第191話
「おっ! チョコパイか! いいねぇー。じゃあ、ご馳走されちゃおうかな?」
ウキウキする陸雄を見て、清香がニッコリと笑顔を見せる。
「じゃあ、お皿に置いて持ってくるから、ジュース飲んで待っててね♪」
嬉しそうに部屋を出た清香が、階段を降りて行く。
陸雄が清香の部屋を眺める。
(しっかし、中学のころよりも随分乙女チックなファンシーな部屋になったなぁ)
ぬいぐるみやピンクのカーテン。白いタンスなどを見て―――陸雄はリンゴジュースを飲む
無骨に置かれているデスクトップパソコンを除けば、色調はピンクや赤と白に統一されているようにも見えた。
ベッドには中学時代の夏祭りに―――陸雄が射的で当てたぬいぐるみが置いてあった。
陸雄はカーテンで閉められている窓を見る。
(そういやあの窓は俺の部屋の窓と同じ位置にあったっけ? ―――いつからだろうな? 清香と夜に窓をお互い開けながら顔を見て、話さなくなったの……)
陸雄がボケっとしながら窓を眺める。
階段を上がる音が聞こえて、ドアの方向に歩く。
そして陸雄がドアを開ける。
「ごめんねー」
両手にケーキとシュークリームにチョコパイの乗った皿を持った清香がドアの前で立つ。
「良いって、ほれ。皿代わりに持っとくから座っとけよ」
「はいっ♪ 重いよー」
ひょいっと陸雄がケーキ類の乗った皿を持つ。
「わぁ! 力持ちだね!」
清香が驚いて、自分の両手を合わせる。
「―――野球で毎日―――」
陸雄がテーブルの上に皿を置く。
「―――鍛えてるからな」
そう言って、座る。
清香が僅かに顏を赤らめる。
疑問に思った陸雄が顔を上げる。
「どうしたの?」
「えっ? あ、たくましくなったなぁって―――高校入ってからカッコよくなったと思う」
「そりゃどーも。学校でそう言うこと言うなよー。松渡達にネタにされる。ケーキ食べようぜ」
「う、うん―――」
清香が隣に座って、ケーキとシュークリームを食べる。
「やっぱり美味しいし、甘い~。えへへ~♪」
「そうかそうか。おっ、チョコパイ冷えてるから旨いな」
二人はそれぞれケーキとチョコパイを食べる。
「あっ、陸雄。付いちゃってるよ?」
「ん~? 何が?」
清香が陸雄の頬に指を当てる。
「えっ!」
突然の感触にビクッとする陸雄。
そのまま清香が陸雄の頬に付いていたチョコを指でペロリと舐める。
「―――チョコレート」
清香がそう言って、小悪魔的な笑みを浮かべる。
陸雄がドキッとする。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます