第66話 本当にもうその通りでございます
「作るお菓子はクッキー! よーい、スタート!」
師匠の掛け声が、キッチンに響きました。
「お弟子さん、負けませんよ!」
僕に向かってビシッと人差し指を向けながら、旅人さんはそう宣言しました。
僕たちの目の前には、バターや卵、砂糖などなど、クッキーの材料が並べられています。旅人さんは、慣れた手つきでバターを手に取り、ボウルの中へ。そして、同じボウルに砂糖を入れ、丁寧に混ぜ始めました。
「旅人さん。もしかして、料理得意なんですか?」
「はい。パ……師匠のお墨付きももらってるんですよ」
「……そうなんですね。どこかの誰かさんとは大違いです」
僕は、精一杯のジト目を師匠に向けます。僕と目が合った師匠は、気まずそうに視線をそらしました。
「さて、僕も作り始めないとですね」
そう呟いて、僕も調理を開始しました。
といいますか、どうして僕はこんなことをしているのでしょうか。別に、師匠の提案を断ることだってできたはずなんですが。いつの間にか、師匠の言われるがままになってしまっています。そういえば、昔、郵便屋さんが、「弟子ちゃんは、魔女ちゃんに甘すぎるよね」と言っていましたっけ。本当にもうその通りでございます。これも惚れた弱みってやつですよ。
調理を進める僕と旅人さん。普段、僕ばかりが使うキッチン。今日、そこには、いつもとは全く違う雰囲気が漂っていました。
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