第93話.ハーピーロードと飛べないハーピー
ハーピークイーンを守るため、襲いかかってくるハーピーとキャプテン。特に連携する事なく、ただひたすらに特効してくる。
ウィプス達やダークは、ハーピーを空から落とす事を優先している。姿が消滅する事なく地上へと落とし、大半は落下の衝撃で消滅する。
ハーピージェネラルに掴まれて連れ去られるクイーンを眺めていると、再びクオンが接近する気配を探知する。
“速い、何か来る”
小さな点がこちらに向かってくるのは分かる。
「カショウ、リッターを出してもらってもイイかい?」
ナレッジの呼び掛けで、光の精霊リッターを召喚すると2つの光る塊となって現れる。一体一体は蛍のような虫の形をしているが、それが数十匹と集まっている。
「今呼び出せるリッターを2つに分けて、索敵させるよ」
身体の小さなリッターだが、その分回復も早いみたいだ。
「ナレッジの方は大丈夫なのか?」
「僕は大丈夫だよ。全てを見る訳じゃないからね。だけど心配してくれなら、手伝ってくれる精霊と契約してよね」
「分かったよ、考えておくよ」
ナレッジが光の精霊の視界をモニターし、必要な情報を伝えてくれる。クイーンに近付く黒い影の飛ぶ速度は速い。もしかすると、近接戦闘の得意なルークよりも速いかもしれない。
「それまでに、残り少ないハーピーを片付けよう」
慌ててソースイがスリングに持ちかえ、ハーピーに攻撃を始める。ハーピー達は残り少なくなっているが、逃げる様子は見られない。
空を飛ぶハーピーが全て地上に落とされ殲滅に近い状態になった頃、ナレッジが俺の頭の中に映像を送ってくる。
「この黒いハーピーは、ロードで間違いないよね?」
身体から翼までが真っ黒で、唯一色が違うのは魔物である証拠の紅い目だけ。ジェネラルとクイーンの前に立ち塞がると、叫び声と共に翼を大きく広げる。
その瞬間、ジェネラルの身体から血が吹き出し、クイーンを掴んだまま地上へと落下を始める。落下の途中でジェネラルの身体の消滅が始まり、それを確認するとロードは急降下してクイーンを趾で掴まえる。
最後にこちらを見て叫び声を上げると、岩峰へと向かって飛び去って行く。
「クイーンは飛べないハーピーなのか。飛べないハーピーは、ただの・・・」
『ただの何?』
「ただの豚だな」
戦いの終わりが見えた頃に、蟲人は少しずつ高度を下げ遂には地面に降りて座り込んでしまう。それを見たホーソンが、蟲人に駆け寄って行く。
「やっぱり、チェンですか?」
「やっぱり、あのイカれたストーンアローはホーソンか」
「助けたのに、イカれたはないでしょ」
「ふざけたストーンアローのお陰で助けが来た事が分かったから、イカれたストーンアローには感謝してるよ」
ホーソンと蟲人は知り合いで、それも仲は悪くなさそうだ。
「ホーソン、知り合いだったのか?」
「ええ、私はイスイで育ったので知り合いはいます。チェンはその中でも幼なじみの1人です」
ホーソンが蟲人達に、俺達の説明をする。迷い人である事や精霊を探して旅をしている事、タカオの街がハーピーに襲われた事を話する。タカオの街が襲われた事には少し表情を変えたが、ある程度は想像していたみたいだ。
「はやり、タカオの街で異変が起きていましたか」
「何故、異変に気付いた?」
「ここ数日、タカオの街からの隊商や旅人が来ていません。だから、こうやって調査をしていたんです」
「そうか、それなら話が早いな」
光る玉を取り出し、蟲人達に見せる。光の精霊リヒトの魔法を吸収した光る玉。光るだけではあるが、少なくても鉱山にある時から今まで変わらずに光り続けている。
「この光る玉がハーピー達の行動範囲を広げる。そして次に狙われるのはイスイの街じゃないかと思う。そして、この玉が見つかったのはドワーフ達の鉱山の中から!」
流石にこの事には動揺を見せる蟲人達。
「この光る玉を持っていけば証拠になると思う。ハーピー達の襲撃に備えて欲しい」
「あなた達はどうするのですか?」
「少しハーピークイーンに用事があるから、それを済ませてくる」
「イスイの街まで一緒に来て頂ければ、協力して行動する事も可能です。あなた達だけでは危険が多すぎます」
「今、俺達は岩峰の街道を抜けてきたし、少人数の俺達にだからこそ出来る事もある」
ホーソンも頷き、俺の言葉を肯定する。
「そうですね、足を引っ張るだけですね。分かりました、この玉は責任を持ってイスイの待ちへと届けます」
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