レトロ雑貨店『サテン・ドール』の怪奇目録

作者 鉈手ココ

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★★★ Excellent!!!

元声優の次の職場は不思議な雑貨店!?
という感じでオカルト×お仕事モノ、まったりほのぼの超良い小説です。

主人公:上原ありすは不幸体質の元声優。夢の仕事と頑張っていましたが度重なる不運についに心が折れ、会社の倒産と共に業界を去ります。そんな失業初日からスピード展開! 謎の陰、謎の男、謎の人形と遭遇。そして、自分に人形の声が聞こえることに気付くのです。すわ幻聴か、ストレスか。悩みつつも人形に振り回されるまま辿り着いたのが、物語の舞台となるレトロ雑貨店「サロン・ドール」。そこで昨晩会った謎の男、店主:岩佐柚弘と再会。その後、ひょんなことからそこで働くことになる。大体そんなあらすじ。

読んでいて気持ちがいいんです! 主人公は失望や悲しみの中にある状態で始まるわけですが、その心のささくれに寄り添うような文章で、とてもホッとします。古びた雑貨店のいい感じっぷりも堪らない。まるで精巧な手のひら大のミニチュアを、上からしげしげと眺めてるかのような、楽しくて静かな気分。店内の様子も、そこにあるモノ達も会話も、みんなガラスケースにいれて飾りたいような素晴らしい描写の数々。

物語にも作者様の妙味が光ります。主人公のモノの声が聞こえるという能力から、雑貨店の愉快な面子との交流がお話の大きな要素の一つとなるわけですが、これがとても自然で我々の普段の日常の延長のように読める。不思議なことをまるで違和感のないまま読み進められ、モノに感情移入しドラマに没入できる、考えてみればこれ自体が不思議な体験です。それを可能としているのが、雑貨店というお仕事モノとしてのディテール、そして血の通った等身大のキャラクター達ということでしょう。オカルト混じりでも、労働や誰かとの交流という普遍的な営みは変わりません。自分は日ごろ何がしたくて何をしているのか、と読書しながら我が身を省みる……でも悪い気分じゃない。穏や… 続きを読む