第297話.翼を持った少女
『スライムよりも、あなたの中に秘めた魔力の方が凶悪よ。付け加えるなら、あなたは迷い人よ。この世界のヒト族と似た存在であるけど、全く一緒ではないでしょ!』
「俺も魔物と似ているわけか···」
『アシスの世界の種族ではないということは一緒よね』
迷い人であってもヒト族であるという認識だったが、この世界の共通認識としては俺はヒト族でなない。ヒト族に限りなく近い性質を持っているが、全く別物の種族でしかなく、その中でも無属性のスキルしか持ち合わせていない最弱に位置する。
「旦那様、心配いりませんわ。私は、例え旦那様が魔物であっても凶悪な存在でも構いません。困難が多ければ多いほど、より繋がりは強固になりますの」
俺の何がコアをそうさせるかは分からない。それはムーア達も一緒で、それぞれ目的の為には種族や魔物でかるかは関係していない。そんな俺と契約してくれる変わり者達は貴重な存在でもあり、皆の意見は賛成しかない。
そして残念なのは、俺はそれを覆す意見を俺は持ち合わせていない。
「ハーピー族の言葉と名を与える。名は、コール。受け入れるならば力を示せ!」
しかし吸収したスライムからの反応は無い。それが拒否して受け入れないのか、それとも言葉が通じずに理解されないのかは判断出来ない。
再度、同じ言葉を投げ掛けるが、やはり結果は同じになる。しかし微かな戸惑いの感情が聞こえてくる。
『通じていないみたいね』
「今まで、魔物と契約したヤツなんていないだろう。そんな発想を理解するのは難しいと思うぞ」
『困ったわね、どうしようかしら?』
ムーアが契約を諦めずに考え出すと、シナジーが霧で俺とハーピーの姿を作り出す。そして霧で出来た俺とハーピーが戦いを始める。
「なるほどな。これならスライムにも伝わるかもしれない。誰かは肝心の詰めが甘いからな!」
そんな俺の言葉とは関係なく、俺とハーピーの戦いは激しさを増し、ハーピーは傷付き倒れてしまう。そこに俺が手を差し出すと、ハーピーも俺の手を掴む。
『何だか、美化されているわよ。そんな余裕じゃ無かったのに!』
「ムーア、今はシナジーの邪魔をするのは止めよう」
ハーピーが俺の手を掴んだ瞬間、ハーピーの体は消え俺の背中にハーピーの翼が現れる。ハーピーの翼を手に入れた俺は、ゴブリンやオークとも戦いを繰り広げると、ゴブリンやオークの力を手に入れる。
そして、今度はスライムが現れる。今と同じ光景が繰り返され、俺がスライムへと手を差し出す。
その光景で、スライムは俺がしようとしていたことを理解する。
体の中に今までに感じたことのない力を感じる。それが身体中を駆け巡り、それが次第に俺の左手に集まる。左手に集まった力は体内に収まりきらず、そこからスライムが飛び出してくる。
そして飛び出したスライムは形を変え、背中に翼を持つ小さな女の子になる。
「ウチの力が必要なの?」
円らな瞳で、こっちを見つめてくる。スライムの親玉が全く想像していなかった姿で現れるが、少女の姿にどう対応するかと悩んでしまう。
「ムーア、どうなってる?もう契約が成立してしまってるぞ!」
まだスライムの意思を確認出来ていないが、スライムが言葉を操っているのが契約が済んだ証しとなる。
『お互いに問題がなかったから、契約が成立したのよ。話してる言葉は、間違いなくハーピーのものみたいね』
「俺は承諾した覚えはないぞ!」
『何言ってるの、契約を持ちかけたのはあなたでしょ!』
せっかちな契約ではあると思うが、確かにコールが了承すればその時点で契約は成立する。それでも会話が成立するようになったならば、事後でも契約の内容を確認する必要がある。
「ウチの名はコールなんでしょ。ラガートが教えてくれたから分かるよ」
「名付けのことは分かってるのか。それなら契約の事も聞いたのか?」
「力を示せば、認めてくれるんでしょ。そして、ウチにも居場所をつくってくれる!」
「ああ、でも居場所は確約は出来ない。俺の存在が消滅する可能性だってあるし、そうなれば契約はそこで終わりになる。無理して俺と契約する必要はないんだぞ」
「あーーーっ、ウチの力を信用していないね!」
少し膨れっ面になると、ブツブツと独り言を言い始める。
「皆、集まれ~」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます