トーヤのダンジョン
第333話.首都トーヤ
「大きいな、ここが首都トーヤか」
「イスイの街とは比べ物にもなりやせんぜっ」
チェンは以前にイスイの街はトーヤに引けをとらないといっていたが、あっさりと前言撤回して遠くにみえるトーヤの街に感嘆している。
俺達の中で一番トーヤについて詳しいのは、エルフ族族長であったコアになる。そのコアの知識があるからこそ、俺達が単独でもトーヤのダンジョンを攻略出来ると考えた。
「チェンは、トーヤに来たことがなかったのか?」
「そんなのありやせんぜっ、商人達から聞いた話だけっすよ。だから、あっしも見るのは初めてっすね」
「コアは大丈夫か?」
エルフ族族長であったコアは、トーヤの表も裏の顔も知っている。それだけに、悲しげな目で街を見つめている。
「旦那様、大丈夫ですわ」
ダンジョン都市と呼ばれる首都トーヤ。イスイの街のように魔壁に囲まれた都市となるが、街の規模は比べ物にならない程に大きい。
トーヤの街は正八角形の形をしていて、その壁の一辺だけでもイスイの街の壁の倍以上の長さがある。計算する気もならないが、面積になれば軽く10倍以上はあるだろう。
「トーヤには数十の種族がいますわ。イスイの街は蟲人族と、そこを通る隊商だけで構成されているとすれば、必然と街の規模も大きくなります」
「それは分かっているつもりだけど、実際に見るのとは大きく違うさ」
「トーヤの街は、ダンジョンの下層にも入り込んでいるので、実際に地上で暮らしているものは少なく感じるかもしれませんね」
トーヤにある8つのダンジョンがあり、それはトーヤの街とは比べ物にならないくらいに広大な空間をつくり、どのダンジョンの最下層にも辿りついた者はまだいない。
そしてダンジョンは数十の種族が存在する中でも、ヒト族·オニ族·ドワーフ族·蟲人族·エルフ族·ハーフリング族·巨人族·獣人族の8種族によって管理されている。街自体も正八角形を8等分し、それぞれのエリアを8つの種族が治め、全ての事は族長達の合議制によって意思決定が行われる。
「コア、合議制にはヒト族も加わっているのか?」
「8人の合議制といっても、全てが平等ではなく力の差はあります。その中でも、ヒト族の力は強いわけではありませんね」
「弱いのか?」
「残念ですが、圧倒的に弱いですね。ダンジョンの1つを管理しているだけの存在で、発言力は限りなく無いに等しいです。多数決となっても、ヒト族の発言力は1とはなりません」
「それなら、多数決で意見が割れることはないな」
トーヤの街が首都と呼ばれるまでに成長したのは、ダンジョンから産出される豊富な鉱物や魔物の魔石を資源にある。当然に、ダンジョン深くに潜れる者や、それらの資源を加工品として付加価値を与えれる者の力は強くなる。しかしヒト族は、どの能力も平均的で突出したものが無く、種族全体の力としては強くない。
「どうして、ヒト族がダンジョンの管理を任せられているんだ?」
「そこまでは、分かりません。エルフ族にとっても遥か昔のことになりますので、今となっても知る者は誰もおりません」
「ヒト族に力があれば選択肢は多かったかもしれないが、最弱種族であれば期待出来ないか」
「それは種族全体としての話で、中には優れた冒険者や職人は居ますよ」
「でも、多くはないんだろ?」
「そうですね、片手で数えれる程でしょうか」
期待はしていなかったので予定通りに、俺はチェンの従者として振る舞うしかない。そして、首から下げている身分証を手に取る。それは、イスイの街で蟲人族を救ったことの報酬でもある。蟲人族が認めた冒険者であることを示してくれる。
「これがあれば、トーヤの街にも入れるし、ダンジョンに潜る事も出来る。チェンの従者ではあるけどな!」
「私は、トーヤでは表に出ることは出来ませんが」
「俺達に知識を与えてくれるだけで、十分役に立っているよ」
そして自然と意識はダンジョンへと向かう。バッファからも言われていたことではあるが、タカオからの武器や防具·オヤからの魔石の流通量が激減した今では、不足する資源は全てダンジョンから依存するしかない。
比較的に自由に潜ることが出来たダンジョンも厳重に管理され、実力や経験の無い者はダンジョンに入ることすら叶わない。
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