1-11 コミュ障、圧倒
「グ、グッ!!!!」
「ギギ、ギギギ、、、、」
圧倒的な覇気を放つケンゴに気圧され、狼狽える槍ゴブリンと杖ゴブリン。
「ぁ、あぁ、」
「ひぃっ、、、、」
リサとキースもその覇気に当てられて恐怖の感情を露わにする。
ウィルにいたっては震えて一言も発せないでいた。
ケンゴはただ何も言わず、2体の出方を待つ。
「ギギ!」
「ギー!!!!」
大きな掛け声とともに一歩前に出て構える槍ゴブリン、そしてその後ろで杖を構える杖ゴブリン。
「ギギギ、ギギ、」
杖ゴブリンが何かを唱える、すると槍ゴブリンの長槍が風を纏った。
「グギャアアアアアアアアアアアアア!!!!」
気合いの感じられる掛け声とともに槍ゴブリンは槍を斜めに構えて突っ込んだきた。
初撃の薙ぎ払いをバックステップでかわすケンゴ。
さらに上からの叩きつけ、そこからバウンドさせての変則的な突き
それら全てをケンゴは華麗にかわして見せた。
風を纏っている分圧が増え、同時に斬撃の間合いも増えているが、ケンゴはそれでもも完璧にかわした。
「ギー!!!!」
攻撃は槍だけではない。
杖ゴブリンの風の弾丸による援護射撃も雨霰のように放たれた。
「フッ!!!!」
ケンゴは身を翻し、時にバック宙などを魅せながら華麗にかわしていく。
もちろん槍を交わすのも含めて。
「セイ!!!!」
「グギーーーー!!!!」
渾身の後ろ回し蹴りを放つケンゴ。
直撃はしなかったもののその威力は凄まじく、圧力だけで槍ゴブリンを大きく吹き飛ばす。
「グギギ、、、、」
「ギィイイ、、、、」
自分たちの渾身の攻撃が通じず、圧倒的な実力を見せつけられ狼狽える槍ゴブリンと杖ゴブリン。
(やっぱりだ、間違いない、風の魔法が見える。)
杖ゴブリンが展開する風の魔法の輪郭がケンゴにははっきりと見えていた。
「グギィ!!!!」
槍ゴブリンが何かを杖ゴブリンに叫ぶ。
「ギィイイイ!!!!」
答えた杖ゴブリンは持っている杖を捨て、比較的長い杖を2本取り出す。
杖というよりは短い棍棒のようだ。
「ギィ!!!!」
杖ゴブリンは2本の長杖を構えてケンゴに突っ込む。
「グギィ!!!!」
少し間隔をずらして槍ゴブリンも突っ込んでくる
何もせず構えたままのケンゴ。
「「ギィ!!!」」
杖ゴブリンが2本の棍を振るい。
タイミングをずらして槍ゴブリンが突きを繰り出す。
「フッ!!!!」
ケンゴは2本の棍棒をかわし、遅れてきた槍を掴む。
「でやぁあああ!!!!」
そして、その槍を操り、槍ゴブリンの腰を浮かし、回転させ、杖ゴブリンのほうに投げ飛ばす。
「グギャアアアア!!!!」
大きく距離を離され、地面に叩きつけられる槍ゴブリン。
杖ゴブリンは投げ飛ばされた槍ゴブリンを大きく後ろに飛んで避ける。
「ギー!!!!」
ただ避けるだけではなく飛びながら風の塊を2、3発放ってくる。
「フンッ!!!!」
ケンゴは腕を払うだけで3発全てをかき消す。
「グ、グギィ!!!!」
なんとか立ち上がった槍ゴブリンが叫ぶ。
「ギギィ!ギギギャァアアアアアアアアアア!!!!」
それに答えるように杖ゴブリンが叫ぶと槍ゴブリンの持つ槍に風がまとわりつく。
その風は先程まとわりついていたものよりも遥かに大きく、周囲の木々が靡いている。
「ギィィイイイイイイイイ!!!!」
とてつもない気合いを感じる雄叫びとともに槍ゴブリンが飛びかかってくる。
「フッ!ハッ!セイ!」
槍ゴブリンの猛攻を難なく捌いていくケンゴ。
「ギィ!ギッ!ギィ!」
「グギャア!!!!」
それでもめげずに攻撃を続ける槍ゴブリン。
杖ゴブリンも少し間隔を空けた攻撃を放ってくる。
絶妙な間隔の連撃でたたみかける2匹。
しかしケンゴは槍を左手でそらし、つまさきで鳩尾に蹴りを入れる。
「ゲフ!!!!」
そして次いで仕掛けてきた杖ゴブリンの2本の棍棒が交差したところを左手一本で止め、目にも止まらぬ速さの右拳を顔に叩き込む。
「ゲベェ!!!!」
「セイ!!!!」
そして流れるように杖ゴブリンを投げ飛ばす。
投げ飛ばされた杖ゴブリンは態勢を立て直そうとした槍ゴブリンを巻き込みながら吹っ飛んでいく。
「グギャア!!!!」
「ゲギャア!!!!」
地面に勢いよく叩きつけられる2匹。
「そろそろ終わりにしよう。」
