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その頃、千歳基地の
「ようしノブ、今度はぼくの勝ちだな」
F-23J 001 号機のコクピットで、巧也はしのぶとシミュレーション対戦していた。コクピットスタンバイでの
『そうは行かないよ、タク』
”ノブ”モードのしのぶが、(仮想の)機体をひるがえらせる。
「おっと、その手はすでに予想済みだ」
巧也が操縦桿を倒した、その時だった。
突然、ヘッドフォンにすさまじい雑音が飛び込んでくる。
「!」
巧也はHMDをはね上げ、
「アイ、何が起こったんだ?」
「分かりません」アイが答える。「無線が使用不能、GPSも受信出来ません。おそらく敵の大規模なECM攻撃と考えられます」
「なんだって……?」
『タク、大丈夫?』しのぶだった。
「ああ。ノブ、これって何が起こったんだと思う?」
『たぶん、
「バラージ・ジャミング?」
『うん。あらゆる周波数の電波をものすごい出力で送信する、という……昔ながらのジャミングの方法だよ』
「あれ? でもぼくら、話せてるよね?」
『今ボクらが会話に使っている回線は、有線で基地内のネットワークに繋がっているからね。電波妨害は関係ないよ』
「なるほど」
巧也がうなずいた、その時。
「タク! シノ!」
声の方を見下ろすと、町田二尉だった。血相を変え、地面の上で息を弾ませている。
「どうしたんです……」巧也の言葉にかぶせるように、二尉が大声を上げる。
「二人とも、すぐに機体を降りて! これは命令よ!」
「!」
その一言で巧也は、これはただ事ではない、と悟る。
急いで搭乗はしごを駆け降りると、しのぶも隣に並ぶ002号機からすぐに降りてきた。
「二人とも急いで宿舎に戻って。そして地下の教室に入りなさい。私も行くから」
「ええと、どうしてですか?」
「説明している時間はないわ。駆け足――進め!」
「!」
そう命令されると巧也としのぶも従わざるを得ない。二人はあわてて走り出す。
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