第358話.触手の能力
触手を拡散させようとした放った風魔法も、触手に届く寸前でストーンキャノンと同様にバチバチと青い火花を散らす。火花の分だけ魔法が消滅し、飛び散った火花は細長く伸びた触手にも降り注ぐ。それでも触手は相変わらずのウネウネとした動きを見せ、何の影響も受けていない。
『残念だったわね。ストーンキャノンと同じ結果よ』
「何故だ?風でさえ消滅させてしまうのか?」
岩のような塊であれば、触手に触れられれば消滅する。だが密接に結合していない風であれば、触れられても消滅し難いと勝手に思い込んでいた。しかし、触手は俺の想像した能力を遥かに凌駕し、風魔法でさえも簡単に消滅させてしまう。
さらに、消滅の火花は触手の近い場所だけでない。離れている場所からも火花が散り始め、それは風の流れにも逆らって徐々に俺の方へと迫ってくる。火花が散る程に風魔法の勢いは弱まり、さらに火花の勢いは加速する。
『同じ結果ではないわね。風魔法の方が相性は悪いわよ』
「ああ、分かってる」
このままウィンドトルネードを行使しても、触手には届かない。それどころか逆に触手の攻撃が俺にも届く。今これ以上継続しても危険でしかない。
『どうするの?他にも試してみる?』
「何もせずに放置は出来ないだろ」
下からは微かではあるが熱気が吹き上げ、次第に強さを増している。下に行けば行くほどに魔力溜まりは多く、先に進んでも状況は悪くなる。リッター達の光が底を照らせないのだから、そこを強引に突破して底へと辿りつけるとは思えない。
出来ることといえば、中位魔法の連続行使。しかし火属性魔法のフラッシュオーバーも水属性魔法のエントレイメントも、どれも同じで青白い火花を散らし消滅させらる。
四属性の理はそれぞれ違うのに、触手の行動は何も変わらず、ただ待ち構えて触れるだけ。それでどの属性も無効化してしまうのだから驚きを隠せない。
「四属性じゃ、ダメなのか?」
『上位魔法はダメなの?今は、出し惜しみしている場合じゃないでしょ』
「ウィンドサイクロンが使えるなら、もうやってる。ただ、ここでは使えないだけだ」
上位魔法のウィンドサイクロンは、上位魔法ではあるが、俺の場合は下に地面があるこそ使える魔法になる。全方位の風を操ることは難しく、下に地面があり制限された空間だからこそ行使出来る。
『そうなの?使えると思ったけど、まだ残念な魔法なのね』
「だから、最初から準上位魔法って言ってるだろ!」
「お主達、遊んでいる場合じゃないだろ!」
イッショが感じとっている魔力溜まりは1つではない。新しい魔力溜まりが、ポツポツと岩肌に現れ始める。成長した魔力溜まりからは、まだ小さいが触手が出来上がりつつあり、悠長に待ってはいられない。
四属性以外の攻撃となれば、最も威力が高いのは召喚ハンソになるが、それはハンソが触手に直接触れてしまう。いくら特殊な岩で傷付き難いといっても、ストーンキャノンが簡単に崩壊させられたのを見ると、流石に試してみようとは思えない。ソースイがやる気になっていたとしても、それはやらせてはいけない!
次に来るのはヴァンパイアの陰魔法になるが、フォリーのシェイドはそれ程射程は広くないし、今の宙に浮いている状態では自由な行動は出来ない。
「ダーク兄さん、何をボケッとしているのですか?ここは、私達のヴァンパイアの出番ではありませんか!もう、マトリも準備は出来ているのですよ」
陰からはフォリーとマトリが造り溜した紫紺の刀が次々と出てくる。常に戦う準備を整えている2人に対して、遅れをとったダークは何も言えない。これ以上フォリーの叱責を受けないために、ダークは黙って触手へと襲いかかるしかない。
そのダークに対して魔力溜まりから伸びる細長く伸びた触手は、ゆらゆらと揺れ動き紫紺の刀をのんびりと待ち構えている。ただ、俺へと伸びていた動きが止まったのは、それなりに紫紺の刀を警戒しているからでもあり、風がないのに揺れ動くのはタイミングを計っているようにも見える。
「ダーク、気を付けろ。狙われているぞ」
それはダークも理解しているようで、紫紺の刀の動きが変わる。左右に一直線になるように広げられた、2本の刀はゆっくりと旋回し出すと、徐々に速度を上げてゆく。もう刀の動きを目で捉えることは出来ず、ダークは触手がどのような動きを見せようが関係なく、真向勝負で切り刻みにゆく。
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