監督も大臣特有の緑の帽子を被っており、服は西洋の貴族が着ている服装だった。
中野監督が声を上げる。
「古川国王の妻を殺した魔王・九衞錬司を討伐せし、勇者御一行を丁重に招待せよ!」
椅子に座らされたハインが突っ込む気力も失せる。
「なんなんだ一体? レンジは魔王なのか? 死んでいるじゃないか……」
黒のローブを来た魔法使いの格好をした松渡が最初に入って来る。
「古川国王~。魔導士、松渡~。ただいま戻りました~」
松渡が帽子を脱いで一礼する。
もう一人やって来る。
勇者らしい恰好をした張元が入ってくる。
「古川国王。勇者、張元。愛するハイン姫の為に魔王を倒して、ここに戻ってまいりました」
張元が剣を掲げて、座り込む。
「うむ。魔王九衞討伐の任―――大儀であった」
古川が椅子に座りながら微笑む。
張元が悲しげな顔で報告する。
「魔王九衞との戦いで僧侶、陸雄を失いました。そして、傭兵である星川殿もサキュパスのチャームによって誘導され―――帰らずの新緑の森の中で見失い。魔王討伐後も捜索隊を出したのですが、行方が見つからないままでした」
ハインが唖然とする。
「ツバキとリクオは何をやっているんだ? リクオが死んでいるとは……これはもしや夢では……?」
ハインが頭を抱える。
「勇者、張元よ。では、褒美としてこの国の王子としてハインと婚儀を済ませようではないか」
古川がそう言って、席から立ち上がる。
「中野大臣。今日は国民総出で宴をするぞ!」
「ははっ! 仰せのままに」
中野監督がそう言って、兵たちに命令する。
「いや、二人ともちょっと待て―――」
ハインが立ち上がった時に張元が立ち上がる。
「今の話の流れの感じだとハイン姫は俺っちに濡れて抱かれるよね?」
「話の流れでそんなことにされてたまるか!」
「だが、この世界では通ってしまうのだ! さぁ、ハイン姫! 夜に一つになろう! 王位を継承した俺っちと子沢山の王国を!」
張元の発言にハインは悪寒が走る。
いつの間にか中野監督の隣にいたドレス姿のハインの義妹が喜ぶ。
「素敵な日ですわ! お兄様がお姉様に変わる日が来るなんて!」
「クレイジー過ぎる。―――断る!」
ハインがそのまま階段を降りて行く。
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