第11話 脱出 露出
巨大なカエルのような魔物、コアフロッグがハルカをじっと見つめている。
「すごい見てる! すっごい私のこと見てるよぉ! うぅ〜ヌルヌルテカテカ気持ち悪い! しかもさっき斬った所再生してるし気持ち悪い!」
『マスター落ち着いて下さい。今のマスターの力なら簡単に倒せます』
「倒せるって言っても斬らないとダメでしょ? ってことは近付かないとダメでしょ? 斬ったらヌルヌルするでしょ? ヌルヌルが飛んで来たりしたらなんか……えっちな感じになるじゃん!」
少し涙目になりながら訴えるハルカ。その時、
『ゲゴッ!』
『…………あ、来ました』
「きゃぁぁぁぁぁ!!!」
ハルカの葛藤をよそにコアフロッグはその巨体にそぐわない速度で飛び跳ねながら向かってくる。不規則な動きで体を覆う体液を辺りに撒き散らしながら。
「こ、こないでっ! 【
牽制の為に放った魔法。しかしそれはほとんどダメージを与える事が出来ず、コアフロッグの体の表面をまるで滑るかのように逸れていく。
「うそっ!?」
『あの全身を覆っている粘膜のおかげで中途半端な魔法攻撃は通用しないようです。』
「それなら大技で──」
『それは危険です。ここに来るまでに見つけれなかったマスターのご友人が、もしこのフロアの何処かにいるとしたら巻き込む恐れがあります』
「だったらどうすれば……って、やることは一つしかないよね。そのためにここまで来たんだもん。ティズちゃん行くよ!」
『はい、マスター』
壁に張り付いていたコアフロッグが地面に降りた瞬間、ハルカは真っ直ぐ相手に向かって走り出す。それと同時にコアフロッグは捕食してやろうかとばかりに舌を伸ばしてくる。
「っ!」
ハルカはそれを大きく跳んで避け、着地してすぐにまた同じようにコアフロッグへと走り出す。そしてまた逃げる。
「…………」
それをコアフロッグを中心に、円を書くように何度も何度も繰り返した。
『マスター? 先程から一体何を?』
「…………」
ティズがそう聞くもハルカはそれに答えずに考え続ける。
(上に避けるのはダメ。伸ばしながらでも多少は曲げられるみたいだから、宙にいる間に伸ばしてこられたら逃げれないし、捕まったら全身ヌルヌルになっちゃうからそれはイヤ。それに切っても再生するからキリがない。一度伸ばすとその場から動けなくなるみたいだし、戻してからは一回口を閉じないと再び伸ばすのは無理みたい。伸びる長さはあの位置からだと壁まで少し届かないくらい……かな。それならっ!)
ハルカは再びコアフロッグ目掛けて走る。そして伸ばされる舌。その舌の先端があと少しで眼前に迫った時、足を止めて力いっぱい後ろに飛んだ。壁ギリギリに着地して前方を見ると、伸びきった舌がわずかハルカの一歩半程の所で止まり、元に戻ろうと縮み始めた。
「今っ!」
縮んでいく舌を追いかけるように走るハルカ。そしてコアフロッグが口を閉じた瞬間、横に回って右側の前足後足を斬り落として離れた。
「これでもう動けないよね!」
『マスター、首だけ動かしてまた狙ってます』
「大丈夫!」
そしてコアフロッグが再び口を開こうとしたその時、地面が輝きだした。
「中途半端な魔法でも纏めて食らったらどうなるかなっ! 【
ハルカがそう叫ぶと同時に出現した雷の巨大な槍が、コアフロッグを真下から突き刺す。そして一瞬の激しい放電のあと、そこに残ったのは黒焦げになったコアフロッグと、その口から転がり出てきた割れたダンジョンコア。
「大・成・功♪」
クルッと回ってピースするハルカ。パサっと落ちるスカート。そして……露出される下着。
「へ?」
『マスター、先程斬りつけたときに跳ねた粘液でベルトが溶けたようです』
「もぉぉぉぉっ! ヌルヌルにならないと思ったら結局こうなるんじゃんっ!」
ダンジョンの最下層に、間抜けな格好になったハルカの声が響いたのだった。
パーティーメンバー唯一の男子だからと追放された俺、美少女に変わって戻ってきました。〜英雄になりたいのにパーティメンバーや幼馴染から迫られて困ってます〜(イラスト有り) あゆう @kujiayuu
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