第55話
ようやくルネッサ様を捕まえる事が出来て、やっと家庭教師として仕事を出来るようになります。
さて、まだお昼前なので軽くルネッサ様の学力を確認しましょう。
「……わからねぇ」
「ではこちらの問題はどうですか?」
「……なんだこれ」
「そうしたらこれはどうですか?」
「三十六?」
「四十九です」
これは困りました。
ルネッサ様の学力は十四歳とは思えないものです。
教科書に書かれている年齢別の内容を見ると、ルネッサ様の学力は八歳程度……これはいけません、あと二年で学園に入るのに、このままでは付いていけません。
まずはどこまで理解しているのか確認しなくては。
「お昼からは確認問題をやりましょう。それに合わせて内容を変えていきます」
ルネッサ様は不機嫌そうな顔をしていますが、今まで長い間勉強を拒否していたのですから、これからは真面目にして頂かなくては。
お昼をいただき、逃がさないようにデザート後は直ぐに腕につかまります。
困ったような顔で私を見ますが、逃げられたら私の方が困ってしまいますからね。
一通りの科目の確認テストを受けてもらい、大体の学力がわかりました。
得意なものは十歳程度、苦手なものは七歳程度の様です。
では得意な科目を年齢相当まで進める事を優先しましょう。
勉強に対して苦手意識を持たれるわけにはいけませんからね。
それから一ヶ月ほどは順調に(たまに逃げ出しましたが)勉強が進みました。
やっぱり人は褒められるとヤル気を出してくれますね。
結構な詰込み学習でしたが、得意科目は十一歳まで進みました。
明日からは得意科目の割合を減らし、他の科目を進めましょう。
二か月が過ぎたあたりになると、ルネッサ様は予習復習をやるようになりました。
以前の様に逃げ出す事も無くなり、勉強への苦手意識や義務感が無くなったようです。
ですが以前から気になっていましたが、食事の時以外ではルネッサ様とレパード様が会話をしている所を見たことがありません。
根本的な理由はここにあるんでしょう。
「今日は一日中雨が降っていますね」
午前中の勉強をしていますが、ずっと強い雨が降っていてランタンを付けないと暗い。
外に出かける予定はありませんが、何故か出かける予定がなかったかと考えてしまいます。
「明日まで雨が続くんじゃないか? 遠くまで黒い雲に覆われてるからな」
勉強をしながら雑談が出来ています!
しかもしっかりと問題を解きながら! 凄い進歩です!
と、感動していると正面玄関から大きな声が聞こえてきます。
「えーいクソ! 雨で書類が濡れてしまった!」
どうやらレパード様の様ですが、この雨で書類が濡れてしまったようです。
インクがにじむといけないので、早くタオルで水気を取り乾かさないと。
それはわかっているようで、
ですが問題は昼食時に起きました。
どうやら書類の何枚かは読めなくなった様で、作り直しをしているようです。
なのでレパード様のご機嫌がとてもナナメです。
「おいルネッサ、勉強は進んでいるのか!」
「え、ええ進んでいます」
「今日は何をやっている!」
「エルグランド王国の歴史を」
「ふん! もっともっと勉強をしろ! 今まで遊び惚けていたんだからな!」
いけません! やる気を出し始めたルネッサ様にそれは禁句です!
「レパード様、ルネッサ様の勉強は私に任せて下さるようにと……ルネッサ様!」
ルネッサ様が乱暴に立ち上がって食堂から走り去ってしまいました。
それを見たレパード様は最初こそ驚いていましたが、すぐに不貞腐れたように席に座り食事を再開します。
私はお辞儀をしてすぐにルネッサ様を追いかけます。
部屋に戻ったのかしら? いません。
まさか書斎に? 違いました。
この時間は他の使用人たちも食事をしているため、ルネッサ様を見た人が全然いません。
屋敷内を探したけどどこにも見当たらない。
この雨の中を出てしまったのかしら……だとしたら早く追いかけないと!
傘を持って外に出ると、う、凄い雨だわ、それに風も強い。
こんな中をルネッサ様は出て行ったんだとしたら、速く連れ戻さないと!
街の人に聞こうとしますが、すでに屋台は片付けられ、お店に入ってもこの雨では誰が通ったかなんてわかりません。
「ルネッサ様ー! どちらにいらっしゃいますかー!」
何時間か探しましたがどこにも見当たりません。
寒い……濡れた体に風が当たって体温が奪われる。
でもルネッサ様も寒くて震えているかもしれません、急がないと!
しかし見つからず、もうお店も暗くなり街灯だけが道を照らしています。
私がお屋敷を出た後、何人かのメイドも一緒に探してくれましたが見つかりません。
メイド達は他の仕事があるので戻りましたが、ああ……こう暗くては見つける事も出来ません……ね。
いちど……もどって体制を整えて……あれ、傘はどこ……
お屋敷に戻ると沢山の人が出迎えてくれた。
どうやらルネッサ様は物置に隠れていたみたいで、夕食前には出てきたんだとか。
ああ、よかった……寒さで凍える事は……なかったん……ですね。
「ごめん、お前が一人で探しに行くなんて思わなくって」
「ルネッサ様 お怪我は ありませんか?」
「大丈夫。大丈夫か?」
「はい わたしは 」
私は意識を失いました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます