第14話 やはり剣術だけではダメだ

俺は地竜と肉弾戦を10分は繰り広げていた。


タチの悪いことに地竜は他の魔物と違って長期戦が得意だ。


動物や魔物の多くが舌や一部でしか皮膚呼吸できないのに対して人間は全身で皮膚呼吸ができる。長期戦は人間の得意分野だ。


弱い人間が魔法がまだ確立していなかった時代。


人は頭脳とこの長期戦闘能力で戦って来た。


魔物や動物が動かない昼間動く。


昼間は気温が上昇して動物や魔物は長時間の激しい動きはできない。


これに対して人間は全速力でも1時間も2時間も走ることができる。


数十メートルの距離で昼間、肉食の動物や魔物に見つかったらまず命はない。


だが、数百メートルなら走って逃げ切ることが可能なのだ。


動物も魔物も昼間は数十秒しか全力で走ることができない。


しかし、竜種は太古の頃、鳥と枝分かれして鳥と竜になった。


鳥も長時間空を飛ぶために全身呼吸ができる。


それどころではない。


鳥も竜も空気を吸っている時も吐いて、吐いている時も吸うことができる。


呼吸の吸うと吐くという動作を同時に行っているのだ。


従って。


長期戦は人の方が不利。


俺は10分も戦い、全身汗まみれになっていた。


だが、いまだに決着がつかない。


久しぶりに俺の蹴りがクリーンヒットした。


地竜が足元の石につまずいて転ぶ。


今がチャンスだ!


俺はこの瞬間に剣の落ちている所に素早く移動して剣を拾う。


そして!


「我が剣は無限なり! 我が剣に勝るものなし!」


武術言語を唱えると剣で切り掛かった。


あれ程苦戦した地竜に容易に手傷を負わせることができる。


それまで他人の手足だったようなものが、自分のものとして感じることができる。


剣術のスキルの効果を初めて実感できた。


そして、弱った地竜に止めをさす。


止めを刺された地竜は消えて行き、魔石と解毒薬をドロップした。


解毒薬はありがたい。


万が一毒の魔物や毒を持つ植物で怪我をしたら回復の手段がない。


エリクシールは怪我やHPは回復してくれるが毒の解毒はしてくれない。


俺は解毒薬を拾うと服を破いて紐を作り、自分にくくりつけた。


俺は囚人用の粗末な布の服だけで袋も何も収納するものを持っていなかった。


剣を持つと事実上何も持つことができない。


それで服にエリクシールやポーションを縛りつけていた。


俺は小川に入って汗を流したいと言う欲求を排除して先を急いだ。


目指すは階層主の場所だ。


剣を肌身離さず持つようになったのは言うまでもない。


地竜を20匹程倒したが、剣で戦うと容易に倒すことが出来た。


遠距離から発見した場合、巫術だけでも勝てた。


突然接敵して剣を落としたりしなければ今の俺の敵ではない。


そこで俺は考えた。


次にとるスキルは加速を考えていたのだが、器用強化か体術強化の方がいいのではないか?


さっきの剣なしの戦いで痛感した。


剣が無いと、途端弱くなる。


拳と蹴りだけでも俺のステータスならそこそこ出来るんじゃ無いだろうか?


上手く行かないのは器用さか体術のスキルがないからではないか?


器用さは盗賊やレンジャーに必須のステータスだと聞いたことがある。


剣術や格闘戦だとどうなるか?


俺は次に取るスキルを器用強化か体術かで迷った。


結論が出ない内に発見してしまった。


階層主の部屋に。


それは青い空の下にあったダンジョンの出入り口のような場所だった。


階層主がいると思ったのは扉があり、階層主がいることを示す赤い扉だったからだ。


俺はゆっくりと扉を開けた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る