第210話
「ハイン様―――ハイン様―――起きてください」
暗闇の中で聞いたことのある声が聞こえる。
ハインが起き上がると錦がいた。
「ニシキ先輩? なんでオレの部屋に?」
「何を言っているのです。今日は勇者御一行が魔王討伐の旅からの帰って来た日ですよ。ハイン様も謁見の間に来ように国王である古川絢音様から呼ばれています」
燕尾服の錦は執事らしい仕草で答える。
「アヤネ国王? 謁見の間? 何を言っているんですか?」
ハインは辺りを見渡す。
壁は白を基調とした大理石で出来ている。
床には高級そうな王室特有の赤を基調とした布地が敷かれていた。
別荘にあるような暖炉に高級そうな椅子と机が近くに置かれている。
その中でハインは屋根付きの高級ベッドに寝ていた。
シーツは羊の毛を入れているのかフワフワしている。
「一体どこの中世の王国だ? それに勇者御一行って―――」
「何を言っておられるのです。さぁ、起き上がって、早くドレスに着替えてください」
錦がそう言うとメイドたちがドレスを持って、部屋からやって来る。
ハインがベッドから起き上がる。
「いや、ちょっと待ってくれ。オレには何がなんだか―――それに女性のドレスじゃないか」
ハインが質問するもメイドたちは手際よくハインをドレス姿に着替えさせる。
錦はドアに背を向けて、着替えを見ないようにする。
コルセットをきつく縛られて、そのままドレスを着せられる。
窓の景色を見ていると城下町が見える。
国民が大騒ぎして、中央の道にいる兵士たちのパレードを見ている。
「どういうことだ? 坂崎が電車で雑談していた異世界転移と言う奴か? そんなものはライトノベルだけだと思ったが―――」
そうこう言っているうちにピンクのドレスを身にまとったハインがそのまま化粧をされる。
木製の大きめのドアのノック音が聞こえる。
「ハイン姫。育ての親である古川絢音国王が勇者一行に早く会わせたい―――と強く仰っております。急ぎ謁見の間へ―――」
ドアから聞いたことのある声が聞こえる。
ハインがドレス姿で化粧を済まされる。
そして赤いハイヒールを履かせられた後に、ドア越しの声に話し返す。
「その声はトモヤだな? これはどういう状況だ? なんでオレが女装しなければならないのだ? 偵察は終わっただろう? それにここは二ホンでもアメリカでも無さそうだが……一体どこなんだ?」
ハインが質問責めするが、ドアを開けた灰田が敬礼する。
灰田の姿は西洋の甲冑を身にまとっていた。
同じ隣にいる灰田と同じ武器のハルベルトを持った紫崎が敬礼する。
「ハイン姫。本日もお美しい姿でございます。ささっ、護衛の任がありますので急ぎましょう」
紫崎がそう言って、手を引っ張る。
歩かされるハインを部屋の外へ連れて行く。
「何がどうなっている? 理解が追い付かない―――タカシ……そもそもそんな性格だったか?」
ハインが疑問を持ったまま部屋を出て行く。
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