女性の身体におじさんが転生、というのは割と話の仕掛けの部分でしかないというか、本質はそこじゃないので安心してお読み下さい。本当に。
他レビューで「タイトルで避けないで」というのがあってそれで読み始めたのですが大正解でした。
・冒険者になって
・強い能力を持ってて
・仲間たちも一緒に成長して
・強い先輩方と出会って
・旅先で新たな仲間が加わって
・大きな手柄を評価されて出世して
・ひょんなことから地位を手に入れて
・でも気軽にあちこち冒険して
・時には国や町を救って
・身分を明かさず水戸黄門してみたりして
そういう「読みたかったファンタジー小説」に長く浸れます。
個人的には、この「異性アバター設定」によって
・おじさん精神が前提となっていることで作者の自然体のまま書きやすい
・主観的な恋愛要素を大幅に避けられるので冒険からシナリオがぶれにくい
……といった辺りが機能していて、非常に良い仕組みだなー、と。
チキンライスのオムライスにカレーソースはかけないで欲しい派なので、冒険物語が逸れやすい恋愛要素って時に大きな邪魔になるんですよね。
そういったものに最初から軽減・無効化のギフトがあるようなものなんで、没入感が剥がれにくい。ファンタジーと相性のいい発明で羨ましい。
毎回がちょうど良い長さで更新されていて、デイリー更新で2年近く続けてるのも異常だとは思いつつ、でもそれに比べてこの星の数と作品フォロワー数は作品の質からすると非常に物足りない数値です。
あと最低3倍ぐらい評価されてほしい。
ゲーム的処理の無いソーズ・アンド・ソーサリーな世界でのんびり冒険者していくお話。
展開はスローペースなれど文体が平易で読みやすく、主人公の価値観・倫理観が現代日本在住一般社会人のそれなので共感しやすい。世界最高峰の力と美貌を突然持たされた小市民おじさんの戸惑いとの慣熟、おいしいです。
数値化された能力値やわかりやすいスキル制が存在しないため、とっつきやすさには難があるかも。やや古め(1990年代前後)のファンタジー小説やライトノベルの雰囲気が好きな方には向いてそう。
キャッチーさという点では元おじさんな主人公がナイスバディダークエルフにTS転生(でもセクシャルな描写ほぼ無し)がメインの売りなのでわりと人を選ぶ。
逆ハーレム展開とか無くて大変落ち着いた(というか枯れてる? むしろ育つ土壌が出来てない??)感じなので、色恋方面のそういった要素に疲れたり辟易してる方にそっと差し出してみても良いのでは。
所々に血腥さを挟んで異世界倫理を学んでいく場面もあるものの、基本的には穏やかに歩んでいく物語。私は好きだよ。
くたびれた中年リーマンのおじさんがTS憑依転生した異世界のダークエルフの美女は底なしの体力と魔力を持つ世界最強でした。……という設定そのものは異世界モノではさほど目新しいものではない。
ただ、このまま俺TUEEE無双するかと思いきや、そうではないのがこの作品の面白いところ。
主人公のハルカはかなり気弱で臆病な性格であり、神様からの説明などのチュートリアルも無く、また身体の持ち主の記憶の引き継ぎも無い、まっさらな状態で森の中で1人でスタートすることになるので、最初は困惑し、ずっとオドオドしっぱなし。
やがて、自分の身体のスペックが相当高いことに気付くが、強さや名誉には全然関心がなく、安定した仕事に就いてコツコツ働いて目立たずひっそりと暮らしたいといういかにもおじさんな目標を心に抱くだけで、社会的身分を得るために冒険者に登録する。
しかし、本人は安定した目立たない生活を望んでいても、ハイスペックなハルカを周りが放っておくはずもなく、同じ日にたまたま冒険者の新人講習を受けた3人の少年少女に誘われてパーティを組むことになり、なし崩し的に危険な冒険者稼業に身を投じることになる。
最初は精神年齢的には親子ぐらい離れている仲間たちを保護者目線で見守っていたハルカだったが、次第に若い仲間たちに影響されて気弱で臆病な性格がだんだん積極的になり、冒険者としても人間的にも成長したいと願うようになり、振り回され気味だった力も制御できるようになり、名実共に一流の冒険者として大成していく! というのがあらすじだ。
だが、これはハルカという一人の人物のサクセスストーリーではない。仲間たちもまた、それぞれに壁にぶつかり、葛藤し、努力し、壁を乗り越えて成長していく。
これはハルカ、アルベルト、コリン、モンタナ、ユーリ、レジーナ……パーティメンバーの一人一人の成長と生き様を描く青春群像劇なのだ。
美人でチートボディーのダークエルフの中身は典型的日本人な性格のおじさんサラリーマン。
設定自体はTS異世界転生物としてあまり物珍しさはありませんが
丁寧な心理描写と魅力的な登場人物、マイルドな展開と優しい文章表現等々
多様な要素が加わる事で、切った張ったな世界観にも拘らず
この作品ならではの持ち味とも言える穏やかで牧歌的な雰囲気を作り出すことに成功しています。
更新間隔も短いので、日々のスキマ時間に更新分を軽く読みたい!でもあまり重い話や暗い展開はちょっと…という方には特におススメな作品。
おじさんがある時は悩みながら、ある時は仲間に活を入れられながらも、勇気を出して一歩一歩進んでいく様をほっこりしながら見守っていきましょう。
TS要素や最強のタグやタイトルでこの作品をスキップしようとしているそこのあなた!
ためしに五、十話読んでみてください(*^^)v
それだけ読めば、この作品の内容が他と一味違うことがわかると思います。表現力が豊かで(私のこの文とは違って)、数百話書いているのにも関わらず、マンネリ化せず、キャラの設計がしっかりしていて全く飽きません。
正直この作品がなんで累計ランキングに入っていないのかわからないくらいです。累計ランキングの作品も拝読しましたが、そちらに引けを取りません。
二度も言いますが、どうかタグやタイトルで避けないでください。私はこの作品をみなさんに読んでもらいたいと心の底から思い、レビューしましたが、他にしたことはありません。本当に登場人物の心情が巧みに描かれていて、ほのぼの系や恋愛系にありがちなマンネリやループも一切なく、すいすい読めちゃいます。
拙い文でお目汚し失礼しました。m(_ _)m