第3話 変態のレッテルと母心(1)
幼女の身体を愛撫している変態。
それが客観的に見た俺の印象だろう。
オカマとギャルの二人の目には犯罪者を見るような、侮蔑の感情が込められている。
「違う!そうじゃないから!ってか、信じられんかもしれないが、この子神様らしいから!ほら、コン説明してくれ!」
死に物狂いで反論しなければ、俺は変態のレッテルと、警察のお世話になる事間違いなしだろう。
逆に必死に説明したせいで余計に怪しく見えたかもしれないが、実際はそんなことを気にしている余裕はない。
何せ人生がかかってるのだから。
コンに説明を求めつつ、何とか引きはがす事に成功すると、そのまま二人が立っている境内の入口の方へとコンの背中を押しながら近づいていく。
「四季ちゃん…流石にそれは、厳しいわ…」
オカマこと笹原
近くで改めて見てみるとめちゃくちゃデカいなこいつ…。
身長百八十センチはあるその巨体と、厚ぼったい唇。
キリっとした切れ長の整った眉毛と、シャープな一重
頬骨は無骨ながらも整った顔立ちをしており、汗で少し崩れてはいるがメイクによって顔の彫りをより強調した印象を受ける。
さらっとした髪質のハイライトデザインのベージュカラーで、薄い栗色の髪の毛を外ハネにした今風のショートヘアー。
前髪は七三分けにしているが、自然なウェーブがかかっており、ふんわりと軽い印象を受ける。
筋骨隆々で大胸筋が大きく隆起しており、着ているピンク色のワイシャツがパツンパツンに張り付いている。
シャツに合わせたパンツは黒地のスキニーパンツだが、所々にデザインとして金の糸で花柄の刺繍が入っている。
ぴっちりとしたパンツもその逞しい丸太の様な大腿筋を浮かび上がらせており、本来なら丈長のはずのそれも、実質七分丈の様になっていた。
先ほど転んだのか、黒地のパンツには所々土が付いて汚れており、一部は破れてその逞しいおみ足が覗いており、ダメージジーンズの様になっていた。
そんな大男がこちらを威嚇しながら睨みつけているのと同時に、もう一方はマイペースに前髪をくるくると指に巻き付けて、スマホを見ながらこちらを観察している様子だ。
マイペースに観察を続けるダルそうなギャルこと、森山花奈。
身長は大体百四十センチ前後。
隣の大男と並ぶと余計に小さく見える。
ミルクティーベージュの髪色のミディアムヘアー、インナーカラーにはネイビーブルーのラインが入っており、頭の両サイドに髪の毛を纏めたお団子を二つ貼り付けている。
前髪は眉毛の上で切り揃えられたぱっつんスタイルで、顔のサイドラインを覆い隠す様に頭頂部から二、三本顎の下くらいまで長めの毛束が伸びていて、その部分の色だけ発色の良い朱色が入っている。
小顔で少し丸っこい顎のラインと、鼻筋は幼さを残している。
瞳にはカラコンが入っていて、まつ毛はピンと長く伸びていた。
上はダボっとした大き目の黒いメッシュ付きパーカーで、前側のジッパーを開いており、その中から身体のラインを覆い隠すようなフリル地の白いブラウスが見え隠れする。
下はスキニーデニムを履いており、足の曲線がしなやかに浮き上がっている。
同じタイトのはずが、樹のものとは打って変わって、あちらが強調するような印象を与えるとすれば、こちらは華奢な印象を抱く。
女性らしく細くピンと伸びた脚先にはキャラメル色のショートブーツ。
足元の無骨さが全体の服装と相まって、よりラインの細さをアピールしていて不思議と違和感を感じなかった。
「ていうかーその娘めっちゃ可愛いじゃーん写真とろーぱしゃ!」
ダルそうにスマホを構えると、 ぴろりん♪と軽快な音が鳴って写真を撮られる。
しかし、写真の出来に納得できなかったのか、表情を曇らせスマホを仕舞った。
「なんかー…ボケてて変な感じーぃ!」
我関せず、という感じで相変わらずマイペースな奴だ。
「その…コン?ちょっとこいつらに説明してやってくれない?」
業を煮やしてコンの方に助け船を求めるも、コンはパッと立ち上がり、踵を返す。
「母様!」
そう言って本殿の奥の方に向かって走っていく。
「ちょっと、あなたどこ行くの…?」
樹がそう言って声をかけると、皆の視線がそちらに向かう。
本殿の奥のミニ社の方、先程まで自分が掃除していた所のすぐ脇に置いてあった燭台には何故か青白い色の火が灯っており、風も無いのにゆらゆらと揺らめいている。
先程まで聞こえていたはずの虫の声や風の音が不自然にピタリと止まった。
コンはまっすぐにミニ社の裏の方へと走って行くと呑気に「母様~」と、ニコニコ笑っている。
「ちょっと、どういう事よ?」
異変に気付いたのはオカマ。
「なんか~空気が変な感じ~」
次いでギャル。
「おい、コン頼むって、説明してくれよ!」
俺がそう言うと、奥の方から声が聞こえてきた。
「娘が粗相を致しまして、大変申し訳ございません。それについては私の方から説明させて頂きます」
凛と鳴り響く鈴の様な透き通った声。
コンに引っ張られる様にミニ社の裏の方からその人は歩み出てきた。
まず目に着くのはその美貌だろうか。
色白の肌に朱色の隈取の様なラインがうっすらと引かれていて、キリっと切れ長の瞳には吸い込まれそうな印象を受ける。
顔の作り自体はコンによく似ており、そのまま成長して大人になればこんな感じだろうか?といった印象を受ける。
コンの巫女服に似たデザインの着物を着ていてるが、胸の部分は女性らしく膨らんでおり、今にも零れ落ちそうである。
髪の色素は黄金色に輝くコンに対してこちらはどちらかといえば白に近い金髪といったところだろうか。
頭頂部にはコンと同じくピンと尖った耳ケモミミが付いており、ぴこぴこと揺れ動いていて、背中の方にはコンの物よりも大きく存在感のあるふさふさの尻尾が、ゆらり、ゆらりと静かに揺れていた。
「んな!?」
これには相当驚いた。
先程までは確かに誰も居なかったし、何もなかった。
これは間違いない。
この美人さんがわざわざミニ社の裏に身を潜めてかくれんぼでもしていない限り、そんなはずはあり得なかった。
というか、コンの時点でおかしいのは間違いないのだがとにかく次から次へと不思議なことが起こり過ぎてもはや麻痺してしまった。
「申し遅れました、私は
久那妓と名乗るその女性は無邪気にじゃれつくコンを「これこれ…」と片手でいなし、こちらに向き直ると一礼してから歩み寄ってきた。
「母様~!」
尚も無邪気にじゃれあうコンに、久那妓さんは「全く、仕方のない子ね…」と、慈愛に満ちた表情を向けて、コンを抱き寄せると、よしよしと頭を撫でている。
コンの方も身を委ね、ぐりぐりと顔を押し付けされるがままになっていた。
そんな状況下で久那妓さんはコホンと咳払いをすると、改めてこちらに視線を向け一礼すると口を開いた。
「突然の事で理解し難いとは思います。ですが、どうかそのようなモノであると納得していただけると幸いです」
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