ケンゴは左手を前に、右手を握り、胸の位置に置く神室流の構えを取る。
「グギギ、ギィイイ!!!!」
「ギ、ギギ!!」
再び槍ゴブリンの槍に風がまとわりつく、しかし今度の風は勢いが段違いだった。
周囲の砂や草が巻き込まれて、風の輪郭がわかるほどに。
「神室流奥義」
同時にケンゴも構えを取る。
左手を前に、開いた右手を胸に。
「グウゥゥゥギャァアアアアアアアア!!!!!!!!」
槍ゴブリンは全身全霊の突きを放つ。
ケンゴは迎え打つように貫手を放つ。
激突する槍と貫手。
笑みを浮かべる槍ゴブリン。
しかし、ケンゴの貫手は"槍を裂いて進み"槍ゴブリンの鳩尾を貫いた。
「ギ、グヒュウゥゥ、、、、」
自分の状況が理解できたと同時に大量の血を吐く槍ゴブリン。
「爆式鋼槍砲」
言葉を発したケンゴは、槍ゴブリンの体を貫いている手を抜いた。
仰向けに地面に倒れる槍ゴブリン。
残すは杖ゴブリンのみとなった。
「最後はお前だな、魔法使い、」
ケンゴは再び構えを正し、杖ゴブリンに言う。
「ギ、ギギ、ギヒィ!!!!」
なけなしの勇気を振り絞るように杖ゴブリンは長杖を構えた。
「ギギギギギギギギギギギギィイイイイイイイイイイイイイイイイィア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!!!!!」
そして気持ちの悪い雄叫びをあげる。
すると先ほどまで細身ながらも筋肉質な杖ゴブリンの体に変化が現れた。
全身の筋肉が隆起し、血管が浮かび上がる。
縦にも横にもでかくなり、その体格は一番最初に倒した鉤爪ゴブリンを超えていた。
「ア゛ア゛ア゛ア゛、、、、」
しかし、先ほどまでと違い、目は充血し、口からは涎が出続けている。
「ケンゴさん!いけません!逃げてください!」
後ろでウィルが叫ぶ。
「どういうことですか?」
「その状態はあいつは自分に『バーサーク』の魔法をかけたんです!いくらケンゴさんでも絶対に勝てません!僕たちも頑張ります!なんとかあいつの気をそらして逃げましょう!それしか方法はありません!」
しかし、ケンゴは構えを解かない。
「ヴギイェア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!」
杖ゴブリンが杖を捨て、ケンゴに向かっていく。
がむしゃらなパンチをケンゴはあえて腕をクロスして受け止める。
「な!?」
ウィルは驚いた。
ケンゴは一切後ろに下がることなく、完璧に狂った杖ゴブリンのパンチを受け切ったのだ。
「フン!」
「ギギイ!!!!」
杖ゴブリンの腕を払ったケンゴは構えを戻してウィルに言う。
「何も問題はありません、このゴブリンを排除して、安全に帰還する方法を僕は選択します。」
「ケ、ケンゴ」
「ケンゴくん、」
「ケンゴさん、、、、」
あまりにも頼もしすぎる言葉と背中に、キース、リサ、ウィルは言葉を失う。
「ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ、、、、」
唸りながら様子を伺う杖ゴブリン。
「神室流奥義」
ケンゴは決着をつける準備を済ませた。
「ヴゥゥ、ヴヴェア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!!!!」
そして、完全に狂った状態でケンゴに飛びかかり右拳をがむしゃらにふるってきた。
拳を振るうために脇が大きく開いた瞬間、ケンゴから数十発の拳撃が放たれる。
一撃一撃が途轍もなく重たい音を放ち、衝撃が杖ゴブリンの体を貫通し、後ろの砂を巻き上げる。
神室の操気術に肩甲骨と腰の回転を合わせた連撃。
「二丸式機関砲」
「ヴ、ヴヴゥ、、、」
あまりの威力に膝から崩れ落ちる杖ゴブリン。
ケンゴは何も言わず、その頭にただの回し蹴りを叩き込む。
何かが折れる音と共に杖ゴブリンの首はあらぬ方向に曲がり、膝をついた状態のまま、こときれる。
「ふぅ、、、、」
全ての戦いが終わり、ケンゴは呼吸を整えた。
☆神室流奥義 二丸式機関砲☆
神室流の操気術に肩甲骨と腰の回転を合わせ、重たい拳撃を相手が再起不能になるまで叩き込む技。頑丈な敵やタフな敵を崩すのに向いている。
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