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「へ?」思わず巧也が宇治原三佐を見つめると、三佐は彼に向かって笑いかけた。


「君が一位になった項目はないけど、四位になった項目もない。つまり君は、何か飛びぬけて得意なものがあるわけじゃないけど、飛びぬけてダメなものもない。あらゆることを平均レベルでこなすことができるんだ。ある日本人宇宙飛行士が以前言ってたんだけどな、宇宙飛行士には、何か一つ秀でたものがある人より、なんでもかんでも平均的にできる人の方が向いているんだそうだ。だからタク、君は宇宙飛行士を目指すべきかもしれないぞ」


「はぁ……」


 これはフォローなんだろうか。巧也は引きつった笑みを顔に浮かべることしかできなかった。


「さて、これでメンバーそれぞれの得意分野と苦手分野が大体分かったと思う」宇治原三佐が全員を見渡しながら言う。「で、まずは四人の中で1番機に乗る、リーダーを決めたいと思う。立候補する人は、いないかな」


「はい」ほとんど間を置かずに、声と手が同時にあがる。


「!」その場の全員が声の方に顔を向ける。手をあげていたのは、絵里香だった。


「私がやります」自信たっぷりな様子で、絵里香。


「エリーが立候補したか。他に立候補する人はいないかな?」再び宇治原三佐は四人を見回す。


 絵里香以外の三人は互いに顔を見合わせるが、誰も手を挙げようとしなかった。


「誰もいないか。それじゃエリーがリーダーで、いいかな?」


 確かにエリーは空中戦の実力もあるし、DFでのリーダーの経験も豊富だ。1番機には適任だろう。巧也がうなずくと、同じように判断したのか、譲、しのぶもうなずいた。


 宇治原三佐は続ける。


「それじゃ、次は3番機だ。これは第二エレメントのリーダーとなる。あ、エレメントというのは二機のペアのことだ。第一エレメントが1番機と2番機。第二が3番機と4番機だ。さらに、1番機は4機全体のリーダーでもある」


「はい……」しのぶが手を挙げた。


「お、シノが立候補したね」少し意外そうに宇治原三佐が言うのに、かぶせるようにしのぶが告げる。


「ち、違います!」


「え、違うのか?」


「はい……あの、わたし……2番機に立候補したいです……」


「え? 2番機?」


「はい。わたし……たぶん、空中戦では一番実力ないし……DFでもリーダーになったこと、めったにないですから……2番機が自分に一番ふさわしい、って思います……あ、もちろんエリーがそれでよければ、ですけど……」


「全然構わないよ」笑顔で絵里香がしのぶを振り返る。「それじゃシノ、私と組もうか。女の子同士で」


「……うん!」しのぶも笑顔になる。


 通常、2番機は最も未熟なパイロットがくポジションだ。それに自ら立候補したという事は、しのぶは実力が皆よりも劣っていると自覚しているのだろう。そう思いながらも巧也は少しショックだった。しのぶはDFで彼とペアを組んでいた”ノブ”の中の人。だから、てっきり自分と組みたがるんじゃないか、と彼は思っていたのだ。


 だけど……


 よく考えてみると、”ノブ”と組んでいた時は、巧也も相手が男子だと思って気軽に接していた。それが実は女の子だった、ということになると、果たしてその頃と同じように”彼”……じゃなくて”彼女”に接することができるかどうか。巧也には自信が無かった。だから、これで良かったのかもしれない。


「というわけで、2番機はシノでいいかな」宇治原三佐が言う。「それじゃあらためて3番機に立候補する人は……」


「俺はパスだ」譲だった。


「え、なんで? ぼくよりもジョーの方がランキング上じゃない?」と、巧也。


「ランキングとかは関係ねえ。俺は自分でも人の上に立ったりするガラじゃねえって分かってるし、そもそもそういうのが大嫌いなんだ。リーダーにこき使われる方がよっぽど気楽だからな。だから俺は3番機は遠慮させてもらう。タク、お前が3番機やったら? DFじゃお前と俺は対決することの方が多かったけどさ、実は俺、お前と味方としてペアを組んでみたら面白いかもな、って思ってたんだ」


「ジョーはそう言ってるが、どうだ、タク。3番機やるかい?」と、宇治原三佐。


 譲に4番機の立候補をされてしまったら、もう巧也には他に選択肢は残されていない。彼はうなずくしかなかった。


「……わかりました」


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