第12話
「……冗談だろ」
深愛姉に裾を掴まれたまま部屋に戻り、小言を言いたい気持ちを抑えながらも
自分の部屋でお互いに好きなことをやっていた。
「あ、部屋にあるウイッチ取りに行きたいからついてきて!」
「お手洗い……」
ことあるごとに一緒に付き合わされることもあったが
それ以降、何も言ってこなかったのでヘッドフォンをつけて
ゲームの世界に没頭していた。
時間を見ると日付をとっくに過ぎており、いつもなら寝ている時間になっていた。
まだまだこれからと言いたかったが、色々ありすぎて
体が疲れを訴えていたので、椅子から立ち上がり
ベッドを見て思わず声がこぼれたのである。
俺のベッドでは穏やかな表情で深愛姉が寝ていた。
ウイッチは電源を切っており、きちんと布団に入っていることから
寝落ちではないことは確か。
っていうか、枕まであるし……
「ウイッチ持ってきた時に、一緒に持ってきてたのか……」
椅子に再度座り、どうするか悩む……
①起こして自分の部屋に連れていく
②諦めてリビングで寝る
③気にせずふとんに入る
③は絶対にありえないので、①か②のどちらかになる。
だが、起こそうとすれば毎度のように気がつけば③になりかねない
そうなると残る選択肢は②だけ
部屋の明かりを消してリビングに向かうことにした
「……さむっ?!」
リビングに入ると心の奥まで凍りつきそうな空気が流れ込んできた。
いつもなら深愛姉がここで過ごしているためエアコンがついているが
今日は暖房をつけることがなかったので温まることがなかったため
部屋一面が極寒の間となっていた。
「たしかクローゼットの中に客用の布団が……」
リビングの隣にあるクローゼットを開けて布団を探すが
見るかることはなかった。
しばらく考えていると……
「そういえば汚くなったから捨てたんだった……」
しかも捨てたのは自分だった。
為す術がなくなり、寒さで体が震えだしてきたので自分の部屋に戻り、考え直すこと。
部屋に戻ってから明かりをつける。
「……あ……れ? もう朝?」
深愛姉が寝起きの表情のまま体を起こしていた。
「まだだよ。それよりも寝るなら自分の部屋で寝てくれ」
「やーだぁー」
眠気が混じった声をあげるとそのまま再び布団をかぶる
「俺が寝れないだろ!」
「一緒にねればいいじゃん〜」
ベッドの空いている部分をポンポンと叩く深愛姉
「そのベッド、シングル用なんだが……?」
「大丈夫だよ〜」
寝ぼけた声で答えていた。絶対に何も考えずに言ってるだろ……。
「ほらほら早く〜」
ポンポンとマットを叩く音が早くなっていく。
「まったく何でこうなるんだか……」
この状況を回避する方法を考えていたが
深愛姉の焦りのポンポン攻撃(いま命名)と今日の出来事での
疲れからか名案が思いつかなかったので、仕方なくベッドの中へ入り
お互い向き合うように横になった。
「いらっしゃーい〜」
まるで自分のベッドのように扱う深愛姉だが……
「ここは俺のベッドだ!」
「気にしない気にな〜い」
深愛姉は終始笑顔だった。
俺は背中を向けて寝ることにした。
「何でそっちむくの〜」
「いつもこうやって寝てんだよ……」
もちろん嘘だ。
いつもは正面を向いて寝ている。
何故か朝起きると横を向いているが
「へぇ〜そうなんだ〜」
相変わらず寝ぼけた声を出しながら深愛姉は
背中をつっついていた。俺は思わず体をビクッとさせてしまう
「気持ち悪いからつっつくな!」
それでも深愛姉の手はとまらず、つっつき以外にも上から下に
なぞったり、両手でペタペタと触り始めてきた。
若干手が冷たいせいか、寒気が起きることもあるんだが……
「いいかげんに——」
深愛姉の方を向き、やめさせようとしたが
当の本人は寝息を立てて夢の中へと旅立っていた。
「……何なんだよいったい」
一人で悪態をつくと再び反対側へ向き、目を瞑じると
疲れもあってかすぐに寝ることができた。
「……と」
後ろから声をかけられて目が覚めてしまう。
深愛姉の方を見るが先ほどと同じように心地よい寝息を立てていた。
「寝言かよ」
今度こそ寝ようと反対側へと向きを戻す。
「おやすみなさい……ヒロト」
深愛姉は微かな声で誰かを呼んでいた。
(……誰だよ)
疑問に思うことはあったが、睡魔が襲いかかってきたため
再び俺は眠りの世界へ旅立っていった。
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【あとがき】
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