1-15 風神演舞





「セェヤアアアア!!!」


「「「「「「「グギャーーーーーーーーー」」」」」」」」


 ケンゴの拳撃により、大量のゴブリンやコボルト達が吹き飛んでいく。


 風の魔法の力により拳撃や蹴撃の範囲が倍以上になっているのだ。


「すごい、これが、魔法。」


 基本的にケンゴは己の四肢を使った技しか使えない。

 どんなに頑張ってもせいぜい手の届く距離の敵しか倒すことはできない。


 しかし風魔法の力を得た今、彼の攻撃は非常に広い範囲に影響を及ぼすことができるようになったのだ。


「ガウ!ガウ!」


「グギャア!!!!」


 周りを見渡せば、大量のモンスター達。


 新たな力を手に入れたとて、状況は全く変わっていない。


「風よ!!!!」


 ケンゴはウィルに手を翳し、そう唱えた。


 するとウィルの周囲のみに、強烈な風が発生し、敵や敵の飛び道具からウィルを守ってくれている。


「これでウィルさんは大丈夫だな、」


 ケンゴは再び四方を囲む大量の敵に意識を向ける。


「どこから崩すべきか、いや、ウィルさんは大丈夫だ、考える必要はない。」


 そう言った彼は足に力を入れて、真正面の敵の群れに切り込んだ。


「風神鉄扇脚!!!!」


 風を足に纏わせた跳び後ろ回し蹴りをゴブリンやコボルトの群れに叩き込む。


「「「「ギャーーーーー!!!!」」」」

「「「「ギャオーーーー!!!!」」」」


 彼の蹴りにより発生した突風に木々が暴れ、十体以上の敵が巻き込まれ、吹き飛んでいく。


「「「「グゲャアーーーーー!!!!」」」」


 その技の打ち終わりにホブゴブリンの群れが殺到する。


「ハァ!!!!」


 ケンゴは思い切り地面を殴る。


 するとケンゴを中心に爆発のような風が発生し、ホブゴブリン達を吹き飛ばした。


「いける!これならいける。」


 そこからケンゴは時に迫り来る敵を迎撃し、時に視界に入った群れに切り込んでいく。


「フッ!!!!」


「ハッ!!!!」


「セイ!!!!」


「ヤァ!!!!」


 大量の敵をまとめて屠るため、風を纏わせた腕は比較的大ぶりに、放り投げるように振るう。

 蹴り技も回し蹴りや後ろ回し蹴りなど、ダイナミックなものを多用する。


 時に捻りを入れ回転し、時に地面に手をつきブレイクダンスのような蹴り技も織り交ぜる。


 その姿は舞の如し。


 風の魔法を取り入れたケンゴの技。


「我流奥義、風神演舞!!!!」


 技を繰り出して少し頃。

 敵の数は大分減っていた。


「ガウ!!!!」


「ゲギャア!!!!」


「ゲゲゲゲーーーー!!!!」


 残った敵はケンゴに対し、矢や投石、魔法で攻撃し始めた。


「フン!!!!」


 それら全てを周囲にいた敵ごと裏拳で薙ぎ払うケンゴ。


「俺が飛び道具を使えないと思っているのか?


 ケンゴは両手の鋭い爪を立てる。


「ハァアアア!!!!」


 そして交互に振るった。

 ケンゴの手からはハクがかつてケンゴに使ったような風の刃が飛んだ。

 ただでさえハクの使った風の刃も巨大だったがケンゴの繰り出したそれはハクのものよりもさらに巨大でなおかつ鋭くなっていた。


「我流奥義、風神爪葬」


「「「「ギャギャギャーーーー!!!!」」」」

「「「「ギャン!!!!」」」」


 これまで以上に大量の敵が木々と共に切り裂かれて、絶命していった。


 さらにケンゴはそこで神室流の左構えをとる。

 そしてこれまで以上の風を右腕に纏わせた。


「次の技で道を切り開く。神室流奥義」


 街のある方向、そこに集まる敵を視界にとらえる、全てを薙ぎ倒すために。


「風神、螺旋大砲!!!!」


 神室流の正拳突きに捻りと風魔法を合わせたその技は、放たれたと同時に超巨大な横方向の竜巻に変化し、前方に展開する敵をまとめて飲み込んでいく。


「「「「グゲャァアアアア!!!!」」」」

「「「「ギャオオオオン!!!!」」」」

「「「「「グギャーーーー!!!!」」」」


 大量の敵が巻き込まれ、後に残ったのは竜巻に荒らされた森の木々とこと切れたモンスター立ちだけだった。



 ーーーーーーーー


 報告を受けたキースとリサは杖を持ったギルドマスターと一人の女性冒険者と共に森の中を走っていた。


(頼む!無事でいてくれ!)


 ウィルとケンゴの無事を願うキース。

 そこでギルドマスターが疑問を口に出す。


「おかしいね、獣害というほどのモンスターがいない。」


「!?確かに、、、、」


「どういうことなの?これは?」


 キースとリサは必死になって気が付かなかったが、森には危機感を覚えるほどの大量のモンスター達がいなかった。


 さらに進むと今度は何かに荒らされたような木々や砕かれ、切り裂かれたゴブリンやコボルトの死体が大量に目につくようになった。


「な、なんだよこれ、、、、」


「なにが起こってるの?」


 困惑するキースとリサ。

 先ほどから一言も喋っていなかった一人の女性冒険者が言葉を発した。


「多分いる、この獣害を収めたやばいモンスターか何かが、、、、」


「「「!?」」」


 その言葉にキースとリサとギルドマスターが絶句する。


「嘘だろ、それって、、、、」


「ああ、獣害よりもまずいね。」


 恐怖するキースに対し、いたって冷静に反応するギルドマスター。


 そしてしばらく荒れた森を進んだ時。ギルドマスターが言葉を発した。


「みんな、前方30メルほど先に2人の人間がいるよ。」


「え!!!!」


「それってまさか!!!!」


「・・・・」


 無言の女性冒険者に対し、2人は確信した。彼らしかいないと。

 やがて、30メルほど進み、ついに両者は出会った。


「「ケンゴ!!!!」」


「ケンゴくんだったのか、、、、」


「獣人?」


 声をかけたキースとリサに、白狼モードのケンゴが気づく。














 ☆ケンゴが使った神室流奥義☆


『我流奥義 風神演舞』


 風の魔法を纏った四肢を自由に振るい、大量の敵を葬る技。


『我流奥義 風神爪葬』


 白狼モードの爪から巨大な風の刃を飛ばす技。


『神室流奥義 風神螺旋大砲』


 大砲に捻りを加えた螺旋大砲に風の魔法を組み合わせた技。巨大な横方向への竜巻を発生させ、大量の敵を葬り去る。


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