第13話

 「ただいまー! 悠弥いるー?」


毎度のことながら勢いよく開けられる俺の部屋の扉

何度も思うがノックしてから扉を開けてほしいんだけどな……


「おかえり……」


俺の目の前でやや興奮気味に見える深愛姉がカバンの中から

用紙を数枚出して、俺にみせてきた。


手にとって見ると、50点や40点と赤字でかかれていた。


「……テスト用紙?」

「うん!」


だとしたら、控えめにいってひどい…

まさかこれで頑張ったから褒めてくれとか言われたらどうしようかと

悩むぐらいだ。


たしか深愛姉が通っている高校はかなりレベルの高い

進学校だった気がしたが……


「で、何でこれを俺に?」


俺は疑問に思ったことを深愛姉に訪ねる

すると深愛姉は下をむきながら「ふっふっふ……」と

不敵な笑みを浮かべた


「なんと今回は赤点がないから! 明日からテスト休みにはいれるんだよー」


天井を突き破るかのように勢いよく拳を振り上げる深愛姉


「……そりゃよかったね」


つまりは俺の平穏な時が終焉を迎えたとも言える。

せっかく1人に慣れる時間ができたというのに


「で、明日なんだけど友達呼んでいい?」

「ご自由にどうぞ。 俺は部屋にいると思うし」

「えー! 悠弥も一緒にだよ!」


え? いや……どういうことだよ?


「何で俺も一緒にいなきゃいけないんだよ!?」

「学校でよく悠弥の話をするんだけど、そしたら友達が悠弥に会ってみたいって」


ただでさえ深愛姉の相手をするだけで精神的にきついっていうのに

プラスで深愛姉と同じレベルの女の相手をするとなると体がいくつあっても足りないに

決まっている。


いや、もしかしたら女ではなくて男って可能性も……


「ちなみに友達って男?」

「ちがう女の子だよ! 女子校だから男子との交流なんかないよ!」


……明日はでかけることにしよう。




次の日、目が覚めてカーテンを開いた俺は絶望に打ちひしがれていた。


「……マジかよ」


空は真っ暗な分厚い雲に覆われており、その雲からポツポツと

みたくもない雫が流れ出していた。


「今週は晴れって言ってたよな」


スマホの天気アプリを覗き込むと


『今日は南から発生した低気圧が日本列島に上陸しており……』


早い話、予報が外れたから雨が降っています…

ってことが書いてあった。


深愛姉の友達が来るので朝からバイクでどこか出かけようと

考えていたのがこの雨で計画が水の泡に消えた。


レインコートを着れば運転できなくはないが……

バイクが泥水で汚れることを考えると出かける気が失せてしまう。


「……今日は部屋にいるか」


そのための準備をするためにベッドから降りて

洗面所で顔を洗い、歯を磨いてからリビングへと向かう


リビングには既に深愛姉がいて、いつも通りソファに体育座りを

しながらウイッチで遊んでいた。


「悠弥、おはようー! おにぎり作ったから食べちゃって!」


ウイッチの画面をみていた深愛姉は顔をあげて俺の方をみていた。


「おはよう……」


淡々と挨拶を済ませ、冷蔵庫から飲み物を取る。


「友達がね午前中のうちにくるって!」

「あっそ……」


ダイニングテーブルにあったおにぎりを持って自分の部屋に戻り

いつも通りPCの起動、ヘッドフォンを装着し自分の世界に入っていった。


「デイリークエスト終わりっと……!」


ヘッドホンを外してから腕を伸ばし自分の体を背もたれに倒していくと

背中と腕からポキポキと軽い音がなっていた。


スマホを見ると時刻はお昼を過ぎていた。

LIMEにメッセージと着信がきていたが、見なかったことにした。


深愛姉の友達が午前中には来ると言っていたので到着して

楽しんでいることだろう。


「……腹減ったな」


おにぎりを食べて以降何も食べていなかったためか

腹の虫が鳴き出していた。


だが、リビングに行けば深愛姉に捕まること間違いなし。


財布を取り出して中身を確認すると青いお札が数枚入っていた。


「コンビニ行ってくるか」


厚手のパーカーとネックウォーマーを取り出して

部屋を出ようとすると、外から勢いよくドアが開いた。


もちろん開けたのは俺ではなく……


「もー! 呼んでるのに何でこないのー!」


肩を露出させた紺のニットセーターにジーパン姿の深愛姉だった。

俺の顔を見るなり、頬を膨らませていた。


「……俺がいたら邪魔だろと思ったんだ」

「邪魔じゃないよ! むしろ悠弥がいないとはじまらないよ!」


深愛姉の言葉に頭を抱え込みそうになっていた。



「その子が弟クンかい?」


初めて聞く声で反応する。


声の主は深愛姉の背中越しからひょこっと顔を覗かせていた。


肩までスラっと伸びた黒髪に赤い丸メガネ

白のパーカーに足元全体を覆ったロングスカート姿と

深愛姉とは系統が対称的に見えた。


「うん、悠弥っていうの!」

「へぇ〜」


深愛姉の友達は頭をあげると俺をみながらゆっくりと下げていく


「話に聞いてたよりも、かっこいいね。 まあタイガきゅんには到底叶わないけど」


誰だよタイガきゅんって……


「えっと、この子はね松戸琴葉(まつど ことは)っていうの! 小学校からの幼馴染なんだよ」


深愛姉は友人の琴葉の隣に立って紹介をする。

紹介された琴葉は俺の方を向くと「松戸 琴葉です」と言いながら会釈をしていた。


「……佐倉悠弥です」


俺も名乗ると琴葉につられるように会釈をした。



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【あとがき】

▶当作はカクヨムコンに参加中です!!


お読みいただき誠にありがとうございます。


読者の皆様に作者から大切なお願いです。


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