第14話.精霊の成長と進化
『さて、依頼を受けると決まったなら名付けしておくれ』
意外に名前を付ける事は大変だと思う。その人のセンス次第で、性格や趣味・思考など頭の中を覗かれたような気分になる。
ソーギョクやソーショウも、俺を見ている。そんなに簡単に名前なんて出てこないと思うご、考える時間が無いだけにその人のセンスが顕著に表れるのかもしれない。
「“ムーア”っ名前はどうだ?」
『“ムーア”ね、なかなか良い響きね。気に入ったわ。契約成立ね!』
その瞬間、ローブの下から光が漏れる。隠れていたルーク達がローブから出てくる。
『安心して良いわよ。貴方達の繋がりが、より強くなった証よ』
光が少しずつ収まっていく。そしてそこに現れたのは、形を変えたウィスプ達。5㎝くらいの大きさまでに成長し、二頭身でデフォルメされた姿。
ルークは、槍を持ったナイト
メーンは、弓を持ったアーチャー
カンテは、杖を持ったウィザード
俺の周りで、鬼ごっこのようにして能力を試すように飛び回るが、前よりも遥かに飛ぶスピードは上がっている。
クオンは影から出てこないが、何らかの変化はあるはず。
『私はこれで休ませてもらうわよ。尋問でもしたくなったら、いつでも呼んでちょうだい』
ムーアはドヤ顔を見せて姿を消す。
依頼を受けると決まったら、早速今後の対応に話が移る。といってもソーキは退場し、ソーギョクとソーショウ、俺の3人のみ。
現在の場所は湖の南側で、ゴブリンが居ると思われる場所は湖の西側になる。
今となれば、ゴブリンを逃がしたのが悔やまれる。ゴブリンは確実に罠をはって待ち構えているはず。草むらに隠れていた目立たなくなるゴブリンと、目立ちすぎるオニ達。
元々魔法などのスキルに恵まれていない上に、大きな体格では索敵には不向き。だから探知の出来る俺に依頼というか、巻き込まれた訳だが・・・。
「ゴブリンを逃がしてしまった。今からでも索敵に出ようと思うが、そちらはどうする?」
「ソーギョク様は強行軍で来ている。今日はここで夜営になる」
「明け方までに戻るから、それまでは別行動で大丈夫か?」
「誰か付けても足を引っ張るだけで、カショウ一人の方が安全なのだろう」
「はっきり言えば、俺はその方が動き易いな」
俺とソーショウの会話を聞いて、ソーギョクが腰の短剣を差し出す。
「ソーキを助けてくれた報酬の火オニの短剣だ。森では火属性は、なかなか使い勝手が悪いが、何かあった時の連絡手段には使える。特に夜には役立つ」
俺はソーギョクから短剣を受け取り、腰の後ろに差す。
「湖の周りの草むらに沿って西側に向かう。何かあれば合図を送る」
オニ達から離れるとクオンが影から出てくる。見た感じの変化はなさそうだったが、急に姿形が変わる。
そこに現れたのは、ネコ耳の少女。
「私も貴方と同じ黒髪よ、よろしくねご主人様」
そう言うと再び黒ネコの姿に戻る。
“人の姿は疲れるから普段はこの姿だけどね”
ルーク達が二頭身の人型になったから、クオンもと考えていたが、やはり成長している。
そして、クオンの先導で森の中を進む。森から出てしまうと、ゴブリンに見つかる可能性がある為、ある程度中に入って進む。
クオンの探知範囲も間違いなく広がっている。耳が動いたり立ち止まる回数が減り、ここが安全圏内と分かっている。
“まだ距離はあるけど、ゴブリンの見張りがいる”
「クオン、オニ達の気配は分かるか?」
“盾を持ったオニが、後を追い掛けて来てる。途中で止まってる。影から出ていれば気配は分かるけど、影の中なら難しい”
「クオン、悪いけどゴブリンやオニ達が居る時は、影に潜ってくれ。周りは探知の役割はルーク達だと思っているから、なるべくクオンの存在は隠したい!」
“知らない人の前には出たくないし、それで大丈夫“
クオンとこれからの確認をしていると、そこにムーアが現れる。
『私を忘れてるんじゃない。貴方の魔力は、なかなか濃厚ね。精霊達もかなり強くなってるんじゃない!私と契約して良かったでしょ』
「まあ、強くなってるのは確か。これ以上はムーアの手助けは借りないから大丈夫」
『おかしいわね。もっと頼りにされてもイイはずよ!
』
少しノリノリなムードに、嫌な予感がする。
「もうこれで十分です。大変、満足してます。ありがとうございます」
『何だか嫌そうなんだけど、気のせいかしら?精霊との信頼関係は大切よ!』
「大変リスペクトしております。これ以上は、お手を煩わせませんので安心して下さい」
『私が戦闘出来ないと思ってるの?』
「そういう契約はしてないはずです」
『契約する条件が依頼を受ける事で、契約したら貴方と私は一心同体じゃない。何でもしてあげるわよ、魔力次第ね♪』
「今は索敵とか戦闘な···」
食い気味でムーアが、俺に全てを言わせない。
『私は酒の精霊よ!士気高揚、狂喜乱舞、酔眼朦朧、支援魔法は得意よ、なめてもらっちゃ困るわ!』
「ちょっとピーキー過ぎて俺には扱えないかも?士気高揚が少し行き過ぎると、狂喜乱舞になるんじゃ・・・」
少し間が空いて、ムーアが答える。
『制御には自信があるから、騙されたと思ってまず使ってみなさい♪』
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