「最近、この国に妙な連中がいるらしくてね」

　魔法使いかつ郵便屋である彼女は、町と町の間をほうきで飛び回る。だからこそ、彼女の元には、この国のいろいろな情報が集まるのだ。

「……妙な連中？」

「そう。なんでも、『戦花の魔女』を捕まえようとしているんだとか」

　彼女の言葉に、私の体がピクリと反応する。

　私を……捕まえる……？

　一瞬、ついこの間会った旅の魔女が思い浮かんだ。だが、きっとあの子は無関係だろう。あの子は、『戦花の魔女』と勝負をしたがっていただけで、捕まえようとはしていなかったからだ。

「……私を捕まえてどうするの？」

「それは分からないけど。……まあ、多分、報復じゃないかな？」

「報復？」

「昔、戦争で痛手を負わされたから……とか。あくまで予想だけど」

　神妙な顔でそう告げる彼女。私のことを本気で心配してくれているのが分かる。からかい好きの彼女だが、こういったことに関しては絶対にからかったりしない。むしろ、自分のことのように真面目になる。だからこそ、私は、彼女を信頼しているのだ。

「戦争の報復……か。可能性は高いかも」

「……あの頃と比べたら、魔女ちゃんはずいぶん変わったよね」

「そう？」

「そうだよ。弟子ちゃんのおかげだね」

「弟子君のおかげ……」

　頭の中に、弟子君の姿が現れる。溜息を吐きながらも私のわがままに付き合ってくれる弟子君。お菓子の盗み食いをした私を真剣に叱る弟子君。温かい笑顔でシチューの入った鍋をかき混ぜる弟子君。

「魔女ちゃん、今、弟子ちゃんのこと考えてるでしょ」

「……へ！？」

　気が付くと、彼女が、私を見ながらニヤニヤと笑っていた。

　ど、どうしてばれたんだろう？

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