第111話
ハインが無表情でサインを出す。
西晋高校の一番打者が構える。
(ワンボール。ツーストライク。次はストライクで来るだろうな―――ここが勝負だ)
頷いた松渡がボールの握りを変える。
そのまま投球モーションに入る。
足をあげて、投げる腕が肩が隠れた次の瞬間―――モーションが見えにくく、投球の投げ終える瞬間になる。
指先からボールが離れる。
真ん中にボールが飛ぶ。
タイミングを見つけた打者がスイングを合わせる。
(タイミングドンピシャ! もらった―――!)
そのままバットから真ん中を当てようとする。
―――だが、バットに向かったボールが変化した。
投げた位置からボール二個分まっすぐ下に落ちる。
(なにっ! ここで変化球っ!?)
ハインがパンッと音を立てて、捕球する。
フルスイングして空振りした一番打者がヘルメットを落とす。
変化球のフォークボールだった。
スコアボードに129キロの球速が表示される。
(ふぃ~。まずは一人あっさりと抑えたな~)
「―――ストライク! バッターアウト!」
球審が宣言する。
「松渡! ナイスピッチ! 肩の力抜けよ!」
セカンドの九衞の声が後ろから聞こえる。
ハインが返球する。
少しリラックスした松渡がボールをキャッチする。
一番打者が深呼吸して、ヘルメットを拾って打席を離れる。
入れ替わりのネクストバッターに話す。
「気を付けろ。フォームが振りかぶって投げるまで―――まるでカットされたようなテンポで投げてくる」
「けど、一年だよな? ただのサウスポーじゃない―――何者なんだ?」
「知らねぇ。監督の話じゃ、一回戦は出てないし―――埼玉から来た外国人選手としか……」
「俺が打って、ジェイクまで繋げる」
「頼むぜ」
二番打者が打席に移動する。
「西晋高校―――二番打者、三年生―――」
ウグイス嬢のアナウンスが流れる。
「―――プレイ!」
審判が宣言する。
三年生の二番打者が右打席で構える。
ハインがサインを出す。
頷いた松渡が投球モーションに入る。
足をあげて、投げる腕が相変わらず肩に隠れて見にくいフォームのまま投げる。
(くそっ―――マジで見えにくい―――)
打者のタイミングが取りづらい中で、そのまま指先からボールが離れる。
内角低めにボールが飛ぶ。
(ここ―――か!)
打者がバットを振る。
タイミングが合わずに遅れて、空振る。
内角低めのボールをハインが捕球する。
(さっきのストレートか? 球おっそ!)
「―――ストライク!」
球審が宣言する。
打者がバットを構え直す。
スコアボードに119キロの球速が表示される。
ハインが返球する。
松渡がキャッチして、一息つく。
(ハジメ。次は緩急付けるぞ)
ハインがサインを出す。
松渡がコクリと頷く。
二番打者が構える。
松渡が投球モーションに入る。
(ん? 気のせいか、さっきよりフォームが早い?)
打者が投げる前に気付くが、次の瞬間には投手がボールを投げる。
外角高めにボールが飛ぶ。
(今度は早い!)
目が慣れずに見送る。
ハインが捕球する。
「―――ボール!」
球審が宣言する。
スコアボードに130キロの球速が記録される。
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