第236話.守護者の倒し方①

 ケイヌやハーフリング族にでも、守護者を倒せると簡単に言ってみたものの、その難易度は高い。


『どうやって倒すつもりなの?その光るだけの短剣で?私達の手の内は全て見せれないでしょ?』


 そう聞いてくるムーア反応は当然のことで、最初に倒した守護者のロードもキングも簡単に倒したわけじゃない。

 それだけでなく、今回はケイヌやハーフリング族の監視の目がある。俺のスキルや精霊達の知られている力以上に、知られていない力は多い。そして、ケイヌとライが繋がっている可能性は高い。


「そうだな、今後の事を考えると全てを見せる事は出来ないだろう。特にハーフリング族相手なら、あっという間にアシス中に情報が拡散されてしまうな」


『知られている事でも、ハーフリング族が真似する事が出来なければ意味が無いわ』


「そうだな、かなり制限された中で戦う事になる」


『“そうだな”ばっかり言ってるけど、ちゃんと考えてるの?思い付きじゃないでしょうね!』


「思い付きかもしれないけど、事前準備と対策が出来れば、ケイヌを騙す事が出来るかもしれない。断言は出来ないけど、やってみる価値はある。そういうのは、嫌いじゃないだろ?」


『まあ、そうのは嫌いじゃないけど』


 守護者は、オリジナルとなるキングとロードのコピーのような存在になる。オリジナルと同等では無いけれど、その能力やスキルを扱えるのがコピーである守護者の強みで、それはジェネラルクラスを圧倒する程の上位種の力になる。

 でも草原の守護者の場合は、強みでもあり大きな弱みにもなる。同じ個体から分裂した守護者は集団あるならば、同じ思考で一糸乱れず統率された動きを見せるだろう。しかし、草原の守護者はバラバラに散らばり、連動して動くことはない。


 しかも、守護者を倒した後に現れたのはオリジナルのオークで、今だに他の守護者は現れない。もし決められた場所に居続けるのであれば、決められたエリアを守る事しかしていない。

 そうなれば、そこに俺達に有利なアドバンテージが生まれる。俺達は守護者の戦い方を経験して知っているが、向こうは初めての経験でしかない。


 そして守護者の戦い方は、ロードもキングも積極的には近付いてこない。オーク程の巨体で膂力にも優れているなら接近戦が得意に違いないが、自ら好んで接近戦をしかけてこない。

 しかもロードは盾役となり、キングがを守ることを優先としている。さらに異臭という防御壁をつくり、遠距離攻撃を仕掛けさせてくる。


「どうしてだと思う?」


『それは守護者が用心深いからでしょ。相手の魔力や体力を奪ってからじゃないと仕留めにかからない。それに遠距離攻撃に対しての守備に、絶対的な自信があるからでしょう』


「そうだとしたら、最初は必ず守って攻撃はしてこない。オマケにこちらから接近戦を仕掛ければ、どう対応するかまで分かっている」


『そうね、キングの口臭ブレスね!』


 そこでムーアも俺の考えている事を察してくる。口臭ブレスは、装備を腐食させてボロボロにさせるくらいに危険である。しかし、精霊化している俺にダメージを与える事は出来ず、ただ強い刺激臭でしかない。

 事前に口臭ブレスが来る事が分かっていれば十分に対応も出来る。そして近付く事さえ出来れば、どこにロードの魔石があるかも知り尽くしている。


『でも、ロードの接近戦の強さについては未知でしょ。ゴブリンやハーピーだって、ロードは超武闘派なんだから、返り討ちに合うかもしれないわよ』


「それも心配ない。ウィプス達にサンダーストームを浴びせてもらえれば、ロードは自由に動けない」


『そこで、光るだけの短剣の出番になるの?』


「そういう事だ。マジックナイフで攻撃を仕掛けるが、この光るだけの短剣をダミーに見せてやれば、守護者特効武器の誕生になる。どうかな?」


『そうね、この時点でケイヌに真似出来ると思わせるには、解決すべき問題点は2つね』


 1つ目は、接近戦を仕掛けた時のキングの口臭ブレス攻撃。これを無効化させたように見せる必要がある。

 2つ目は、ロードに浴びせるウィプス達のサンダーストーム。これも、雷属性の攻撃が有効だと教えなければならないが、進化したウィプスだからこそ可能な攻撃だと思われてはならない。


「完璧ではないけれど、悪くはないだろ?」


『そうね、やってみる価値はあるわね』

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