第79話
ウグイス嬢のアナウンスが流れる。
「五番―――」
五番打者が打席に入る。
ハインがサインを出す。
陸雄が頷いて、投球モーションに入る。
指先からボールが離れる。
外角低めのストレートが飛ぶ。
五番打者がスイングする。
しかし上に振ったためか、空振りする。
「ストライク!」
球審が宣言する。
ハインが返球する。
陸雄がキャッチして、構える。
五番打者が構え直す。
ハインがサインを出す。
陸雄が頷いて、素早く投球する。
打者がタイミングが取りづらいのか、困惑する。
真ん中にボールが飛ぶ。
慌てて、スイングする。
打者の手元でボールが右に曲がって、落ちていく。
カーブだった。
ハインのミットにボールが収まる。
「ストライク!」
球審が宣言する。
(ハイン。三球三振にするか?)
ハインが返球する。
陸雄がキャッチして、サインを待つ。
ハインのサインで二ッと笑う。
(ほぉ~エグいねぇ!)
陸雄が投球モーションに入る。
外角高めにボールが飛ぶ。
ストライクゾーンからボール球一個分外れる。
「ボール!」
球審が宣言する。
ハインが返球する。
陸雄がキャッチして、次のサインを待つ。
相手が構え直す前にサインを送る。
内角高めにボールが飛ぶ。
打者がバットをスイングする。
(ボール球?)
打者が気づいた時には、内角球よりのボールが―――ハインのミットに収まる。
ボール球すれすれのコースだった。
「ストライク! バッターアウト!」
球審が宣言する。
(よっし! ツーストライクだ。後一人で満塁問題は解決だぜ)
陸雄がロージンバッグで手の滑りを抑える。
ウグイス嬢のアナウンスが流れる。
「六番――」
六番打者が打席に入る。
「―――プレイ!」
球審が宣言する。
ハインがサインを出す。
(なるほどねぇ―――ハインも随分大胆な配球するなぁ)
陸雄が頷き、投球モーションに入る。
足を踏みつけると同時に―――腕を力強く振り下ろす。
指先からボールが離れる。
真ん中高めにボールが飛ぶ。
スピード遅いのかゆっくりと打者の手元まで飛んでいく。
タイミングを合わせて―――六番打者がフルスイングする。
ボールがバットに当たりそうになる。
その時―――打者の手元にボールが落ちる。
チェンジアップだった。
バットが芯より下に当たる。
マウンド前にボールが転がっていく。
ピッチャーゴロになり、陸雄がマウンドから移動して拾い上げる。
一塁に向かって走っている打者に向かって、送球する。
ファーストの星川が塁を踏んで、捕球する。
打者が塁に向かう前にボールが入る。
「アウト! チェンジ!」
塁審が宣言する。
横田の希望虚しく、無情にもスリーアウトになる。
「くっそ! チクショウ! チクショウ!」
横田がベンチの前で膝を付き、眼に涙を浮かべる。
一方で陸雄達はベンチに嬉々として戻っていく。
陸雄がハインに話しかける。
「最後の打てると踏んでた訳?」
「ああ―――ゴロになると想定していた」
ハインが表情を変えずに淡々と答える。
ベンチに二人が着く。
「解ってても初球で普通やるかー?」
「あのタイプの打者は俺の経験上振る。結果としてこうなったんだ」
「大した経験ですね。よっ! 大将!」
「…………タイショウ?」
「英語でビッグボスってこと!」
「成程―――悪くない」
ハインが防具を脱ぐ。
陸雄がレガースを外すのを手伝う。
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